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2026年10月23日

小売・外食350人に聞いた「AIを使えない理由」、1位は値段でもセキュリティでもなかった

ある男性がノートパソコンを驚いたような表情で見つめている。その横には、他の棒よりも高く伸びた1本の棒グラフがあり、その上には疑問符が浮かんでいる。その上のテキストには1位は、値段じゃなかったと書かれている。.

こんにちは。K.Platinum代表の沼田です。

うちは受託で、製造業や流通のシステムを作ることが多い会社です。最近は小売・外食のお客さんから、AIを入れたいという相談を受ける機会も増えてきました。

そんな中、9月26日にプロガイドという会社が発表した調査を見かけました。『「人が足りない、AIは使いたい」小売・外食のリアル』というタイトルで、小売業と外食業それぞれ350人にインターネット調査をしたものです。

発表からまだ日が浅く、SNSでもほとんど話題になっていませんでした。読んでみたら、僕らが現場で感じていたことと、数字がきれいに一致していたので、ここに書いておきます。

※本記事は2026年9月時点の情報にもとづいています。引用元は民間調査(プロガイド・小売業・外食業それぞれ350名・インターネット調査)であり、業界全体を代表する断定的な数字として読むものではありません。


AIを使えない理由の1位は、値段でもセキュリティでもなかった

正直、この調査を開く前は、AIを使えない理由の1位は「導入コスト」だろうと予想していました。うちの過去の受託の現場でも、コストの話は必ず出るからです。

読んでみると、順位が違いました。

小売業でAIを活用できない理由は、1位が「活用方法がわからない」(18.9%)、2位が「セキュリティへの不安」(18.3%)、3位が「導入コスト」(16.0%)でした。

外食業はもっとはっきりしていました。1位は「何から始めればよいかわからない」で32.9%。2位の「導入コスト」(25.1%)や3位の「費用対効果が見えない」(21.7%)を、大きく上回っています。

コストやセキュリティは、ベンダー側が「きっとそこがネックだろう」と想定しやすい理由です。うちも提案書に、コストの話とセキュリティの話は必ず入れていました。でも現場が実際に困っているのは、その手前の「わからなさ」のほうだった。ここに、想定と現実のズレがあります。


外食は、3人に1人が「何から始めればいいか」で止まっている

「わからない」が、いちばん多い

外食業の32.9%という数字を、もう少し具体的に考えてみます。3人に1人が、AIを使いたいと思っていても、最初の一歩が分からずに止まっている、ということです。

これは「AIに興味がない」という話ではありません。調査のタイトルにもあるとおり、「人が足りない、AIは使いたい」という前提があってのこの数字です。使いたい気持ちはあるのに、入口が見えない。

うちが受託の現場でよく見る光景と同じでした。お客さんの担当者が、社内で「AIを検討して」と言われて、検索してみる。出てくるのは、大手のツール比較記事や、資金力のある会社の導入事例ばかりです。自分の店舗数、自分の業務量に置き換えたときに、何から手をつければいいのかが、そこには書いてありません。

「わからない」を、現場の勉強不足のように扱うのは、僕はフェアではないと思っています。情報が、その人たちの規模や業種に向けて整理されていないだけです。


バックオフィスは4人に1人が人手不足、HR課題1位は「次世代育成」

もう一つ、この調査で気になった数字があります。バックオフィスの課題として、「人手が足りていない」が24.9%、「業務量が多い」が24.6%でほぼ同水準。そしてHR領域でいちばん課題として挙げられていたのは「次世代リーダー・管理職の育成」で24.0%でした。

この3つの数字を並べると、担当者の置かれた状況が見えてきます。バックオフィスは人手も業務量も限界に近く、そのうえ次世代を育てる余力を求められている。AIを検討する担当者自身が、この状態にいる可能性が高いということです。

デジタル化が「あまり・ほとんど進んでいない」と答えた人が34.0%いる、という数字も出ていました。進んでいない理由を、担当者の意識の低さに置くのは簡単ですが、今回の数字を見る限り、単純に手が回っていないのだと思います。

