こんにちは。K.Platinum代表の沼田です。
新人研修の資料から、「ChatGPTの使い方」のスライドを消しました。
不要になったからです。丁寧に画面キャプチャまで貼って作ったやつだったので、正直ちょっと悔しかったんですが、実際に新人に見せると反応が薄い。あとで聞いたら「それはもう学生のときからやってました」でした。そりゃそうか、と。
で、今年出た調査を見て、うちだけの話じゃないと分かりました。
83.2%が、入社時点で「使ったことがある」
産業能率大学 総合研究所が2026年8月4日に発表した『2026年度 新入社員の会社生活意識調査 生成AI活用意識編』に、こういう数字がありました。
入社時点で、何らかの場面において生成AIを活用した経験がある新入社員:83.2%
2026年度入社の新入社員500人への調査です(調査期間2026年4月3日〜9日)。この調査自体は1990年度から続いていて今回で37回目ですが、2026年度から対象者と手法を変えているため、過去年度との単純比較はできないと原典に明記されています。なので「去年より増えた」とは言えません。言えるのは、いま入ってくる世代の8割超が、入社した時点でもう触ったことがあるという一点です。
ひとつ注意しておくと、これは「業務で使いこなせる」ではありません。何らかの場面で活用した経験がある、です。ここを混同すると、次に書く話がぜんぶズレます。
教えることは減っていない。入れ替わっただけ

この数字を見た会社がやりがちな誤読が、「じゃあAI研修は要らないな」です。うちも最初そう思いました。
でも実際に1年目を受け入れてみると、減ったのではなく、入れ替わっていたというのが正確でした。
教えなくてよくなったこと
- プロンプトの書き方:正直、本人のほうが詳しいことすらあります
- どのツールを使うか:勝手に比較して勝手に選んでいます
- AIに何ができるか:これを説明する時間がまるごと不要になりました
代わりに教えないといけなくなったこと
- 出てきたものが正しいかを、どう確認するか:手順として教えないと、確認そのものをスキップします
- 使ってはいけない場所の線引き:顧客データ、顧客のソースコード、契約前の情報。ここは会社が明示しない限り、本人には判断できません
- AIに聞く前に、何を聞けばいいかを自分で言語化する力:これが一番大きい
3つ目が本命です。質問が作れない人は、AIを持っても止まります。
「エラーが出ました」で止まる人と、「この処理でこの入力のときだけ落ちる。想定はこう」まで書ける人では、同じAIを渡しても結果がまったく違う。そしてこれは、AI以前から新人に教えていたことでもあります。要するに、教える中身は昔からある「仕事の基本」のほうに寄っていったんですね。
新人は、AIを「6割くらい」しか信じていない

同じ調査でいちばんおもしろかったのが、これです。
生成AIが出力する情報を、どの程度信頼できると感じているか
- 41〜60%程度 … 33.0%(最多)
- 21〜40%程度 … 27.0%
- 61〜80%程度 … 22.4%
- 81〜99%程度 … 5.0% / 100% … 3.6%
「100%信じている」はたった3.6%。中央値あたり、だいたい6割くらい信じているところに山があります。
これ、けっこう健全だと思いませんか。少なくとも「AIが言ってるので合ってます」と丸呑みする集団ではない。疑う姿勢はすでにある。足りないのは、疑ったあとに何をするかの手順だけです。
だから、うちが教えているのは「AIを信じるな」ではありません。それはもう持っています。教えているのは、
信じられない残りの4割を、どうやって自分で埋めるか。
一次情報に当たる。手元で動かす。詳しい人に確認する。これだけです。地味ですが、この3つが手順として身についているかどうかで、1年目の成果物の質がはっきり分かれます。
ちなみに「AIに仕事を代替される可能性」に不安を感じている新人は59.2%(強い不安12.8%+やや不安46.4%)。約6割が不安を持っている。ここに「AIに負けないように頑張れ」と乗せるのは、たぶん一番やってはいけないやつです。うちは「AIが出した案を評価できる側に立てば、代替の話は関係なくなる」と伝えています。実際そうなので。
「大きく変わる」は、33.6%しかいなかった
もうひとつ、地味に効く数字があります。
