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2026年6月26日

『SaaSの死』後の中堅企業のシステム戦略 — 内製化できる会社/できない会社を分ける3条件と、17人ITコンサルの新しい立ち位置

4人が机に座り、コンピューターのモニターに映し出されたAIや脳の図表を眺めている。その頭上には、ひび割れた大きな雲のシンボルが浮かんでおり、サイバー攻撃やデータ漏洩のシナリオを連想させる。.

こんにちは、株式会社K.Platinum代表の沼田海斗です。24歳のときに会社を立ち上げて、いま3期目。エンジニア17人、製造業・流通・金融を中心としたITコンサルと受託開発をやっています。

最近、社長同士の会食や打ち合わせで、必ずと言っていいほど「SaaSの死」の話題が出ます。

「うちもSaaSにいくら払ってるかわからなくなってきた」
「もうこの業務、AIで作り直したほうが早いんじゃないか」
「ベンダーロックインがしんどい」

2026年2月、日本の中堅SaaS銘柄が1ヶ月で時価総額をごっそり溶かしました。日経の報道だと中堅クラスのSaaS各社合算で15兆円規模の評価減です。一方で、Salesforceの社長は「AIは我々を代替できない」と強気の発言を続けている。大和総研は「SaaSを前提にした業務システム設計のロジックが揺らいでいる」と書いている。

業界全体が、2026年に入ってから明らかに「次の踊り場」を探し始めました。

僕ら17人のITコンサルにも、ここ半年で「SaaSをやめてAIで作りたい」という相談が露骨に増えました。製造業の在庫管理、商社の受発注、金融の与信周り。どれも社内にエンジニアがほとんどいない、いわゆる中堅企業からの相談です。

ただ、結論から言うと、そのほとんどは内製化に行くべきではないと僕は思っています。

この記事では、僕が現場で見てきた「内製化できる会社/できない会社を分ける3条件」と、それを踏まえて17人ITコンサルが取りに行っている新しいポジションについて、フラットに書きます。

中堅企業の経営者・情シス・DX担当者、そして同業のITコンサルや受託開発の経営者の方に、特に読んでほしい内容です。


1. 2026年に起きた「SaaSの死」言説、結局なんだったのか

念のため前提を揃えておきます。

「SaaSの死」と言われるようになったきっかけは、ざっくりこの3つです。

ひとつ目は、生成AIで業務システムが"安く速く"作れるようになってきたこと。Claude CodeやDevin、Cursorといったコーディングエージェントの精度が一気に上がり、「数百万円のSaaSを年単位で払い続けるより、自前で作ったほうがトータル安いのでは」という計算がリアルに成立し始めました。

ふたつ目は、SaaS各社の値上げと機能肥大化。SaaSは導入後3年経つと、当初使っていなかった機能まで価格に乗ってくることが多い。中堅企業ほどこの「使っていない部分のコスト」が重く、契約継続のたびにモヤモヤがたまる。

みっつ目は、ベンダーロックインの可視化。生成AIで自社業務を整理し直すと、「これ、SaaSがやっているのって結局CRUDとちょっとの集計だけだよね」と気付くケースが出てきた。10年前ならノーコードSaaSは魔法に見えていましたが、いまや「魔法」の中身がコモディティ化しつつあります。

この3つが重なって、2026年2月、ついに株式市場が反応した。それが「SaaSの死」言説の正体です。

ただ、これを「SaaSはもう終わり」と読むのは雑すぎます。Salesforce社長の「AIは我々を代替できない」発言にも理があって、実際、エンタープライズ向けSaaSの主要機能(ID管理/監査ログ/コンプライアンス/グローバル多通貨対応/SLA保証)は、生成AIで一晩で再現できるようなものじゃない。

つまり、「SaaSは死んだ」のではなく「SaaSと自前開発の境界線が引き直されている」というのが、現場の実感に近い。


2. 内製化"できる会社"3条件、"できない会社"の典型

図解:内製化できる会社/できない会社を分ける3条件マトリックス

ここからが本題です。

僕が中堅企業の相談を聞いていて、「この会社は内製化に行ったほうがいい/行くべきじゃない」を分けるのは、ほぼこの3条件で決まります。

条件A: 社内にエンジニアがいる(最低3人以上)

身も蓋もないですが、まずこれ。

「うちはエンジニアいないけど、AIに書かせるから大丈夫」という相談を本気でくれる経営者がいます。気持ちはわかります。Devinの実演を見て、Claude Codeのデモを見て、「これなら社内のExcel強い若手でいけそう」と思ってしまう。

でも、現実は違う。生成AIが書いたコードを「動くけど壊れやすい状態」から「本番運用に耐える状態」に持っていく仕事は、まだエンジニアじゃないと無理です。具体的にはエラーハンドリング、トランザクション設計、リトライ・冪等性、監査ログ、権限分離あたり。AIは「正解の道」は書けるけど、「失敗したときの道」をきれいに書くのが極端に苦手です。

