こんにちは。K.Platinum代表の沼田海斗です。
24歳でこの会社を立ち上げて、今は3期目・27歳。社員は17人。製造業・流通・金融を中心にITコンサル+受託開発をやっています。
少し前まで、僕は採用の仕事を完全になめていました。「いいエンジニア募集!」と求人を出せば応募は来る、と思っていた。実際、設立1〜2年目はそれで回っていた。
それが、2026年になってまったく回らなくなりました。
求人を出しても応募は来ない。来てもミスマッチ。1人採用するのに3ヶ月かかる。「いい人」が概念として広すぎて、求職者側にも刺さらないし、僕らも誰を選んでいいかわからない。
このしんどさを解決するために、僕らは「1人の採用を3ペルソナに分解する」という運用を始めました。やってみたら、応募数が3倍になった。面接通過率は逆に下がった。でも、入社後のミスマッチ離職が0になった。
この記事は、その採用ペルソナ設計の中身と、3つの落とし穴を書きます。
1. 「とりあえずエンジニア募集」が機能しなくなった2026年
数字から確認しておきます。
- 情報処理・通信技術者の新規求人倍率: 3.06倍(全職種平均1.92倍の1.6倍)
- 2026時点のIT人材不足: 約50万人
- ChatGPT登場後のジュニア求人: 16.3%減(生成AI時代の「下積み期間消失」)
要するに、「数で攻める」採用が成立しなくなっているんです。
中途市場では、いいエンジニアは複数オファーを持っている前提。「うちに来てください」と言うだけでは、相手が振り向かない。スカウト媒体の返信率は2024年比で半分以下になっている、というのが僕の体感です。
それで何が起きるか。
求人原稿が「全方位的に良い人ほしい」みたいになって、誰にも刺さらない。
「AIエンジニア募集!自社開発も受託もできます!製造業ドメインの経験者歓迎、金融も歓迎、流通も歓迎」みたいな求人、心当たりありませんか。書いた人の気持ちはわかるんです。社内のニーズが多様だから、全部書きたい。でも、これを読んだ求職者は「自分が求められているのかわからない」ので、応募ボタンを押さない。
僕は、この壁にがっつりぶつかりました。
その時、人事系のメディアで「ペルソナ化採用」という言葉を見つけて、これを内部で運用に落とそうとした。最初の数ヶ月は失敗しました。「ペルソナを1人作る」では、結局同じ問題が起きたんです。
そこから、1ポジションに対して3ペルソナ並走にやり方を変えたら、急に景色が変わりました。
2. 17人ITコンサルが「1人」を採るために作った3ペルソナの中身

うちが2026年初頭に動かした「AI/製造業ドメインに強いエンジニア(1名)」というポジションを例に出します。
このポジションに対して、僕らは3つのペルソナを並走させました。
ペルソナA: AI実装側に振った高専卒中堅エンジニア
- 想定スペック: 高専卒、メーカー系SIerで5年、生成AIアプリのバックエンド実装経験あり
- 想定モチベーション: 大企業の歯車になり切れない、AI実装で手を動かしたい、地方からフルリモートで働きたい
- 刺さるメッセージ: 「高専卒8人体制、入社1ヶ月目から本番AIエージェント設計」「フルリモート、沖縄/福岡からの参加者複数」
うちは沖縄高専出身の社員が8人いて、フルリモート前提。「高専卒同士で話が通じる」「フルリモートで地方から参加できる」が想像できる人にしか刺さらないメッセージにしました。
ペルソナB: 製造業ドメインを持つ受託出身エンジニア
- 想定スペック: 大学卒、製造業向け受託開発会社で6〜8年、CADデータや生産管理システム連携の実装経験
- 想定モチベーション: 受託開発の中で「上流からやりたい」が叶わない、技術選定の自由がほしい、AIを業務に組み込む側に回りたい
- 刺さるメッセージ: 「製造業向けGraphRAG/マルチモーダルRAGの実装プロジェクト」「上流コンサル+実装の両方やれる」「技術選定は基本エンジニアに委ねる」
このペルソナは、「受託でモヤっている人」を想定しています。受託会社で技術選定が上から降ってくる環境にいる人が、うちに来ると裁量が一気に増える。それを言語化して見せる。
ペルソナC: PjM/ファンクショナルCTO志向の越境型ミドル
- 想定スペック: 35〜40歳、エンジニア出身でPjM/EM歴3年以上、複数の中堅企業のDX伴走経験
- 想定モチベーション: 大手SIerのPjMが「自分の手で実装する余地がない」、ファンクショナルCTO的に動きたい、もう一段経営に近いところで戦いたい
- 刺さるメッセージ: 「12ヶ月伴走DXの全フェーズを経営層と握れる」「ファンクショナルCTOポジションあり」「代表直下で動ける17人組織」
ここはミドル層狙いで、「もう中堅企業のDX伴走の全責任を持って動きたい」人にだけ届くようにメッセージを絞っています。
