「高専卒にも学位が出るかもしれない」というニュースを見た人へ。その法改正を待たなくても、いま申請できる学位の制度があります。 ただし受付は10月5日で締め切られ、しかも実質的な着手期限はその11日前です。
この記事では、その制度の締切・試験・会場を原典から確認したうえで、採用する側として気になった点まで書きます。学位を取るかどうかを決める前に、まず「どういう形の制度なのか」を知るための話です。
こんにちは。K.Platinum代表の沼田です。
うちは十数人の会社で、そのうち8人が高専出身です。僕もそのひとりで、沖縄高専を出ています。
高専を卒業したときにもらう称号は「準学士」です。学士ではありません。この「準」が何なのかを説明するのが地味に面倒で、就職や転職のたびに一度は説明することになる。文部科学省の検討会で「準学士を学位にするかどうか」が議論されていて、その話は前に2回書きました。
ただ、あれは将来の話です。法改正が要るし、時期も決まっていない。
今日書くのは、その前の話です。いま使える制度があって、締切が10月5日、という話。
※本記事は2026年9月時点の情報にもとづいています。制度の詳細・最新情報は必ず原典でご確認ください。
まず、何の制度なのか ── 「高専を出れば学士がもらえる」ではない
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構が、2026年8月28日に「令和8年度10月期の学士の学位授与申請の受付について」を掲載しています。
制度の名前は「単位積み上げ型の学士の学位授与」。短期大学・高等専門学校の卒業者等を対象に、機構が学士の学位を授与するものです。
先に、いちばん誤解されやすいところを正確に書いておきます。高専を出れば学士が取れる、という制度ではありません。 機構が認定した専攻科等で所定の単位を積み上げたうえで、申請し、後述する試験に合格した場合に授与されます。要件の判定は細かいので、そこは原典に譲ります。
受付のスケジュールは、こうなっています。
- 手数料払込:令和8年9月1日(火)〜10月5日(月)
- 電子申請のデータ入力:令和8年9月11日(金)〜10月5日(月)(最終日は17時までに送信完了)
- 申請書類の送付:令和8年9月25日(金)〜10月5日(月)(最終日は当日消印有効・必ず書留)
申請方法は、インターネットで電子申請をしたうえで、証明書等の申請書類を郵送する、という二段構えです。片方だけでは終わらない。
そして試験日。面接が12月6日、小論文が12月13日です。
読み進めていて、僕はここで一度手が止まりました。
核①:試験がある

学位授与に、試験があるんです。
単位を積み上げれば自動的にもらえるもの、というイメージを僕は勝手に持っていました。実際は違って、小論文と面接があり、それに合格する必要がある。
これ、けっこう重い事実だと思います。
学位が「もらえるもの」なら、それは手続きです。書類を揃えて出せば終わる。でも試験があるなら、それは審査です。落ちることがある。
つまりこの制度は、学歴の書き換えではなく、もう一度審査を受けることなんですね。過去に取った単位を証明するだけでなく、いまの自分が小論文と面接で説明できるかを見られる。
もう1つ、細かいけれど重要な注意書きが原典にありました。申請書類が到着すると「学位授与申請書類の到着のお知らせ」というハガキが10月中旬から順次発送されるのですが、原典には「受理をお知らせするものではありません」とはっきり書いてあります。受理された場合は、試験日の10日前までに受験票が送られてくる。
ハガキが来た=通った、ではない。ここを勘違いすると、12月まで気づかないことになります。
核②:会場は東京と大阪だけで、オンラインは無い

小論文の試験会場は、原典にこう書かれています。
- 東京地区……大学改革支援・学位授与機構 小平本館(東京都小平市学園西町1-29-1)
- 大阪地区……大阪私学会館(大阪府大阪市都島区網島町6-20)
そして、面接試験の会場は東京地区のみ。
さらに、こう明記されています。
小論文試験、面接試験とも、試験会場での受験となります。オンライン等では実施しませんので、申請の際はあらかじめご了承ください。
全国に高専は50校以上あります。北海道にも、東北にも、九州にも、沖縄にもある。そこの専攻科を出た人がこの制度を使おうとすると、12月6日に東京、12月13日に東京か大阪。1週間おきに2回、遠征することになります。
僕は沖縄高専の出身なので、この距離感は具体的に想像がつきます。那覇から2回。しかも12月です。
念のため書いておくと、これは制度への批判ではありません。試験である以上、本人確認や公平性の担保が要るのは分かるし、機構が判断したことに外野が口を出す話でもない。事実として会場が2か所である、というところまでを書いて、評価は読む人に委ねます。
ただ、採用する側として1つだけ思ったことがあります。
制度が「誰でも使える」かどうかは、要件だけでは決まらない。 要件を満たしていても、12月に2回東京に行ける人と、行けない人がいる。書類上は平等でも、実際に使える人は距離で選別されている。
これは、うちの採用にもそのまま返ってくる話でした。うちはリモート前提でやっていますが、それでも「オフラインで一度お会いしましょう」と言った瞬間に、対象者は静かに絞られます。絞っているつもりがなくても絞られる。制度の入口に物理的な条件を1つ足すと、そこで何人か落ちる、ということを、僕はこの2か所という数字を見て思い出しました。
実務メモ:締切は3本あり、しかも途中で冊子が止まる
制度そのものより、日程の組み方のほうが罠だと思ったので、そこも書いておきます。
さっき並べた3つの締切、終わりは全部10月5日ですが、始まりが全部違います。 手数料の払込は9月1日から、電子申請の入力は9月11日から、書類の送付は9月25日から。
そして、原典にこう書いてあります。
令和8年9月25日(金)~10月5日(月)の間は、申請受付期間中のため、『新しい学士への途』および『学位授与申請書類』の通常請求の受付を休止します。