最低3人と書いたのは、1人だと退職した瞬間に止まるから。2人だと相互レビューが成立するけど休みが取れない。3人いれば、相互レビューと交代運用が成立し始めます。

条件B: 業務がある程度"型化"されている

ふたつ目は、対象業務がちゃんと型化されているか。

ここで言う「型化」は、業務マニュアルがあるとか、SOPがあるという話じゃない。「異常系を含めて、誰がやっても同じ判断ができるレベルまで言語化されている」かどうかです。

たとえば在庫管理。中堅製造業だと、「この客先からの注文だけは特殊納期で個別判断」とか、「○○商品は工場長が見てから出荷判断」みたいな"暗黙の例外処理"が必ず10〜20個あります。SaaSはこういう例外を「マスタ登録」「ワークフロー設定」で吸収してくれていた。ところが内製化に踏み切ると、この例外を全部コードに落とす作業が待っています。

業務が型化されていない状態でAIに「現行業務を再現するシステム作って」と頼むと、誰もチェックできないコードが大量に積み上がります。そして3ヶ月後、現場から「これじゃ仕事にならない」と猛抗議が来る。これが内製化PoCで一番よく見るパターンです。

条件C: 要件が頻繁に変わる

みっつ目は、要件の変動頻度。

これは逆向きで、要件が頻繁に変わる業務こそ内製化に向いている。SaaSは標準化された業務に強く、独自要件の追加に弱い。一方、自前のコードは独自要件をその場で叩き込める。

逆に、要件がほとんど変わらない業務(会計・給与・経費精算など)は、SaaSのままが正解です。生成AIで内製化しても、ROIが出ない。

つまり、3条件をシンプルにまとめるとこうです。

  • 社内エンジニア3人以上
  • 業務が型化されている
  • 要件が頻繁に変わる

この3つが揃って初めて、中堅企業はSaaSから内製に踏み出していい

逆に言うと、ほとんどの中堅企業はこの3条件のうち1つか2つが欠けている。だから「SaaSをやめてAIで作ろう」と決めた瞬間、PoC地獄が始まります。


3. 「相談される側」として見えている、現場のリアル

僕らは17人のITコンサルですが、相談ベースだと年間で数十件、中堅企業の「SaaS脱却・AI内製化」案件に触れています。製造業、商社、流通、金融。業種はバラバラですが、相談の入り口は驚くほど似ています。

最初に出てくるセリフはだいたいこのどれかです。

  • 「SaaSの年額が初年度の3倍になっていて、もうきつい」
  • 「現場が"AIで作り直してよ"と言うけど、情シスは慎重」
  • 「他社が内製化して成功したらしい、うちもやらないと取り残される」
  • 「DXの予算は取ってあるが、何に使えばいいかわからない」

このうち、最後のふたつは要注意のサインです。「他社が成功したらしい」「予算があるから使う」で内製化に踏み切ると、9割PoC止まりで終わります。

理由は単純で、経営側に"内製化したい理由"の主語がないから。SaaSをやめる理由が"自社のため"じゃなく"他社が始めたから"だと、要件定義の段階で意思決定が遅れ、半年経っても何も決まらない。

逆に、最初のふたつ(SaaSコストの実害/現場の強いニーズ)から入ってきた会社は、3条件が揃っていれば内製化がワークしやすい。

僕らITコンサル側で最初にやるのは、「内製化すべきかどうかの診断」です。技術選定や開発の話はその後。診断の段階で「いまの御社は内製化に行くべきじゃない」と正直に言う相談が、全体の6〜7割あります。

「うちで受託できる案件を断ってる」と言われそうですが、これは中長期で見ると逆です。内製化に踏み切るべきでない会社に内製化を売ると、必ず3ヶ月後に「やっぱり戻したい」「結局SaaSに戻すからこのコードどうしてくれる」と揉める。それでこっちの評判が落ちる。短期売上より、中長期の信頼のほうが17人組織には大事だと、3期目で身に染みて理解しました。


4. 17人ITコンサルが取りに行く"第3のポジション" — 伴走型AI実装

カード:17人ITコンサルが取る伴走ポジション

ここからは、僕ら17人がここ1年で意識的に取りに行っているポジションの話です。

中堅企業のシステム戦略は、いまざっくり3択になっています。

  • 選択肢1: SaaSを使い続ける(標準業務・コンプラ要件強い領域)
  • 選択肢2: 完全内製化する(3条件揃った会社・要件変動激しい領域)
  • 選択肢3: 伴走型AI実装(3条件のうち1〜2個欠けているが、SaaSにも限界が来ている会社)

僕らが取りに行っているのは、3つ目の「伴走型AI実装」です。

これは何かというと、「自社にエンジニアがいない/業務が型化しきれていない/要件は変わる」という中堅企業に、ITコンサル側が3〜6ヶ月だけ常駐に近い形で入って、AIネイティブな業務システムを一緒に作るスタイルです。

