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2026年8月31日

AIを使っている会社の67.1%は、まだ人がAIを起動している ── 完全自動は2.9%、うちのAIは僕が寝ている間に働いています

青いインテリアが施されたモダンなオフィス。大きな窓からは街並みが望め、コンピューターの画面には笑顔のAIアイコンが表示されている。その上には「AIは誰が起動している?」という日本語のテキストが書かれている。.

日曜の朝、8時30分。

僕はまだ寝ています。オフィスには当然、誰もいません。それでも Slack には、その日の採用ブログのネタ候補が4本、出典URL付きで投稿されています。誰も「実行」ボタンを押していません。時間が来たから、動いただけです。

これ、自慢話をしたいわけじゃないんです。この状態が、思っていたよりずっと珍しいらしいと最近の調査で分かったので、その話をします。AIが「使えるか」ではなく、AIが「いつ動き出すか」を誰が握っているかの話です。


「AIを使っている会社」の67.1%は、人がAIを起動している

株式会社Merが2026年8月6日に公開した『Japan AI Operations Report 2026 Summer』という調査レポートがあります。

この調査、母集団がかなり限定されています。従業員100名以上の企業でAI活用・業務改善・情報システムに携わり、すでに生成AIを業務で使っている責任者・担当者548名(2026年6月24〜25日調査)。リリース自身が「日本企業全体の割合ではない」と明記しています。つまり「AIを使っていない会社」は最初から入っていない。調査主体のMer社はAI Operations支援の会社なので、結論が自社サービスの方向を向いているのも当然です。それを分かった上で、数字は使わせてもらいます。

で、その数字。

業務で生成AIが動き始めるとき、最も多い形は何か。

  • 保存された定型プロンプト・テンプレートを人が実行している … 36.3%
  • 人がチャットに指示文を入力して動かしている … 30.8%

合わせて67.1%が「人が起動している」

一方、自動で動く形は、

  • 決まった時間・スケジュールで自動的に動く … 16.6%
  • 業務システム上のデータやステータスの更新をきっかけに自動で動く … 12.0%

その他を含めても29.3%にとどまります。

この数字を見て思ったのは、「AIの用途はこの2年で爆発的に広がったのに、広がったのは『何に使うか』であって『いつ動くか』じゃなかった」ということでした。


完全に自動で回っているのは、2.9%

人が起動するAIと、自動で起動するAI

「社内で最も進んでいる本番運用」を聞いた設問の内訳がこうです。

  • 定型プロンプト等で入力を効率化しているが、起動も出力後の処理も人 … 32.7%
  • AIを業務ツールに組み込んでいるが、起動も出力後の処理も人 … 24.8%
  • チャットで都度やり取りし、出力を手作業で業務に使用 … 18.8%
  • 条件を満たす処理・反映はAIが自動で行い、例外のみ人が確認・改善 … 2.9%

「最も進んでいる」運用を聞いているのに、2.9%

出力側も同じ構図。「人が手作業で成果物を作成」46.2%、「人が手作業でコピー・転記」21.2%=67.4%が、出力後に人の手作業を挟んでいます

AIが文章を書くところまでは自動化されたけれど、その結果を業務システムに戻す最後の一歩は、人がやっている。ここが詰まっているせいで、AIは「速く書ける道具」から先に進めていない。

そして、追跡。生成AIの利用記録が組織横断で残って後から追えるのは13.0%。そこから起動条件や業務フローの改善まで実施しているのは5.7%

見えない利用は、測れない成果になります。以前書いた「AIを入れた会社の91.6%が速くなったのに、売上が上がったのは3.9%だった」という話の答え合わせです。効果が出ていないんじゃなくて、効果を測る配線がされていない


投資は「研修48.9%」に集まり、「業務フローの再設計18.4%」には行かない

このレポートで僕が一番長く止まったのは、実は最後のパートでした。

今後1年以内にAI投資を拡大する予定がある企業は67.2%。みんな、お金は出すつもりなんです。

で、その投資先。

  • 社員向けの研修・教育 … 48.9%
  • 利用ガイドライン・ルールの整備 … 48.7%
  • 業務フロー・起動条件の再設計 … 18.4%
  • 利用ログ・承認・例外フローの設計 … 11.3%

48.9% 対 18.4%

これが、この調査の本体です。

AIを買う投資と、社員に使い方を教える投資と、ルールを作る投資は進んでいる。でも、AIが働く「場所」をつくる投資は、その3分の1しかされていない

研修をやってもガイドラインを配っても、AIは自分から動き出しません。動き出す条件を誰かが設計しないかぎり、AIは「人が思い出したときだけ働く同僚」のままです。そして人間は、忙しい日ほど思い出しません。


自動起動にしてから、初めて分かった3つのこと

うちは17人の会社です。専任のAI推進担当なんて置けません。だからこそ「人が起動する」形を早く捨てました。社内のAIエージェントは朝8時台から9時台にかけて、誰も触らないまま順番に動き出します。

