株式会社K.Platinum 清水洋太
転職活動で会社を選ぶとき、待遇や技術スタックと同じくらい気になるのに、面接ではなかなか聞きにくいことがあります。「入社したあと、自分はどの案件に入るんだろう」「希望は、どこまで通るんだろう」。
いわゆる"配属ガチャ"への不安です。カジュアル面談でも、話が終盤にさしかかったころ、少し声を落として聞かれることが多い質問です。そしてこの不安の多くは、本人の能力の問題ではなく、決まり方が外から見えないという情報の問題だと思っています。
この記事では、弊社で次のアサインが決まるまでに実際に何が起きているのかを、順を追って書きます。書くのは3つです。決定ではなく候補の段階で本人に相談していること、経験のある領域7割・初めての領域3割を目安に配置していること、そして抜ける側に2〜3週間の重なり期間を取っていること。きれいごとだけでなく、希望が通らなかったときにどうしているかも含めて書くつもりです。
面接でほぼ毎回聞かれる3つの質問は、技術のことではありません
エンジニアの面接を担当していると、質問の傾向がはっきり出ます。使っている言語やクラウドの話は、正直なところ求人票やこのブログを読めばだいたい分かってしまう。だから面接で聞かれるのは、その先です。
「案件はどうやって決まりますか」「途中で変わることはありますか」「自分で手を挙げられますか」。この3つは、ほぼ毎回聞かれます。
弊社はお客様のビジネス課題に対して提案段階から入り、業務整理から業務改善、システム化、その先の運用までを一気通貫で支援しています。設立から2年ほどで20件を超えるプロジェクトを経験してきましたが、そのすべてが「開発だけ」で完結していません。業務の流れを整理するところから始まる案件もあれば、既にあるシステムをどう作り替えるかの相談から始まる案件もあります。
実際、案件の入口は驚くほどばらばらです。「紙とExcelで回している業務を、そろそろどうにかしたい」という相談から始まることもあれば、「動いてはいるが誰も中身を把握していないシステムを、どう作り替えるか」という相談から始まることもあります。求められるものが、要件定義なのか、業務そのものの整理なのか、実装力なのか、案件ごとに重心が違う。だからこそ、誰にどの案件を担当してもらうかは、空いている人を機械的に当てはめれば済む話にはなりません。
この「提案から入る」という形は、実は社内の景色にも影響しています。開発だけを請け負う形だと、案件は決まった瞬間に降ってきます。けれど提案から入っていると、契約が固まる何週間も前から「こういう相談が来ている」という話が社内を流れる。つまり、次に生まれそうな仕事の輪郭が、決定の前から見えているのです。
候補の段階で本人に相談する ── そのとき聞く3つのこと
以前は、アサインの連絡が事実上の「決定通知」でした。社内で調整して、決まって、本人に伝える。効率としては悪くありませんが、伝えられた側からすると、自分の数か月がいつのまにか決まっていたことになります。
今は、候補の段階で本人に話すようにしています。「こういう相談が来ていて、開始は再来月くらいになりそう。どう思う?」という、まだ何も確定していない状態での相談です。
そのとき聞くのは、だいたい次の3つです。
ひとつめは、今のプロジェクトでの手応えと物足りなさ。うまくいっている部分より、「もう少しやりたかったのに触れなかった領域」のほうを丁寧に聞きます。ふたつめは、次に伸ばしたい方向。設計をやりたいのか、お客様との折衝に踏み込みたいのか、特定の技術領域を深めたいのか。みっつめは、生活側の事情です。弊社はフルリモートでコアタイムもないので、稼働の時間帯や家庭の事情、副業との兼ね合いは、遠慮なく前提条件として並べてもらいます。
この会話をしておくと、こちらの見え方も変わります。「開発をやりたい」と言っていた人の話をよく聞くと、本当に望んでいたのは"最初から関わること"だった、ということが実際にありました。それなら開発の枠にこだわらず、提案フェーズの資料づくりから入ってもらったほうが本人の意図に近い。希望は、肩書きや工程名ではなく、その裏にある動機まで聞かないと取り違えます。
