こんにちは。K.Platinum代表の沼田海斗です。
僕は24歳でこの会社を立ち上げて、今は3期目・27歳。社員は17人で、製造業・流通・金融の中堅企業を相手に、ITコンサル+受託開発+ジゴカツ(プログラミングスクール)の3本柱でやっています。
今日は、地味だけど見逃すと損をする話を書きます。補助金の「名前」が変わった、という話です。
長年「IT導入補助金」と呼ばれてきた制度が、2026年度(令和7年度補正)から「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更されました。名前から実質的に"IT"という言葉の主役の座が外れて、代わりに「AI」が正面に出てきた。
「ただの改名でしょ」と流した会社から、出遅れます。これは看板の塗り替えではなく、制度の思想そのものが変わったサインだからです。
1. 「ただの改名」だと思った会社が、出遅れる
補助金の名前なんて、普通は気にしません。僕も昔はそうでした。
でも、行政の制度における「名前の変更」は、ほぼ例外なくお金の流し先を変えるサインです。名前を変えるには審議も予算の組み替えも要る。手間をかけてまで変えるということは、「今までと違うものを応援したい」という意思表示なんです。
今回でいえば、「IT導入補助金」という名前が応援していたのは、長らく業務効率化のためのITツール導入でした。会計ソフト、勤怠管理、受発注システム。いわゆる「パッケージを入れて、手作業を減らす」世界です。
それが「デジタル化・AI導入補助金」になった。AIを実装することそのものが、制度の真ん中に来た。最大450万円、補助率は枠によって1/2〜4/5。公募要領も公開されています。
ここで「うちはまだ会計ソフト入れたばっかりだし」とスルーすると、競合が補助金でAIを実装して一歩先に行く。名前の変化を読めるかどうかで、来年の差が地味につきます。
2. "効率化のIT"から"実装するAI"へ — 何が問われるようになったか
では、具体的に何が変わったのか。一番大きいのは、補助金が問う「質問」が変わったことです。
旧来の「IT導入補助金」が暗に問うていたのは、こうでした。
「どのITツールを、いくらで入れますか?」
ツールを選んで、入れて、手作業が減れば成功。比較的シンプルです。
ところが「デジタル化・AI導入補助金」が問うているのは、もっと厄介な質問です。
「そのAIを、業務のどこに、どう実装して、どう回し続けますか?」
AIはパッケージを入れれば終わり、ではありません。どの業務に当てるか、どんなデータを食わせるか、精度が出なかったときどうするか、運用は誰が見るか。「導入」より「実装と運用」が問われる制度になった。
ここが、効率化の時代と決定的に違うところです。ITツールは「入れたら効く」けど、AIは「入れてから育てる」もの。補助金の思想がそこに追いついてきた、というのが僕の読み方です。
つまり、申請の段階で「回るAIの絵」を描けない会社は、お金が下りても本番に乗せられない。制度がAI寄りになったぶん、伴走できるパートナーの有無で結果が大きく変わるようになりました。
3. 中堅製造・流通が「通常枠」でAIを入れるときの順序
ここからは実務です。中堅の製造業・流通の会社が、この補助金を使って初めてAIを入れるとき、僕らがいつも握っている順序を書きます。

結論から言うと、「補助金を取ってからAIを考える」は失敗します。順番が逆です。正しくはこの3ステップ。
ステップ1:業務の地ならし(補助金より前)
まず、AIの話を一切しないで、業務を棚卸しします。
製造業なら「図面や仕様書を探すのに何時間溶けているか」、流通なら「伝票照合や在庫確認に何人時が消えているか」。お金と人がどこで詰まっているかを数字で出す。
ここが弱いと、その後の補助金申請が「とりあえずAIっぽいこと」になって、本番で使われないシステムが生まれます。地ならしは補助金の対象外に見えますが、ここが全工程で一番大事です。
ステップ2:小さく回す(PoCを1本だけ)
棚卸しで「ここに人時が一番溶けている」と分かった業務に、AIを1本だけ当てて小さく試す。