やってみて分かったことを3つだけ。

1. 自動起動にすると、失敗が見える

これが一番大きかった。人が起動している間は、「今日はやらなかった」が記録に残らないんです。誰も動かさなかった日は、何も起きていないので問題がないように見える。自動にした瞬間、「途中で落ちた」「出力が空だった」が全部ログに出ました。品質が下がったんじゃなくて、それまで見えていなかっただけです。

2. ログを残す設計は、後から足せない

正確には足せますが、足した日より前のデータは永久に手に入りません。うちも最初の数週間はログ設計が甘く、「先月と比べてどうか」が言えない期間があります。追跡できているのが13.0%という数字は、「後でやろう」と思ったまま今日まで来た会社の割合でしょう。

3. 例外だけが人に来る形にすると、人の仕事が判断に寄る

条件を満たすものは自動で流れ、外れたものだけ人のところに来る。人が向き合うのは毎回「判断が必要な案件」だけになります。作業が減るというより、手を動かす時間と頭を使う時間の比率が変わる。うちが面接で見ているのも「速く作れるか」より「例外が来たときにどう判断するか」です。

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ただし、自動化すると新しい面倒が3つ増える

起動・接続・反映・ログの4要件

正直に書いておきます。いいことばかりではありません。

止まったことに気づかない。 人が起動していれば「あれ、動かない」と即バレます。自動だと、静かに止まったまま何日も過ぎる。うちは実際にやりました。だから「動かなかったこと自体を検知する」仕組みが別途いります。自動化のコストは、自動化そのものより監視のほうが高い。

「勝手に動く」は権限設計とセット。 誰も見ていない時間に動く=誰も見ていない時間に何かを壊せる、ということです。読み取り専用で始める、書き込みは承認を挟む。うちはメール送信と社外へのメッセージ送信だけは、どれだけ自動化が進んでも人の承認を必須にしています。ここは緩めません。

全部を自動にしない、という判断も成果。 レポートの言う4要件は「起動・接続・反映・ログ」ですが、うちは反映の一部をわざと人に残しています。そこが顧客に届く最後の一歩だからです。自動化率を上げることが目的になった瞬間、事故ります。


AIを使いこなす組織は、社員にAIを「使わせない」

このレポートの中でMer社の代表が書いていた一文が、いちばん腑に落ちました。

AIを使いこなす組織は、社員にAIを「使わせない」。

人がAIの操作を思い出さなくても、業務の中でAIが働いている状態をつくる、という意味です。

僕はスタートアップITコンサルにいたころ、業務改善とは「人が何をやるか」を組み替える仕事だと思っていました。24歳で独立して3期目、いま27歳で17人の会社をやっていて変わったのは、組み替える対象が「人の手順」から「仕事が始まるきっかけ」に移ったことです。

「誰がやるか」を決めるのは今も人です。でも「いつ始まるか」を人が握り続けているかぎり、AIは道具のままで、同僚にはなりません。

社内データが整備されていないと答えた会社が50.7%。地味ですが、ここが本当のスタート地点です。受託の現場でも、僕らが最初に手をつけるのは新しいAIの選定ではなく、重複と表記ゆれと欠損を潰す作業です。かっこよくはないですが、ここを飛ばして上に何を載せても動きません。


まとめ

  • 生成AIをすでに使っている会社でも、67.1%は人がAIを起動している。自動は29.3%
  • 例外だけ人が見る形まで到達しているのは2.9%
  • 投資は研修(48.9%)に集まり、起動条件・業務フローの再設計(18.4%)は3分の1
  • 自動起動は「やらなかった日」を可視化する。ただし停止検知と権限設計はセット

明日の朝も、僕が起きるより先にうちのAIは働き始めます。それを「すごい」と思わなくなったときが、本当に定着したときなんだと思います。


書いた人

沼田海斗/株式会社K.Platinum 代表取締役

沖縄高専出身。スタートアップITコンサルを経て24歳で起業し、現在3期目・27歳。ITコンサルティング、受託開発、プログラミングスクール「ジゴカツ」の3事業を、17名(うち高専出身8名)のフルリモートチームで運営しています。社内業務のかなりの部分をAIエージェントに任せていて、この記事の下書きも、僕が起動していないところから始まっています。


K.Platinumで働くことに興味がある方へ

僕らは「AIが使える人」を探しているわけではありません。AIが動き出す条件を設計できる人、そして流れてこなかった例外を自分の頭で判断できる人と働きたいと思っています。

17人の会社なので、一人が触る範囲は広い。要件を聞くところから設計、実装、運用、そして「これは自動化しない」という判断まで全部が視界に入ります。逆に言えば、決められた工程だけをやりたい人には向いていません。

カジュアル面談から歓迎です。まずは話を聞くだけ、でまったく構いません。

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