こんにちは。K.Platinum代表の沼田です。
「人手不足をAIで解決」という見出しを、この半年で何回見たか分かりません。展示会に行けばブースの半分がそう書いてあるし、僕の会社にも似たような提案メールが毎週届きます。
だから、この数字を見たときに手が止まりました。
人手不足を経営課題だと答えた中小企業のうち、その対策として「ロボット・AI等の活用による業務効率化」を挙げたのは、11.6%。
フォーバル GDXリサーチ研究所の『2025年度第4回 中小企業経営実態調査』(2026年4月28日発表・有効回答1,647人・調査期間2026年1月14日〜2月13日)の結果です【フォーバル GDXリサーチ研究所調べ】。
11.6%。10社に1社です。
残りの88.4%が何を探しているかというと、人でした。
対策の1位は「採用活動を行う」58.1%、AIは6位で「対策なし」より下
まず、対策の内訳をそのまま並べます。人手不足を経営課題だと感じている企業への設問で、n=714の複数回答です。
- 採用活動を行う … 58.1%
- 業務を外部委託する … 32.2%
- 離職防止、定着率の向上 … 22.8%
- 業務の棚卸し・ムダの削減 … 17.5%
- 従業員の再配置(ジョブローテーション) … 14.8%
- ロボット、AI等の活用による業務効率化 … 11.6%
- 対策は行っていない … 12.9%
- その他 … 2.4%

58.1%と11.6%。5倍の差です。
そして、この並びを眺めていて僕が引っかかったのは、実は1位でも最下位でもありませんでした。
「ロボット・AI」(11.6%)が、「対策は行っていない」(12.9%)より下だったことです。
つまり、AIを検討した会社より、何もしていない会社の方が多い。これは「AIが嫌われている」という話ではないと思っています。そもそも対策の選択肢としてテーブルに載っていない、という話です。
人手不足は「人が足りない」という言葉で認識される。言葉が「人」なので、対策欄にも人の名前しか書かれない。作業が過剰なのだ、という言い換えを誰もしていないだけなんじゃないか。僕はそう読みました。
一番気になったのは、2位の「業務を外部委託する」32.2%だった
正直に書きます。この調査で僕が一番長く眺めたのは、2位の「業務を外部委託する」32.2%でした。
うちは受託開発とITコンサルをやっている会社なので、この32.2%はそのまま市場の大きさです。AI活用の11.6%の、約3倍ある。
でも、だからこそ書いておきたいことがあります。
外部委託は、人手不足の解決ではありません。人手不足の場所を移動させているだけです。
うちに来る相談で一番多いのは「手が足りないので、この作業をまるごとお願いしたい」という形です。気持ちはよく分かります。3期目・27歳の17人の会社をやっていて、僕自身が何度もそう思ったので。
ただ、手順が言語化されていない作業をそのまま外に出すと、だいたい失敗します。発注側に「説明する」という新しい仕事が生まれて、しかもその説明ができるのは、いまその作業で一番忙しい人だからです。忙しい人の仕事を減らすために、忙しい人の仕事を増やしている。
だから、うちは相談を受けたときに、いきなり「やります」と言わないようにしています。先に聞くのは「その作業、いま誰が、月に何時間やっていますか」です。答えられない場合は、そこから一緒にやる。外に出せる状態にすることと、外に出すことは、別の仕事です。
ちなみに4位の「業務の棚卸し・ムダの削減」は17.5%でした。外部委託(32.2%)の半分近くしかない。棚卸しをせずに外に出している会社の方が多いということが、この2つの数字の差に出ています。
0〜9人の会社で「人手不足が課題」が33.5%しかないのが、いちばん怖い
もう一つ、この調査で僕が長く考えた数字があります。
「人手不足は経営課題であるか」という問いに「はい」と答えた割合を、従業員規模別に見るとこうなります。
- 0〜9人 … 33.5%
- 10〜29人 … 58.6%
- 30〜49人 … 64.8%
- 50人以上 … 80.3%
普通に読むと「小さい会社ほど人手不足を感じていない」に見えます。でも僕は逆だと思っています。
0〜9人の会社で人が足りなくなったとき、何が起きるか。経営者が自分でやります。夜と休日が吸収先になるので、課題として言語化される前に、体力で埋まってしまう。だから設問に「はい」と答えるところまで到達しない。
これは、17人になる手前で僕自身が通った道です。24歳で起業して、しばらくは「人が足りない」ではなく「僕が寝ていない」という認識でした。あれは人手不足だったんだと分かったのは、埋められなくなってからです。
規模が上がるほど「はい」が増えるのは、課題が深刻になるからではなく、可視化されるからだと思っています。10人を超えると経営者が全部は吸収できなくなって、初めて数字や会話に出てくる。