製造業ならGraphRAGで図面・仕様書の横断検索、流通ならAIエージェントによる伝票自動照合。複数同時にやると運用フェーズで必ず詰まるので、最初は1本。ここで「本番に乗せられるか」を見極めます。
ステップ3:補助金で本実装する
小さく回して手応えがあったテーマを、補助金を使って本実装に乗せる。
このとき補助金は「PoCの費用」ではなく「本番に乗せる費用」に当てるのがコツです。多くの会社が補助金をPoCで使い切って、本番に進む予算が残らない。順序を「地ならし→小さく回す→補助金で本実装」にすると、補助金が一番効く場所に当たります。
(こうした「順序でAIを入れる」進め方を、実際の案件で一緒に組み立てるエンジニアを探しています。少しでも面白そうと思ったら、エンジニア募集の詳細をのぞいてみてください。)
4. 17人ITコンサルが申請から本番化まで握る役割
補助金まわりには「申請代行」を謳う業者がたくさんいます。でも、僕らがやっているのは少し違います。

申請代行が作るのは、たいてい「審査に通る計画書」です。それ自体は悪くない。でも、計画書が通っても「回るAI」が残らなければ、補助金は1年後にただの思い出になります。
僕らが握っているのはこの一点です。「通る計画書」ではなく「回るAIを前提に、申請から本番運用まで設計する」。
具体的には、
- 申請の段階で、本番運用の体制(誰が・どんな頻度で・どう精度を見るか)まで描く
- 「補助金が下りる前提」ではなく「下りなくてもやる価値があるか」で優先度を決める
- 本実装は、受託でフル開発するか/社内エンジニアに伴走して内製するかを最初に握る
特に最後が大事で、社内に技術判断できる人が1人でもいるなら、僕は内製伴走を勧めます。補助金で外注して作ったAIを、補助金が切れた瞬間に誰も触れない、という状態を避けたいからです。
補助金は強力なテコです。でも、テコは支点がしっかりしていないと空回りする。その支点が「業務の地ならし」と「運用まで描いた設計」だ、というのが3期目までの僕らの結論です。
5. 補助金は入口、回収は運用
まとめます。
「IT導入補助金」が「デジタル化・AI導入補助金」になったのは、ただの改名ではありません。制度が「効率化のITを入れる」から「実装するAIを回す」へ舵を切った、その号砲です。
- 名前の変化は、お金の流し先が変わったサイン
- 問われるのは「導入」ではなく「実装と運用」
- 順序は「業務の地ならし→小さく回す→補助金で本実装」
- 補助金は入口にすぎず、回収は運用フェーズで起きる
最大450万円という額は、中堅企業がAIを本気で1テーマ実装するには十分なテコです。ただし、テコを活かせるかどうかは、申請の前に「回るAIの絵」を描けているかで決まります。
採用観点 — 補助金とAIの"あいだ"を翻訳できる人
最後に採用の話を。
この仕事を回せる人は、補助金の専門家でもなければ、純粋なAIエンジニアでもありません。「制度の言葉」と「現場の業務」と「AIの実装」の3つを行き来して翻訳できる人です。
僕らが採りたいのは、こんな人。
- 製造業/流通/金融のどれかの業務がわかる人
- AI・クラウド・データ基盤のどれかを実装まで持っていける人
- 経営層や行政の言葉を、現場で回る設計に翻訳できる人
3つ全部は揃っていなくて大丈夫。2つあって残り1つを伸ばす気がある人なら、補助金×AI実装という、これから確実に伸びる領域の最前線に立てます。
会社の構造上、面接は最初から代表の僕が出ます。制度の変化を、現場のAIにどう翻訳するか。そういう話を一緒にできる人と会いたいです。
沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum代表。24歳で同社を創業し、3期目の現在は製造・流通・金融の中堅企業を相手に、ITコンサル・受託開発・プログラミングスクールの3本柱を率いる。エンジニアが正当に評価される社会を目指している。
K.Platinumでは一緒に働くエンジニアを募集しています。「実力で正当に評価される環境」に興味がある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。ご質問・カジュアル面談のお問い合わせもお気軽にどうぞ。

