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2026年10月27日

エンジニアの7割は、選考を辞退した本当の理由を会社に言っていなかった — 「角が立つから」を、17人の会社はどう潰すか

こんにちは。K.Platinum代表の沼田です。

選考の途中で、候補者さんから辞退の連絡が来ることがあります。「他社さんに決めました」「自分のキャリアを考え直しました」。丁寧なメールで、こちらも「ご縁がなくて残念です」と返す。採用をやっていれば、誰でも何度か経験する場面だと思います。

僕はずっと、その理由をそのまま受け取ってきました。ところが、先日読んだ調査で、その前提が少し揺らぎました。キッカケクリエイションが2026年8月18日に公開した、ITエンジニアの選考辞退についての調査です。

辞退した本当の決め手を「完全に正直に」会社へ伝えた人は、26.8%。つまり、約7割は、本音を言わないまま辞退していたのです。

今日は、この数字を手がかりに、「辞退の本音が会社に届かない」という構造と、17人の会社に何ができるかを考えてみます。

※本記事は2026年10月時点の情報にもとづいています。調査は2026年6月12日〜19日に実施され、二次面接以降で辞退した経験のあるITエンジニア221名が回答しています。民間企業による調査で、サンプル数も限られるため、「エンジニア全体の傾向」と断定はできない点をご了承ください。


辞退メールは、答えではなく「丁寧な目隠し」かもしれない

![伝えた本音と、伝えなかった本音][01_honne.png]

調査によると、辞退の本音を正直に伝えた人は26.8%でした。残りの人は、理由をぼかしたり、別の理由を伝えたりしていたことになります。

本音を隠した理由で最も多かったのは、「角が立つのを避けたい」で48.2%。だいたい2人に1人です。

これを読んで、僕は少しドキッとしました。候補者さんが嘘をつきたいわけではないんですよね。むしろ逆で、「お世話になった会社に失礼になりたくない」という優しさが、結果として本音を隠している。そう考えると、辞退メールの丁寧さは、そのまま「本当のことは言いにくい」というサインにも見えてきます。

ここで困るのは、採用する側です。理由が分からないと、直しようがありません。「他社に決めました」と言われ続ければ、「うちは条件で負けたのだろう」と納得して終わってしまう。でも本当の理由が別のところにあったら、同じ原因で、また次の人も辞退していきます。

「辞退の理由」は、採用活動でいちばん手に入りにくい、いちばん価値のあるデータなのかもしれません。


違和感の正体は、「圧迫」より「説明不足」だった

では、本音の中身は何だったのでしょうか。

調査では、面接官に「違和感を覚えた」と答えた人が73.3%いました。違和感の内容で最多だったのは「威圧的・高圧的な態度」で25.3%です。これは確かに、採用する側が気をつけるべき点だと思います。

ただ、僕が注目したのはその先です。「選考で改善してほしいこと」を聞くと、1位は「業務内容や役割の具体的な説明」で38.5%でした。2位は「求人票と実態のズレの解消」で28.1%。態度の問題より、「何をやる仕事なのか、実際はどうなのか」を知りたい、という声のほうが大きかったのです。

また、辞退の理由として「役割のイメージにズレがあった」と答えた人も11.3%いました。

つまり、辞退のきっかけは、面接官が怖かったことだけではありません。「この会社で、自分は何をするのか」が、面接を通じてもよく分からなかった。その不安が積み重なって、静かに辞退につながっている。そんな姿が見えてきます。

エンジニアの方は、仕事内容に対する解像度がとても高い人が多いです。だから、「ITコンサルティングを行います」くらいの説明では、頭の中に絵が浮かばないのだと思います。僕自身、スタートアップのITコンサルとして働いていた頃、案件の中身が見えないまま入社を決めるのが一番怖かった記憶があります。