申請には『学位授与申請書類』が必要です。その冊子の通常請求が、申請受付期間中は止まる。だから原典自身が「申請受付期間前に冊子を取り寄せてください」と書いています。
ここは僕の読み方ですが、これはつまり、実質的な着手期限は10月5日ではなく9月24日ということです。9月25日以降に「よし、やるか」と思って冊子を請求しようとしても、通常のルートは開いていない。
締切が10月5日だと思って9月末に動き出すと、たぶん間に合わない。
あと、実務的な注意をもう2つ。
申請書類チェックリストは8種類あります。 原典によれば「基礎資格を有する者」の区分などによって分かれていて、自分に該当する区分のものを使い、記入して同封する必要がある。区分の判定は複雑なので、ここは自己判断せず『新しい学士への途』(令和8年度版・p.42以降に申請方法の記載があると原典が案内しています)と、機構の学位審査課(042-307-1550)で確認してください。うちは教育機関でも行政書士事務所でもないので、判定はできません。
そして、特例適用専攻科に在籍している「特例での申請対象者」は、この方法では申請できません。 原典に赤字で書かれている注意事項です。自分が該当するかは在籍する専攻科に問い合わせる、とされています。ここを読み飛ばすと、間違った方法で申請してしまうことになる。
なお日程・会場・要件は変更される可能性があります。原典にも「最新情報については、機構ウェブサイトに随時掲載します」と書かれているので、動く前に必ず現物を見てください。
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うちは学位で採否を変えていない。それでも書く理由
最後に、採用する側としての立場を書いておきます。
うちは、学位の有無で採否を変えていません。 高専卒でも大卒でも、見ているのは同じところです。だから「学士を取ったほうがいい」とは書きません。取らない選択も同じだけ正しい。
それでも、この制度のことは書いておきたかった。理由は2つあります。
1つは、選択肢があることを知らないのは、選ばなかったのとは違うからです。うちの8人が全員この制度を知っているとは思えないし、僕も締切の構造までは知りませんでした。取る・取らないを決める前に、そういうものがあると知っている状態にはしておきたい。
もう1つは、この制度が「もう一度審査を受ける」形をしているのが、けっこう面白いと思ったからです。過去の単位だけでは終わらせず、小論文と面接を課す。それは学位を、経歴の記録ではなく、いま説明できることの証明として扱っているということです。
うちの評価も、たぶん同じ形をしているべきなんだろうな、と思いました。何年前に何をやったかではなく、いま何を説明できるか。そっちを見るほうが、十数人の会社には合っている気がします。
まとめ
この記事で確認したのは、次の4つです。①法改正を待たなくても、単位積み上げ型の学士の学位授与という制度はいま動いていて、今回の受付は10月5日締切。②終わりは全部10月5日だが、始まりは3本バラバラで、申請書類の冊子は9月25日から通常請求が止まる。だから実質的な着手期限は9月24日。③学位は「もらうもの」ではなく、小論文(12月13日)と面接(12月6日)に合格して得るもの。書類を出せば終わり、ではない。④試験会場は東京と大阪のみで、面接は東京だけ。オンラインは無い。
そして、うちは学位の有無で採否を変えていません。それでも書いたのは、選択肢を知らないことと、知ったうえで選ばないことは、まったく別のことだからです。取る・取らないを決めるのは、知ったあとでいい。
沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum 代表。製造・金融業界でのキャリアを経てK.Platinumを設立。エンジニアが正当に評価される会社をつくることをテーマに、事業と組織の両方を見ている。
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出典
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構『令和8年度10月期の学士の学位授与申請の受付について』(2026年8月28日掲載)
https://www.niad.ac.jp/n_gakui/application/information/entry-6170.html
同『単位積み上げ型の学士の学位授与』 https://www.niad.ac.jp/n_gakui/tsumiage/
同『新しい学士への途』(令和8年度版) https://www.niad.ac.jp/n_gakui/media-download/10105/90a08983946acc7b/PDF/
同『機構認定短期大学・高等専門学校専攻科一覧』 https://www.niad.ac.jp/n_gakui/application/senkouka.html/
照会先:学位・国際事業部 学位審査課 042-307-1550
註記
本文中の受付期間(手数料払込・電子申請データ入力・申請書類送付)、試験日(面接12月6日・小論文12月13日)、試験会場および所在地、オンライン非実施、到着のお知らせハガキが受理の通知ではないこと、申請書類チェックリストが8種類あること、特例適用専攻科に在籍する特例での申請対象者は本方法では申請できないこと、申請受付期間中は冊子の通常請求を休止することは、いずれも上記の機構ウェブサイトに記載されている内容です。「実質的な着手期限は9月24日である」という読み方、および「制度の入口に物理的な条件を足すと選別が起きる」という解釈は筆者のものであり、機構が示した見解ではありません。 学位授与の要件・基礎資格の区分判定は本記事の範囲外です。当社は教育機関でも行政書士事務所でもなく、個別の該当性については判断できません。詳細は『新しい学士への途』(令和8年度版)および機構 学位審査課へご確認ください。日程・会場・要件は変更される可能性があるため、機構ウェブサイトで最新情報をご確認ください。本記事は学位の取得を推奨するものでも、取得しないことを否定するものでもありません。