生成AIの普及で仕事の進め方は変わるか、という質問で、「変わる」計は83.6%。ただしその内訳は、
- ある程度変わると思う … 50.0%
- 大きく変わると思う … 33.6%
「大きく変わる」と答えているのは3人に1人だけです。半数は「ある程度」と答えている。つまり新人側は、わりと冷静です。
これ、採用広報をやっている身としては刺さる話でした。「AIを使いこなす会社です」「AIで働き方が激変します」みたいな打ち出しって、煽っているのは会社の側で、受け手は半分くらいの温度で見ているということなので。
学生がAIを使って志望先を絞り込む時代になったことは以前書きましたが(学生はAIに聞いて志望先を外している)、そこで残るのは「AIを使っています」という自己申告ではなく、AIを使った結果、何をどう任せているかという具体のほうです。温度差を読み違えると、いくら書いても届きません。
1年目に任せていること、ルールは1本だけ
うちは17人(うち8人が高専出身)で、ITコンサルティングと受託開発をやっている3期目の会社です。1年目に対するAIのルールは、実は1本しかありません。
AIで作ったものに、自分の判断を1つ足してから出す。
「AIで作ったものをそのまま出すな」ではありません。それだと「どこまで直せばいいのか」が分からず、意味なく書き直す時間が生まれます。そうではなく、足す。
- なぜこの実装を選んだのか、他の案をどう捨てたのか
- この前提が崩れたらどこが壊れるか
- お客さんに聞かないと決められない点はどこか
このどれか1つでいい。1行でもいい。判断が1つ乗っていれば、それは本人の成果物です。
レビューでも、成果物そのものより「なぜその判断にしたか」を聞きます。AIが書いたかどうかは聞きません。聞いても意味がないし、聞くと隠すようになるので。
基準としては、AI以前から変えていないものが1つだけあります。お客さんの前で自分の言葉で説明できない成果物は、未完成。これはAIがあってもなくても同じです。むしろAIが来たことで、この基準が効くようになった感覚があります。
ちなみにこの「1年目からどこまで任せるか」という話は、カジュアル面談でもよく聞かれます。いまの話に少しでもうなずけた方は、エンジニア・ITコンサルタントの募集要項から気軽に覗いてみてください。
落とし穴、3つ
1.「使える前提」で放置する
83.2%が使ったことがある、は「正しく使える」ではありません。放置すると、悪い癖だけがきれいに定着します。うちも一度やりました。
2. 禁止から入る
隠れて使うだけです。会社から見えなくなるぶん、線引きを教える機会も消えます。禁止するなら「これは禁止」ではなく「ここまではOK」の形で出したほうが、結果的に守られます。
3. 立ち上がりが速くなった分、任せる難易度を上げない
AIで1年目の初速は明らかに上がりました。でも同じ難易度の仕事を渡し続けると、速く終わるだけで成長が止まります。速くなった分は、そのまま「一段上を任せる」に使うべきだと思っています。
まとめ:研修の中身は、AIのほうではなく仕事のほうに戻ってきた
「AIの使い方研修」は、たぶんもう数年で消えます。新人のほうが詳しいので。
代わりに残るのは、確認の手順、線引きの判断、質問を作る力。どれもAIが来る前から新人に教えていたことです。ぐるっと回って、教えるべきは結局「仕事の仕方」だったというのが、いまのところの結論です。
そして、新人は思ったより冷静で、AIを6割くらいしか信じていない。その冷静さを削らずに、残り4割の埋め方だけ渡す。それが1年目にできる一番いい投資かなと思っています。
書いた人
沼田 海斗(ぬまた かいと)
株式会社K.Platinum 代表取締役。24歳で起業し、現在3期目・27歳。前職はスタートアップのITコンサルティング会社。現在は17名(うち高専出身8名)で、ITコンサルティング・受託開発・プログラミングスクール「ジゴカツ」の3事業を展開しています。
一緒に働く仲間を探しています
K.Platinumでは、エンジニア・ITコンサルタントを募集しています。新卒・第二新卒も歓迎です。
「AIを使うな」でも「AIを使いこなせ」でもなく、AIが出したものに自分の判断を足せる人と働きたいと思っています。1年目から任される範囲の話も含めて、カジュアル面談でお話しできればうれしいです。