もちろん、全部が希望どおりになるわけではありません。案件には相手があり、タイミングがあります。ただ、通らないときは理由を言うことにしています。「この案件は要件定義が佳境で、いま人が替わるとお客様の負担が大きい」「その領域は次の四半期に相談が来そうなので、そこで手を挙げてほしい」。理由まで共有されていれば、少なくとも納得はできる。決定そのものより、決まり方のほうが不満は残りやすいものです。

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既知7割・未経験3割 ──「やったことがない」は外す理由になりません
アサインを組むとき、いちばん陥りやすいのが「経験のある人を、経験のある場所に置く」という発想です。短期的にはいちばん安全で、いちばん成長が止まる配置でもあります。
弊社では、スキルが100%一致するのを待たない、という考え方をしています。目安としては、経験のある領域が7割、初めて触る領域が3割くらい。この3割が、半年後の担当範囲を広げてくれます。
たとえば、これまでJavaでの開発が中心だった人が、クラウド側の構成を検討する側に回る。開発を軸にしてきた人が、お客様の業務ヒアリングの場に同席する。エンジニアの仕事を「コードを書くこと」だけに閉じていないので、こういう越境が起こりやすい環境です。
この配分は、本人の安全のためでもあります。10割が既知の仕事ばかりだと、次の案件でも同じ役割しか任せられません。逆に半分以上が未経験だと、お客様への責任を本人一人が背負うことになってしまう。3割という数字に厳密な根拠があるわけではありませんが、「少し背伸びするが、転ばない」範囲として、現場の感覚とだいたい一致しています。
ただし条件がひとつあります。未経験の領域に入るときは、一人にしない。必ず経験のあるメンバーと組み、判断が要る場面には同席してもらいます。プルリクエストのレビューも、動くかどうかの確認ではなく「なぜそう作ったのか」を書き合う場として使っています。3割の未経験を安全に引き受けられるのは、この二重の支えがあるからです。
重なり期間は2〜3週間 ── 抜けるほうの設計まで含めてアサインです
新しく入る側の話ばかりしてきましたが、実務でむしろ神経を使うのは、抜ける側です。
人が動くということは、必ずどこかに穴が空くということです。弊社では、切り替えの前に2〜3週間の重なり期間を取るようにしています。その間に、ドキュメントを整えて、引き継ぐ相手と一緒に打ち合わせに出て、お客様にも顔をつないでおく。ここを省略すると、残った人と次に入る人の両方に負担が寄ります。
引き継ぎのドキュメントも、網羅性より「迷いどころ」を優先して書いてもらっています。仕様書に載っている情報は読めば分かる。困るのは、なぜこの方式を選ばなかったのか、どの数字がどこから来ているのか、誰に確認すれば話が早いのか、といった書かれていない部分です。ここを残しておくと、引き継いだ人の立ち上がりが目に見えて速くなります。
「次の人が困らない状態にして、はじめて完了」。地味ですが、この基準を守れているかどうかで、チームの空気はかなり変わると感じています。人の入れ替わりを、誰かの負担として押し付けない。それが結果的に、次に手を挙げやすい空気につながっていきます。
3つを机の上に並べて決める ── 行き先を、他人だけに決めさせないために
アサインは、会社が一方的に配るものでも、本人の希望だけで決まるものでもありません。お客様の状況と、チームの状態と、本人が行きたい方向。この3つを机の上に並べて、毎回いちばん納得できる形を探しています。
社員十数名という規模だからこそ、この会話を一人ひとりと持てているところは大きいと思います。誰が何をやりたがっているかが、名簿ではなく顔として分かる。それは今の規模の、確かな強みです。
「次に何をやるか」を自分で言葉にしたい方、まだやったことのない3割を引き受けてみたい方には、面白い環境だと思います。少しでも気になったら、選考に進む前のカジュアル面談から構いません。この記事に書いた決まり方を、もう少し具体的にお話しします。
清水洋太(しみず・ようた)
株式会社K.Platinum所属。エンジニアが力を発揮できる環境づくりを大切にしている。
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