こんにちは。K.Platinum代表の沼田です。
「AIでエンジニアの仕事はなくなるのか」という話題は、この1〜2年ずっと続いています。うちはAIやRAGを使った受託開発をやっている会社なので、この話はお客さんにも、採用面接で会う人にも、よく聞かれます。
そんな中、LAPRAS HR TECH LABが9月1日に公開した調査「生成AI時代、ITエンジニアのキャリアの悩みとは?」を読みました。調査は2026年6月に実施され、回答は279名。エンジニアが実際に何に悩んでいるのかが、数字で出ています。
読んでみると、いちばん多い悩みは、僕が予想していた「仕事がなくなる不安」ではありませんでした。
※本記事は2026年9月時点の情報にもとづいています。引用元はLAPRASに登録しているエンジニアへの調査(n=279)で、エンジニア全体を代表する数字ではありません。
悩みの1位は「失業」ではなく「自分の価値が見えない」
キャリアの悩みの内訳を見ると、1位は「AI時代に、自分にしかできない価値の見極め」で25.8%(72名)でした。2位の「雇用の縮小への懸念」は11.8%(33名)、3位の「コーディングの満足感の喪失」が9.3%(26名)です。
つまり、「仕事がなくなるのが怖い」という人より、「自分は何で価値を出せるのか分からない」という人のほうが、倍以上いるということです。
僕は、この数字はとても納得できるものでした。AIがコードを書けるようになって、エンジニアの仕事が奪われるというより、「自分が書いていたものの価値は、どこにあったのか」が問われる状況になった。失業の不安というより、役割の再定義に迷っている、という感じだと思います。
3位の「コーディングの満足感の喪失」も、地味に重い数字です。コードを書くことが好きで入った人にとって、書く作業をAIに任せる場面が増えると、手触りが減る。これは給与や待遇では解決しにくい、仕事の面白さの問題です。
これから必要なスキル1位は「ビジネス理解・PM能力」(71.3%)

同じLAPRASが8月18日に公開した別の調査では、これからのエンジニアに必要だと考えるスキルが聞かれています。
いちばん多かったのが「ビジネスモデルの理解・PM能力」で71.3%。次が「AI成果物の検証・レビュー力」で69.5%、その次が「上流工程のスキル」で54.5%でした。
ここには、コードを書く力より前に必要なものが並んでいます。何のために作るのか(ビジネスの理解)、作ったものが正しいのか(検証・レビュー)、そもそも何を作るのか(上流工程)。エンジニア自身が、これからの価値は「書く」より「決める・確かめる」に移ると感じているようです。
僕らの現場でも、同じことを感じています。AI・RAGの受託案件で本当に時間がかかるのは、コードを書く部分よりも、お客さんの業務を理解して、何をAIにやらせるかを決めて、出てきた結果が正しいかを確かめる部分です。ここは人間がやるしかなく、そしてここがいちばん面白い部分でもあります。
現職と理想の開発環境のギャップは、約4割(37.9%)が「大きい」と回答
もう一つ気になった数字があります。現在の職場と、理想の開発環境との間に「構造的〜非常に大きい」ギャップがあると答えた人が、合計で37.9%いました。
理想の環境として挙がっていたのは、有料のAIツールを無料で使えること(87.5%)、明確なAI利用ガイドラインがあること(58.1%)、AIの出力をレビュー・検証するための時間や体制が確保されていること(53.0%)です。なお、AIを日常的に使っているエンジニアは約9割にのぼります。
ここで思うのは、エンジニアは「AIを使わせてほしい」だけを求めているのではない、ということです。使うためのルールと、使った結果をチェックする時間を、会社に求めています。ツールを入れるだけでは足りず、その上で「どう使う会社なのか」を言語化してほしい、ということなのだと思います。
この点は、採用する側の会社にとっても、他人事ではありません。AIを使う方針が曖昧なまま「AI活用を推進しています」と言っても、現場のエンジニアには響かない。むしろ、ギャップを感じる原因になります。
17人のK.Platinumは「自分の価値が見える」環境にどう答えるか
正直に言えば、うちがこの悩みをすべて解決できるとは思っていません。ただ、「人間にしかできない価値が分からない」という悩みに対して、答えの一部は示せると思っています。
うちの仕事は、お客さんの業務を聞くところから始まって、要件を決めて、AIを使って作って、出てきたものをレビューして納品する、という流れを、一気通貫で担います。コードを書く時間は、その一部です。17人という規模なので、一人がその全体に関わる範囲が広く、「自分は何で価値を出しているのか」が、仕事の中で見えやすいと考えています。
もう一つは、AIの使い方を「まず自分たちで試す」文化です。僕自身、キックボクシングを続けているのですが、頭で考えるより、まず実戦で試して、当たらなかったら直す、というやり方が性に合っています。仕事でも、AIを新しく使うときは、まず社内の案件で試して、うまくいったものだけをお客さんに出す。この姿勢は、社内でも共有しています。
もちろん、これは「うちに来れば悩みがなくなる」という話ではありません。悩みは、どこの会社に入っても、形を変えて残るものだと思います。ただ、「何で価値を出すのか」を、仕事の現場で自分で見つけていける環境かどうか。エンジニアが会社を選ぶ基準として、これは大きいはずです。
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「分からない」と言えること自体が、健全なサインだと思う
ここまで書いてきて、もう一つ思ったことがあります。「自分の価値が分からない」と正直に答えられる人が、4人に1人以上いる、ということです。
変化の大きい時期に、自分の立ち位置がぐらつくのは自然なことです。むしろ、ぐらついていることを言葉にできる人のほうが、次に何を学ぶべきかを考えられるのだと思います。僕が面接で会いたいのも、AIを万能だと語る人や、逆にAIを避ける人ではなく、「まだ分からないけれど、試しながら探している」という人です。
採用する側も同じで、「うちはAI時代の答えを全部持っています」と言う会社より、「一緒に探しています」と言える会社のほうが、信頼できると僕は思います。
求人票に書かれていない、エンジニアが知りたい3つのこと

この調査を採用の側から読んだときの学びを、三つ書いておきます。
- AIの利用ガイドラインがあるかどうか(58.1%が求めている)
- AIの出力をレビューする時間や体制があるかどうか(53.0%が求めている)
- 有料AIツールを、社員が費用を気にせず使えるかどうか(87.5%が求めている)
この3つは、求人票の給与欄や福利厚生欄には、あまり書かれていません。でも、エンジニアが実際に気にしているのは、ここだということが、数字から見えます。会社として、この3つに答えを持っているかどうか。そして、それを採用ブログや求人で、正直に開示できるか。
うちも、まだ整っていない部分があります。それを含めて、正直に書いていくのが、採用ブログの役割だと思っています。
まとめ
- エンジニアのキャリアの悩み1位は「AI時代に自分にしかできない価値の見極め」25.8%。失業の不安(11.8%)の倍以上
- これから必要なスキルは、ビジネス理解・PM能力(71.3%)、AI成果物の検証・レビュー力(69.5%)、上流工程(54.5%)
- 現職とのギャップが大きいと答えた人は37.9%。求められているのは、AIツールとルールとレビュー時間
- 悩みの正体は「仕事がなくなる」ことより「役割の再定義」。答えは仕事の現場で見つけていくもの
- 採用側は、AIの使い方の方針とレビュー体制を、正直に開示することが大事
沼田海斗
株式会社K.Platinum代表。AI・RAGを活用した受託開発を手がけ、エンジニアが自分の価値を実感できる環境づくりに取り組んでいる。
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