だとすると、この調査で「対策は行っていない」が12.9%あるのは当然で、その多くは対策が要らないのではなく、まだ課題の形をしていないだけということになります。
17人の会社が「採らずに済ませた」3つのこと
ここからは自社の話です。うちは17人の会社で、この1年、頭数を増やさずに受注量を増やしてきました。何か特別なことをしたわけではなく、やったのは3つだけです。

① 「1人が抜けたら止まる業務」を月1で数える
採用の判断より先に、これをやります。名前を挙げて「この人が来週から2週間いなかったら、何が止まるか」を書き出す。止まるものが増えていたら、それは採用のサインではなく、引き継ぎ資料が無いサインであることの方が多いです。この作業自体は30分で終わります。
② 手順を書いてから、AIに渡す
AIに任せるかどうかを先に決めない。まず手順を人間の言葉で書きます。書けないものは、AIにも渡せないし、外注にも出せないし、新人にも教えられない。書けないタスクは、採用でも解決しません。
逆に言うと、手順が書けた時点で選択肢が3つに増えます(自動化する / 外に出す / 新しい人に渡す)。この順番を逆にすると、「AIを入れたのに現場が使わない」が起きます。
③ 「採用が間に合わない」前提で、受ける案件を選ぶ
これが一番効きました。人が採れる前提で仕事を取ると、採れなかったときに既存メンバーが埋めることになります。うちは逆で、いま居る人数で回せる範囲を先に決めて、その中で単価と難易度が高い方に寄せていく。
だから断る案件があります。3期目で断ることに慣れてきました。断らない会社は、断れなくなった人が辞めます。
この3つを、経営者ではなくエンジニア側から回してくれる人を探しています。「手順を書いて、渡す先を選ぶ」ところから関わりたい方は、K.Platinumの募集要項を見る。
それでも「AIを入れれば人は要らなくなる」とは言わない
こういう記事を書くと「じゃあAIで全部解決できるんですね」と言われることがあるんですが、そうは思っていません。
この調査で、中途人材について「採用したいができていない」と答えた企業は55.4%でした(n=415)。規模別に見ると0〜9人では67.6%で、10〜29人55.1%、30〜49人39.5%、50人以上32.6%と、小さい会社ほど採用に苦戦しています。採用のための取り組み(n=117)でも、求人媒体への広告出稿50.3%、ハローワークや地域・専門職に特化した求人サービス46.3%、エージェント33.9%と、大企業と同じ土俵の手段が上位に並んでいる。
同じ土俵で、資源が少ない方が戦っているわけです。これはAIでは解決しません。採用競争の構造の話なので。
なので僕の結論はこうです。
- AIと自動化が効くのは、手順が書ける作業。ここは11.6%しか手を付けていないので、伸びしろは大きい
- 効かないのは、判断・関係性・信頼の部分。ここは人が要る
- そして多くの会社は、この2つを分ける前に「人が足りない」と言っている
分けるのは1日で終わります。採用は3ヶ月から半年かかります。順番として、分ける方が先です。
まとめ
この調査を一言でまとめると、こうなります。
人手不足は「人の不足」として認識されるが、現場では「作業の過剰」として発生している。だから対策欄に人の名前しか書かれない。
58.1%と11.6%の差は、AIリテラシーの差ではなく、問題の言い換えができているかどうかの差だと思っています。
もし今、採用の募集要項を書いている途中なら、その前に30分だけ使ってみてください。「この募集で埋めたい作業を、10行で書き出す」。書けたら、それは採用でも外注でも自動化でも解けます。書けなかったら、まだどれでも解けません。
うちは、そこから一緒にやる会社です。
出典
フォーバル GDXリサーチ研究所『2025年度第4回 中小企業経営実態調査』(2026年4月28日発表)【フォーバル GDXリサーチ研究所調べ】
調査期間: 2026年1月14日〜2月13日 / 調査対象: 全国の中小企業経営者 / 調査方法: ウェブアンケート / 有効回答: 1,647人
※ 設問により回答者数が異なります(人手不足の課題に対する対策 n=714、採用状況 n=415、中途人材の採用のための取り組み n=117)。本文中の割合はそれぞれの母数に対するものです。
※ 「採用するつもりはない」は各社の意向であり、採用実績を示すものではありません。
沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum 代表。24歳で起業し、3期目・17人の組織を率いる。受託開発・ITコンサルティング・自社プロダクト開発を手がけ、「エンジニアを幸せにする」ことを会社の目的に置いている。
K.Platinumでは一緒に働くエンジニアを募集しています。「実力で正当に評価される環境」に興味がある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。