完全な受託開発(ベンダーに丸投げ)でも、完全な内製化(自社エンジニアで全部)でもない。中堅企業の業務担当と、僕らのエンジニア・コンサルが、同じドキュメント・同じコードベースを共有して、最初の3ヶ月は僕らが7、お客さんが3で進める。3ヶ月過ぎたら6:4、半年後には3:7。最後の3ヶ月は引き継ぎフェーズで、僕らはレビューとAIの運用設計だけやる。

これを社内では「グラデーション契約」と呼んでいます。受託でもなく内製化でもない、3つ目の選び方。

なんでこのポジションが成立するかというと、生成AIのおかげで、コードを書く部分のコストが劇的に下がったから。10年前なら、3ヶ月で業務システムをスクラッチで作るのは現実的じゃなかった。いまはClaude CodeとCursorを使い倒すと、要件定義から本番稼働までを4〜6ヶ月で持っていけることが珍しくない。

つまり、「丸投げの受託」と「丸抱えの内製」の中間に、生成AIが新しい余白を作ったということ。この余白を、17人規模のITコンサルが取りに行ける。大手SI(NRIや富士通やAccenture)は、組織が大きすぎて伴走型は構造的に向いていません。フリーランス1人だと案件が回らない。17人〜30人くらいの、ITコンサルと受託の両方を行き来できる組織サイズが、伴走型AI実装には一番フィットする

これは僕の願望じゃなく、現場で実際に動いている契約から見えている事実です。

「伴走型AI実装」を一緒にやる仲間を募集しています。 中堅企業の業務をゼロから設計し、生成AIをフル活用してスクラッチで形にする——そんな経験を積みたいエンジニアは、K.Platinumの採用情報をのぞいてみてください。


5. 中堅経営者向け:内製化か伴走か、自己診断3問

最後に、いま自社のシステム戦略で迷っている中堅経営者・情シス・DX担当の方向けに、簡単な自己診断を置いておきます。3問だけです。

問1: 社内にプロダクション運用経験があるエンジニアは何人いますか?

  • 0人 → 内製化は早い。伴走型 or SaaS継続
  • 1〜2人 → 内製化はリスク高い。伴走型推奨
  • 3人以上 → 内製化候補。条件B/Cを確認

問2: 対象業務の「異常系・例外処理」を3つ以上、すぐに書き出せますか?

  • 書き出せない → 業務が型化されていない。内製化はPoC止まりリスク大
  • 3〜5個書き出せる → 業務は型化されている。伴走中に整理可能
  • 10個以上書き出せる → 完全に型化されている。内製化検討OK

問3: その業務の要件は、ここ1年で何回変わりましたか?

  • 0〜1回 → SaaSのままが正解。内製化のROIが出ない
  • 2〜5回 → 内製化を真剣に検討するライン
  • 6回以上 → ほぼ確定で内製化向き。SaaSではコストとスピードが噛み合わない

3問の答えを並べて、内製化に踏み切れる会社は実際そんなに多くない。でも"SaaS継続"でも"完全内製化"でもない第3の道が、いま明らかに広がっている。それが、僕ら17人のITコンサルが今いるポジションです。


まとめ

2026年の「SaaSの死」言説は、SaaSが消える話じゃなくて、SaaSと自前開発の境界線が引き直されている話。

中堅企業が踏み出す前にチェックすべきは、社内エンジニア3人/業務の型化/要件の変動頻度の3条件。揃わない会社は、いきなり内製化に踏み切らない方がいい。

そして、その間を埋める「伴走型AI実装」というポジションが、17人規模のITコンサルにとっての主戦場になりつつある。

K.Platinumは、製造業・流通・金融の中堅企業向けに、この伴走型AI実装を真ん中に置いて受託開発・ITコンサルをやっています。「SaaSをやめたい」「AIで作り直したい」と検討中の経営者の方は、まず内製化すべきかどうかの診断からご相談ください。3条件チェックだけならカジュアル面談1時間で終わります。

採用面では、こういう「中堅企業の業務をスクラッチで作る経験」を1〜2年で積みたいエンジニアを、引き続き募集しています。AIに丸投げじゃなく、AIをツールとして使い倒しながら、業務理解・要件定義・実装・運用まで一気通貫で経験できる現場です。

僕らは"SaaSの死"を語る側じゃなく、その後の中堅企業に伴走する側でいたい。3期目の小さな会社が、いま取りにいっているポジションの話でした。


沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum 代表取締役CEO。24歳で会社を立ち上げ、現在3期目。製造業・流通・金融を中心としたITコンサルティングと受託開発を率いる。エンジニアが正当に評価される社会の実現を目指している。


K.Platinumでは一緒に働くエンジニアを募集しています。「実力で正当に評価される環境」に興味がある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。

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