角が立たない聞き方を、3つ試してみたい

辞退の本音を拾う3つの工夫

ここからは、僕たち17人の会社で試したいと考えていることです。まだ全部を実装しきっているわけではなく、「こうしたい」という段階のものも含みます。

① 面接の序盤で、案件の中身を先に話す

候補者さんの質問を待つのではなく、こちらから具体的に話します。いま動いている案件の種類、誰がどこまで担当しているのか、入社後の最初の数か月で何をお願いする想定か。うまくいっていない部分があれば、それも含めて話します。説明不足が辞退の理由になるなら、先に出すのがいちばん早い対策です。

② 面接のあとに、評価と関係のない窓口を用意する

面接官に直接は言いにくいことでも、評価に関係のない第三者になら言える、ということがあります。社長の僕が全部の面接に出ているので、「面接官には言いにくいことは、メッセージで別に送ってもらってOKです」と最後に一言添える。選考に影響しないと伝えることが大事だと思っています。

③ 辞退のときに、1問だけ聞く

辞退の連絡をもらったときに、長いアンケートをお願いしたら、それこそ角が立ちます。だから、聞くのは1問だけ。「今後の参考にしたいので、気になった点が1つでもあれば教えてください。もちろん、空欄でも大丈夫です」。答えなくていいと明記しておくだけで、返信のハードルはかなり下がるはずです。

3つとも、特別なツールは要りません。必要なのは、「本音は届きにくいものだ」という前提で、聞き方を設計することだけです。

K.Platinumでは、こうした「本音で話せる選考」を一緒につくるエンジニアを募集中です。 面接で何を聞かれ、入社後に何を任されるのか。気になる方は募集要項を見る


「求人票と実態のズレ」は、一番ごまかしが利かない

改善要望の2位に入っていた「求人票と実態のズレ」についても、少し触れておきます。

求人票は、どうしても「良く見せたい」気持ちが先に立ちます。僕も、文章を書いていて「ここはもう少し前向きな言い方にできないかな」と考えてしまうことがあります。けれど、エンジニアの方は面接の中で、細かい質問を重ねて実態を確かめにきます。書いてあることと話すことがずれていれば、その場で気づかれます。

だからこそ、僕は「書けないことは、無理に書かない。書いたことは、面接で必ず同じ温度で話す」ことを大事にしたいと考えています。たとえば、残業の実態、案件の波、1年目に任せる範囲の広さ。魅力的に見えない部分ほど、先に伝えたほうがいい。その部分を正直に話しても残ってくれる人のほうが、入社後のミスマッチは少ないはずだからです。

辞退を減らすことだけが目的なら、ここまで書かないほうがいいのかもしれません。でも、僕たちが探しているのは「辞退しない人」ではなく、「お互いに納得して一緒に働ける人」です。そのためには、辞退の本音を拾う仕組みと、求人票と面接での説明をそろえる作業は、セットで考える必要があると感じています。


辞退の本音を「全部聞き出そう」とは思っていない理由

最後に、誤解のないように書いておきます。

辞退の本音を全部聞き出そうとは思っていません。言いたくない人に無理に聞くのは、候補者さんにとっても負担ですし、それこそ信頼を損ねます。目指しているのは、「言いたい人が、言いやすい道を1本つくっておくこと」です。

26.8%という数字は、見方を変えれば、「正直に伝えてくれた人が4人に1人はいる」ということでもあります。その声を逃さず拾えるだけでも、採用の質は少しずつ変わっていくはずです。

もうひとつ付け加えるなら、こうした取り組みは候補者さんのためだけのものではありません。面接官を務める僕たち自身が、自分たちの説明の分かりにくさや、話し方の癖に気づくきっかけにもなります。耳の痛い声ほど、会社を良くする材料になるはずです。

辞退は、失敗の記録ではなく、会社を直すための一番正直なヒントだと思っています。次に辞退のメールが届いたときは、「残念」で終わらせず、「何を直せばよかったのか」を考えるきっかけにしたい。そう思いながら、この記事を書きました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


出典: キッカケクリエイション「ITエンジニアの選考辞退に関する調査」(2026年8月18日) https://kikkakeagent.co.jp/column/report/10515


沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum代表。ITコンサルタントを経て創業。現在も採用面接に自ら立ち、候補者との対話を大切にしている。


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