AIを入れる前に、AIを使う人を育てる余力自体がない。これは、ツールの機能を比較する話の外側にある問題です。

うちも17人の会社なので、規模の小さい組織で「人手不足」と「育成」が同時に来る苦しさは分かります。育成に時間を使いたいのに、その時間を作る人手が足りない。人手を増やす採用に時間を使いたいのに、その時間も足りない。堂々巡りです。この構造がある会社に、いきなり「AIで全部自動化しましょう」と提案しても、うまくいかないはずだと思っています。


「何から始めるか」を一緒に考える仕事は、ツール導入とは別の仕事だった

何から始めるか、を一緒に考える

ここまでの数字を並べると、次にやるべきことが見えてきます。

「わからない」が1位である以上、最初に必要なのはツールの選定ではなく、「自分たちの業務のどこにAIを当てはめるか」を一緒に考える作業です。これは、ツールベンダーが得意な仕事とは、少し種類が違います。

うちが受託でお客さんと仕事をするときも、要件定義の前段で似たようなことをやっています。お客さんの業務を一つずつ聞いて、どこが手作業で、どこにデータがあって、どこが人でなければ判断できないのかを、一緒に整理する。これをやらないまま「とりあえずAIを入れる」と、あとで「思っていたのと違った」という話になりがちです。

「わからなさ」は、現場の怠慢ではありません。むしろ、忙しくて手が回っていないなかで、それでも使いたいと答えている人たちです。そこに必要なのは、ツールのカタログではなく、一緒に手を動かす時間だと思っています。

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うちが流通・外食のお客さんと、まず何を一緒にやるか

このあたりは、僕らが実際にやっている範囲だけを書きます。

まず、業務を一覧にすることから始めます。何が手作業で、何にどれくらいの時間がかかっているかを、担当者と一緒に洗い出します。この段階では、AIを使うかどうかはまだ決めません。

次に、洗い出した業務の中から、データがすでにある・判断の基準が言葉にできる、という条件に当てはまるものを選びます。この2つが揃っていない業務にAIを入れると、たいてい遠回りになります。

最後に、選んだ1つの業務だけを、小さく試します。全社導入は、あとです。今回の調査で見えた「次世代育成の余力がない」という状態のまま全社に広げると、教える側が先に疲弊します。

これは特別なやり方ではありません。ただ、この3つのステップのうち、最初の2つは「AIの機能」の話ではなく、「自分たちの業務を言葉にする」話です。今回の調査を読んで、この地味な部分こそが、今いちばん求められている支援なんだろうと思いました。

正直に言うと、うちも最初はツールの比較表を作って提案していた時期がありました。機能や料金を並べて、これがいいですよと勧める形です。でも、お客さんの反応がいちばん良かったのは、比較表を見せたときではなく、「まず御社の業務を一緒に洗い出しましょう」と言ったときでした。わからなさの正体は、機能の知識不足ではなく、自分たちの業務を言葉にする機会がなかったことなんだと、そこで気づきました。


出典
株式会社プロガイド『「人が足りない、AIは使いたい」小売・外食のリアル ―― DX・AI、人材、バックオフィスの実態調査2026』(PR TIMES・2026年9月26日発表)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000150113.html

註記
本記事で引用した数字(AIを活用できない理由の順位・小売18.9%/16.0%/18.3%、外食32.9%/25.1%/21.7%、バックオフィス課題24.9%/24.6%、HR課題24.0%、デジタル化の進捗34.0%)は、上記のプレスリリースに記載された民間調査(プロガイド・小売業・外食業それぞれ350名・インターネット調査)の結果です。業界全体を代表する統計ではなく、対象者の回答傾向として読むものです。「わからなさを埋める仕事はツール導入とは別の仕事」「次世代育成の余力がない状態で全社展開すると教える側が疲弊する」といった読み解きは筆者の解釈であり、調査実施元の見解ではありません。自社の対応範囲として書いた内容は、実際に当社が受託の現場で行っている業務整理の範囲にとどめ、特定の顧客名・案件名は含んでいません。


沼田海斗
株式会社K.Platinum代表。受託開発の現場で、製造業・流通業のシステムづくりに携わっている。お客さんの業務を一緒に言葉にするところから始める進め方を大切にしている。


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