3ペルソナを並走させた時、僕らはそれぞれに別の求人原稿、別のスカウト文面、別の媒体を当てました。Wantedlyの記事も3本書き分けた。1ポジションに3倍の手間がかかる。
これが効くのか、最初は半信半疑でした。
3. 3ペルソナに分解したら何が起きたか
結果から書きます。
- 応募数: 3倍(同期間比較、絶対数として)
- 書類選考通過率: 半分(ペルソナ要件に合致するか厳密に見るため)
- 面接通過率: 下がった(質問が深くなったため)
- 内定承諾率: 1.5倍
- 入社後12ヶ月のミスマッチ離職: 0
応募数が3倍に増えた理由は、シンプルに「自分のことだと思える求人」が3本になったからです。1本の求人で全員に刺そうとすると、結局誰にも刺さらない。3本に分けて、それぞれが「これは自分宛だ」と思える求人を作ると、応募ボタンを押すハードルが下がる。
面白かったのは、面接通過率が下がったことの意味でした。
ペルソナごとに面接で聞く質問を変えたんです。ペルソナAなら「高専時代の研究テーマと、それを業務にどう転用したか」。ペルソナBなら「受託で技術選定が降ってきた時に、抵抗したケースと飲んだケース、それぞれ何が違ったか」。ペルソナCなら「直近3年で経営層に提案して通したDX企画と、潰された企画の違い」。
質問が具体になると、「ペルソナに合ってるが、深さが足りない」候補者を弾けるようになった。これが、入社後のミスマッチ離職0に直結しています。
採用面接で僕が必ず聞く3つの質問は別記事に書いていますが、その3質問は「全候補者共通」のフィルタ。ペルソナ別の深掘り質問はその上に乗せる運用です。
いま動いている募集ポジションと採用ペルソナは採用ページで公開しています。「自分はどのペルソナだろう」と思った方は、気軽にカジュアル面談へ。
4. 「ペルソナ化」を運用するための社内ルール3つ

ここからが本題です。ペルソナ化採用は、運用を間違えると一瞬で破綻します。
僕らが2年回して固まってきた、運用ルール3つを書きます。
ルール1: ペルソナは半年に1回見直す
採用ペルソナは、会社の状況と市場の状況の両方を反映したものです。
うちの会社で言えば、17人だった社員数が20人になれば、求めるペルソナが変わる。市場で言えば、AIエージェントが急に普及すれば、ペルソナAのスキル要件が変わる。
だから、半年に1回、必ず全ペルソナを書き直すルールにしています。これをやらないと、3ヶ月後には「半年前に書いたペルソナ」を使い続けて、市場とずれていく。
ルール2: 採用担当が複数いるなら、ペルソナを「人」に紐付けない
ここが結構ハマる落とし穴です。
採用担当が「ペルソナAは私が担当、Bは別の人が担当」という分担をすると、ペルソナの解釈がブレます。Aさんから見た「製造業ドメイン」と、Bさんから見た「製造業ドメイン」が違う、みたいなことが起きる。
うちは小さい会社だから、僕(代表)が3ペルソナ全部見ています。社員10人規模を超えてからは、ペルソナの「定義書」を文書化して、複数人が見ても同じ判断ができるようにしました。
ルール3: ペルソナを4つ以上にしない
これは僕が一番痛い目にあったところです。
最初、「もっと細かく分けた方がいい」と思ってペルソナを5つ作ったことがある。結果、メッセージが薄まって全ペルソナで応募が減りました。
人事の世界では「ペルソナは3つまで」という経験則があるらしくて、これは僕の実感としても本当だと思う。3つを超えると、書く側の集中力も、見る側の判断力も持たない。
「もっと欲しいタイプがある」と思ったら、ペルソナを増やすんじゃなく、既存3ペルソナの定義を見直す。これが鉄則です。
採用側/求職者側、どちらにも効く話
ここまで採用側の話を書いてきましたが、求職者側から見てもこの話は意味があります。
「自分はどの会社のどのペルソナに刺さる人材なのか」を、求人原稿のレベル感から逆算できるようになるからです。
「全方位募集」型の求人ばかり出している会社は、社内ニーズが整理しきれていない可能性が高い。逆に、3本ぐらいペルソナを分けて求人を書いている会社は、社内のニーズと採用がちゃんと噛み合っているサインです。
そして、僕からのお願い。自分が3ペルソナのどれかに当てはまるなら、ぜひ応募してください。当てはまらなくても、カジュアル面談でお話する余地はあります。
K.Platinumは、これからも採用ペルソナを開示しながら、欲しい人を1人ずつ刺しに行きます。それが17人の小さい会社の戦い方だと、僕は思っています。
沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum代表。エンジニアが正当に評価される組織づくりを掲げ、採用から事業づくりまでを率いている。
K.Platinumでは一緒に働くエンジニアを募集しています。採用情報・カジュアル面談は採用ページから。3ペルソナのどれに刺さるかわからない、という相談も歓迎です。

