「行動指針? うちにもあるけど、誰も覚えてないよ」
友人のエンジニアが飲みの席でそう言った。壁に貼ってある額縁の中の、誰も読まない言葉。朝礼で唱和するだけの、意味を失ったフレーズ。正直、僕はゾッとした。それって、ないのと同じじゃないか。
K.Platinumの行動指針は「CHANCE, CHANGE, CHALLENGE」。設立2年目、メンバーが10人を超えたあたりで作った。額縁に入れるためじゃない。判断に迷ったとき、全員が同じ方向を向くために作った。今日はその理由と、17人になった今、実際に何が変わったかを正直に書く。
なぜ設立2年目で行動指針を作ったのか
最初の1年は、正直いらなかった。
メンバーは数人で、全員と毎日顔を合わせていた。僕が何を考えているか、何を大事にしているか、黙っていても伝わっていた。「こういうときはこうするよね」という暗黙の了解で回っていた。
変わったのは、10人を超えたあたりだ。
僕が直接話す機会がないメンバーが出てきた。案件が並行して走り、チームが分かれた。すると「あれ?」と思うことが増えた。案件のアサイン方針について「代表ならどう判断するか」がチーム内でブレる。採用面接でも、評価基準が面接官によって微妙に違う。
一人ひとりは優秀だ。でも、判断の軸がバラバラだと、組織としての一貫性がなくなる。
17人になった今、振り返ると、あのタイミングで作って正解だった。遅かったら「なんとなくの文化」が固まってしまって、後から上書きするのは難しかったと思う。
CHANCE — 機会を掴む

1つ目の「C」はCHANCE(チャンス)。機会を掴む、という意味だ。
これを最初に持ってきたのには理由がある。ITコンサルの世界は、待っていても仕事は降ってこない。クライアントの課題を見つけて、「うちならこうできます」と手を挙げる。その一歩を踏み出せるかどうかで、キャリアもプロジェクトの質も変わる。
僕自身がそうだった。沖縄高専を出て、トヨタシステムズでプロジェクトリーダーをやって、スタートアップのITコンサルに転職して、24歳で独立した。どのタイミングも「誰かに勧められたから」じゃない。自分で「今だ」と思って動いた結果だ。
K.Platinumでは、これを制度にも反映している。案件選択制がその一つだ。メンバーが自分で案件を選べる仕組みにしている。「このプロジェクト、自分がやりたい」と手を挙げること自体が、CHANCEを掴む行動だ。
待っていれば安定した案件がアサインされる会社もある。でもそれは、機会を掴む力が育たない。自分で選ぶからこそ、責任も生まれるし、成長もする。
CHANGE — 自分を変える
2つ目の「C」はCHANGE(チェンジ)。自分を変える、という意味だ。
エンジニアにとって「変わる」ことは生存戦略そのものだと思っている。技術は3年で入れ替わる。昨日までのベストプラクティスが、今日のアンチパターンになる。ChatGPTが出てきて、Claude Codeが出てきて、AIエージェントが当たり前になりつつある2026年。「去年と同じスキルセット」で戦い続けるのはリスクでしかない。
でも、変わるって怖い。特にエンジニアは、自分の技術スタックに愛着がある。「Javaを10年やってきた」「インフラ畑だからアプリは……」みたいな自己定義に縛られている人は多い。
K.Platinumでは、意図的に「越境」を推奨している。バックエンドのエンジニアがフロントに挑戦する。開発メンバーがクライアントとの折衝をやってみる。エンジニアでありながら営業もやる「2軸キャリア」を制度化しているのも、CHANGEの思想が根底にある。
変わることを恐れない組織でいたい。そのために、まず指針として言語化した。
CHALLENGE — 挑戦する
3つ目の「C」はCHALLENGE(チャレンジ)。挑戦する、だ。
CHANCEとCHANGEの先にあるのが、CHALLENGEだと思っている。機会を見つけて、自分を変えて、そのうえで未知の領域に踏み込む。この順番が大事で、いきなり「挑戦しろ」と言っても、機会の見つけ方も変わり方も分からなければ、無謀なだけだ。
