株式会社K.Platinum 清水洋太
フルリモートの会社に入って最初に無くなるのは、通勤時間ではなく「隣の席」だと思っています。画面の向こうに十数人がいるのに、「それ、どうやって書きました?」の一言が誰にも届かない。放っておくと、技術の話そのものが発生しなくなります。
株式会社K.Platinumは社員十数名、原則リモートワークの会社です。オンラインの勉強会とLT会(ライトニングトーク=短い発表)を定期的に開いていますが、大事なのは開催していること自体ではなく、それをどこに置いているかだと考えています。
この記事では、勉強会とLT会を業務時間のなかに置いている理由と、実際にどんな話が飛び交っているのかを書きます。求人票の「勉強会あり」の一行からは読み取れない部分のはずです。
先に結論だけ書いておきます。差が出るのは「勉強会があるかどうか」ではありません。①業務時間のなかに置いているか、②うまくいかなかった話が出せるか、③発表の順番を年次で決めていないか。この三点です。以下は、その三点について弊社で実際に起きていることです。
勉強会を「任意参加・終業後」にしなかった理由
弊社は完全週休2日制(土日祝休み)、年間休日123日、フルフレックスでコアタイムはありません。標準の勤務時間は9時30分から18時30分ですが、実際には各自が集中できる時間に合わせてずらしています。
これだけ時間の自由度がある会社ほど、勉強会は終業後に置きたくなります。日中の業務を止めずに済むからです。
ただ、終業後に置くと、参加できるかどうかが「その日の生活の都合」で決まります。子どものお迎え、通院、副業(弊社は副業可です)、単純に疲れている日。すると学ぶ機会は、余力のある人だけの趣味になっていきます。
だから勉強会もLT会も、業務時間のなかでやります。「業務を止めてまでやる」というより、「これも業務です」という整理に近い。わざわざ手を挙げなくても参加できる状態にしておく、と言い換えてもいいかもしれません。
それでも、案件の状況で出られない回は必ず出ます。だから資料は残し、あとから追える形にしておく。ここを雑にすると、「出られなかった人」が毎回同じ人になっていきます。フルリモートだと、その偏りは誰の目にも見えないまま進行します。
もう一つ、業務時間に置いているからこその効き目があります。フルフレックスで各自の稼働時間がずれている会社では、全員の予定が同時に空く時間は貴重です。その枠を進捗確認だけで埋めてしまうと、一週間のうち「仕事の話しかしない時間」しか残りません。せっかく揃うのだから、報告ではなく中身の話に使う。勉強会とLT会は、その枠の使い道を決める仕組みでもあります。
LTのネタは「この構成、結局やめました」でいい
LTは短い発表です。持ち時間が数分しかないので、立派な成果を用意する必要がありません。これは制約ではなく、狙いです。
実際に一番反応があるのは、「この構成を検討して、結局やめました」という話です。採用した技術より、採用しなかった技術と、その理由。詰まった場所と、抜け出すのに使った時間。
弊社の案件は、クラウドならAWSとAzureの両方、言語はJavaを中心にTypeScriptやPythonと、プロジェクトごとに触るものが違います。設立から2年で20件を超える開発プロジェクトを経験してきましたが、そのぶんA案件の誰かが踏んだ落とし穴は、B案件の誰かの未来です。
うまくいかなかった話を出せるかどうかは、結局その場の空気で決まります。ここで犯人探しが一度でも起きると、以降のLTは「きれいに終わった話」しか出てこなくなる。そうなった勉強会は、そこそこ和やかで、まったく役に立ちません。
逆に言えば、詰まった話が普通に出てくる場が維持できているかどうかは、その会社の空気をかなり正確に映します。面接で会社の雰囲気を知りたいとき、「勉強会で最近どんな話が出ましたか」と聞いてみるのは、なかなか良い質問だと思います。

「勉強会で最近どんな話が出ましたか」── その答えを、こちらからお話しする場もあります。カジュアル面談は選考ではないので、履歴書も志望動機の準備も要りません。
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同じツールを配っても差がつく ── いま一番、共有が効くのは生成AIの使い方
弊社は開発プロセスに生成AIを組み込んでいます。ChatGPTで設計メモやドキュメントを作り、Claude Codeでコードを生成し、Copilotでレビューする。この三段構えで、従来と比べて5倍から20倍の生産性が出る場面があります。
ここで起きるのは、ツールは配れば全員に揃うのに、使い方は配れないという状況です。同じ道具を渡されても、指示の粒度、どこまで任せてどこから自分で引き取るか、生成されたコードをどの観点でレビューするかで、結果は驚くほど変わります。
この差がいちばん縮まるのは、誰かの画面で実際の手順を見る瞬間です。「そこ、そんなに細かく指示するんですね」「その生成結果、私なら捨ててます」といった会話は、ドキュメントを読んでも発生しません。だからAIの使い方は、勉強会のテーマとして今のところ最強です。
未経験からエンジニアになった人にとっては、もう一つ意味があります。AIへの指示は、その人が頭のなかで設計をどう分解しているかの、ほぼそのままの写しです。先輩の思考が文字になって流れていくのを見られる機会は、そう多くありません。
ちなみに、生産性が5倍から20倍になっても、人が確認しなくていい工程は増えていません。速くなったぶん、レビューの比重が上がっている。その実感も含めて共有できる場が要る、というのが正直なところです。
発表の順番は、年次では決めない ── 平均年齢27.5歳の会社で起きていること
弊社の平均年齢は27.5歳で、20代のリーダーも複数います。そういう会社なので、LTの発表者を年次で決めても意味がありません。やった人が話す、というだけです。
入社して間もない人が発表して、経験の長い人が質問する。この順番が普通に起きることが、私たちにとってはかなり大事です。逆向きだけの場になった瞬間、勉強会は研修になり、参加者は受け身になります。
キャッチアップ中の人からは、「まだ発表できることがない」とよく言われます。でも実際には、初めてその技術に触れた人が詰まった場所こそ、いちばん価値のある情報です。慣れた人はそこを無意識に通過してしまうので、もう二度と言語化できません。
インターンで来てくれた学生にも、同じ場に入ってもらっています。社会人歴の長さと、技術の面白さを説明する力は別物です。「なぜそれを面白いと思ったのか」を言葉にできる人は、年齢に関係なく場の温度を上げます。受け入れる側にとっても、当たり前になっていた前提を質問してもらえる貴重な機会です。
育成はOJTが中心で、研修制度や資格取得支援も用意していますが、いちばん効いているのは、こうやって日常的に人の作業を覗ける状態だと思っています。
まとめ
勉強会やLT会があること自体は、正直どこの会社でも書けます。違いが出るのは、それを業務時間に置いているか、詰まった話が出せる空気があるか、発表の順番を年次で決めていないか、という運用のほうです。
K.Platinumは社員十数名、原則リモート、フルフレックスの会社です。人数が少ないぶん、誰か一人が学んだことは、かなりの速さで全体に効きます。そういう規模で、上流の提案から開発・リリースまで一気通貫で手がけている環境は、そう多くないはずです。
「技術の話ができる人と働きたい」と思っているなら、一度カジュアルにお話ししませんか。いきなり選考ではなく、私たちの勉強会で最近どんな話が出ているかを聞いてもらうところからで構いません。
清水洋太(しみず・ようた)
株式会社K.Platinum所属。エンジニアが力を発揮できる環境づくりを大切にしている。
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