僕がK.Platinumを作ったのも、挑戦だった。資本金10万円、24歳、実績ゼロ。ITコンサルティングと受託開発をやると言っても、最初は誰も相手にしてくれなかった。それでも「やらない後悔よりやる後悔」を選んだ。3期目の今、メンバーは17人、資本金は2,000万円になった。
プログラミングスクール「ジゴカツ」を立ち上げたのも挑戦だ。ITコンサル会社がスクールをやるのは珍しい。でも、僕たちが現場で培った「本当に使えるスキル」を教えられるのは強みだと思った。
挑戦は、会社だけの話じゃない。メンバー個人にも求めている。「今の自分にはちょっと荷が重いかも」というプロジェクトに、あえて手を挙げてほしい。そのとき、フォローする体制は整えている。背中を押すけど、突き落とすことはしない。
この3つのCに共感できる方へ — K.Platinumでは、CHANCEを掴み、CHANGEを恐れず、CHALLENGEを楽しめるエンジニアを募集しています。エンジニア募集の詳しい条件を見る
行動指針を作ってから実際に起きた3つの変化

言葉を作っただけじゃ意味がない。大事なのは「で、何が変わったの?」だ。正直に書く。
1. 採用面接の精度が上がった
面接で「うちの行動指針はCHANCE, CHANGE, CHALLENGEなんだけど、直近でCHANGEした経験ある?」と聞くようになった。これが驚くほど効く。
技術スキルだけ見ていたときは、「スペックは高いけど、うちのカルチャーに合うか分からない」という採用ミスがあった。行動指針ベースの質問を入れてから、入社後のギャップが明らかに減った。
特に「CHANGE」の質問は効果的だ。自分を変えた経験がある人は、新しい環境でも適応できる。逆に「変わった経験がない」人は、うちのスピード感についていけないことが多い。
2. 日常の意思決定が速くなった
「これ、どうしましょう?」と聞かれたとき、「CHANCEの観点で考えてみて」と返すだけで、メンバー自身が答えを出せるようになった。
以前は僕が判断を下すまで動けないケースがあった。でも行動指針があると、「代表ならCHALLENGEを選ぶだろうな」と各自が推測できる。結果として、僕がボトルネックになる場面が減った。
17人の組織で代表がボトルネックになったら終わりだ。行動指針は、僕の判断基準を全員にインストールするツールだった。
3. 「辞めるとき」の会話が変わった
K.Platinumには「卒業制度」という考え方がある。独立したいメンバーを応援するスタンスだ。
行動指針を作る前は、退職の話が出ると「引き止めるか、諦めるか」の二択だった。でも今は違う。「CHALLENGEとして独立を選ぶなら、応援する」と自然に言える。行動指針が退職のネガティブなイメージを「新しい挑戦」に変えてくれた。
これは意図していなかった効果だ。でも、一番嬉しい変化かもしれない。
行動指針は「判断基準」だ
行動指針は、壁に飾るものじゃない。毎日の判断に使うものだ。
CHANCE — 機会を見逃さない。
CHANGE — 変わることを恐れない。
CHALLENGE — 未知に踏み込む。
この3つがあるから、K.Platinumは17人でも一貫性のある組織でいられる。メンバーが増えても、判断の軸がブレない。
もし今「行動指針なんて飾りでしょ」と思っている人がいたら、それは行動指針が悪いんじゃなくて、使い方が悪いだけだ。言葉にして、制度に落とし込んで、日常の判断で使う。それだけで組織は変わる。
僕はこの3つのCを本気で信じている。だからK.Platinumに来る人にも、同じ方向を向いてほしい。
筆者プロフィール
沼田 海斗(ぬまた かいと)
株式会社K.Platinum 代表取締役。沖縄高専(メディア情報工学科)卒。トヨタシステムズでプロジェクトリーダーを経験後、スタートアップITコンサルを経て24歳で独立。ITコンサルティング・受託開発・プログラミングスクール「ジゴカツ」を運営。プロキックボクサー(3戦)としても活動中。ママチャリで日本一周した過去あり。
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