株式会社K.Platinum 清水洋太
求人票を読んでいて、いちばん想像がつかないのは「働き方」の欄かもしれません。フルリモート、フルフレックス、コアタイムなし、年間休日123日。文字としては魅力的でも、では月曜の朝9:30に何が起きているのか、夕方18:30はどう終わるのか、そこまでは書いてありません。
弊社の標準勤務時間は9:30〜18:30です。ただし、この時間に全員が揃っていることはまずありません。それでも仕事は止まりません。今回は制度の説明ではなく、その「ふつうの一日」を時間順に書いてみます。読み終えたときに、入社後の自分の一日がうっすら想像できていたら成功です。
朝(8:00〜10:30):全員がいっせいに「おはようございます」とは言わない
フルフレックスでコアタイムがないので、始業の時刻は人によってばらばらです。朝の弱い人は10時過ぎから始めて夜に伸ばしますし、朝型の人は8時台の静かなうちにコードを書いて夕方早めに閉じます。子どもの送りがある人は、その分を後ろにずらします。
そのかわり、朝いちばんにやることは全員だいたい同じです。自分が今日どこまで進めるつもりかを、チャットに一行で書くこと。「本日は◯◯の画面の実装、午後にレビュー依頼を出します」くらいの粒度で構いません。リモートワークは、隣の席から様子が見えません。見えないものを見えるようにする唯一の方法が、書くことです。
この一行があると、レビューを待っている人は「午後に来るんだな」と自分の予定を組めますし、詰まっている人がいれば「その処理、前に似たことをやったので後で共有します」と横から声がかかります。管理のための報告ではなく、お互いの段取りのための共有です。だから体裁は問いません。
十数名という規模なので、誰が何をやっているかは把握できる範囲にあります。逆に言えば、一人が黙っていると、その穴はすぐに見えます。それは監視というより、気づいてもらいやすい、ということでもあります。
午前(10:00〜12:00):一日でいちばん集中できる時間は、人によって違う
午前中は、会議をあまり入れません。というより、「その人がいちばん集中できる時間を会議で潰さない」というのが暗黙のルールになっています。
弊社の仕事はITコンサルティングが中心です。お客さまのビジネス課題に提案の段階から入り、業務の整理、改善、システム化、そしてAIの導入まで一気通貫で担当します。この仕事は、細切れの30分をいくつ積み上げても進みません。業務フローを頭の中で組み直したり、既存システムの仕様を追いかけたりする作業は、まとまった2〜3時間があって初めて形になります。
だから、集中したい時間帯は自分で確保して構いません。カレンダーに「集中作業」とブロックを置き、チャットの通知を切って、その間は返事が遅れる。これは弊社では失礼にあたりません。むしろ、返事の速さより成果物の質で評価されるほうが健全だと考えています。

もちろん、緊急の連絡が届かないのは困ります。そこは「今すぐ見てほしいものはメンションを付ける、それ以外は非同期で構わない」という単純な線引きで回しています。ルールが複雑だと誰も守らないので、覚えられる数に絞る。これは制度全般に共通する考え方です。
正直に書くと、この進め方には弱点もあります。オフィスなら通りがかりに拾えていた「なんとなく困っていそう」が、リモートでは拾えません。文字だけだと、迷っている状態と結論が出た状態の区別もつきにくい。だから弊社では、二往復して解決しない話はその場で通話に切り替える、というのを各自の判断でやっています。テキストは万能ではない、という前提で使うほうが結局は速いからです。
午後(13:00〜18:00):「つくる前」を決める打ち合わせと、「つくる」時間
午後になると、打ち合わせが増えてきます。お客さまとの定例、社内のレビュー、次の提案に向けた相談。オンライン前提なので移動時間はゼロですが、そのぶん一つひとつの密度は高めです。
弊社の打ち合わせで多いのは、実は「何をつくるか」ではなく「本当にそれをつくる必要があるか」を確かめる時間です。現場の困りごとを聞いていくと、システムを新しく足すより、いまの業務の順番を入れ替えるだけで解決することが珍しくありません。つくらない提案ができるのは、業務とITの両方を同じチームで見ているからです。
打ち合わせの前には、たいてい15分ほどの下準備の時間があります。今日確かめたい論点を三つに絞り、前回の宿題がどうなったかを見返す。この15分があるかないかで、1時間の打ち合わせの密度がまるで違ってきます。逆に、論点が固まらないまま集まりそうな日は、思い切って日程を後ろにずらすこともあります。集まること自体が目的にならないように、というのは全員が意識しているところです。
この打ち合わせには、経験の浅いメンバーも早い段階から同席します。議事録係としてではなく、「その場で分からなかったこと」を後で質問する役として。お客さまの言葉と、それが設計にどう翻訳されるのかを、同じ日のうちに追いかけられるのは、一気通貫で関わる会社ならではの学び方だと思っています。
打ち合わせが終われば、また手を動かす時間です。設計を直し、コードを書き、レビューを返す。生成AIも道具として日常的に使っていて、下書きを任せてレビューに時間を回す、という進め方が定着しています。ツールの使い方に「こうしなければならない」という縛りはありません。速く、確かなやり方を見つけた人が共有し、それが自然と全体のやり方になっていきます。
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夕方(18:00〜18:30):定時に閉じるために、日中でやっていること
弊社は残業がほとんどありません。これは「気合いで早く終わらせる」という話ではなく、終わる時間から逆算して仕事の量を決めているという話です。
そのために日中でやっていることが二つあります。一つは、抱え込みが起きる前に相談すること。もう一つは、終わらなかったことを正直に書いて一日を閉じることです。「今日ここまで、明日はここから」と書き残せば、翌朝の自分も、手伝おうとしてくれる人も迷いません。
夕方以降には、オンラインの勉強会やLT会が入ることもあります。参加は強制ではなく、話す内容も業務に直結していなくて構いません。誰かが最近触った技術の話をして、それを聞いた人が翌週の案件で使ってみる。そんな流れがときどき起きます。副業も相談のうえで認めているので、外で得た知見が社内に還ってくることもあります。
ちなみに、勤務地の縛りもありません。実際、東京以外に住んでいるメンバーもいます。オフィスは東京都港区にありますが、日々の仕事はオンラインで完結する前提で組み立てているので、住む場所を仕事に合わせて決める必要はありません。
そして18:30を過ぎたら、基本的にそこで終わりです。土日祝は休みで、年間休日は123日。「休める会社」ではなく「休むことを前提に段取りする会社」でありたいと思っています。
まとめ:この一日の積み重ねが、キャリアになる
平均年齢は27.5歳、人数は十数名。誰かの一日が変われば、会社の空気はすぐに変わります。だからこそ、制度より先に「日々の進め方」を大事にしています。
始まりの時間は自分で決められる。集中する時間は守られる。分からないことは同じ日のうちに聞ける。終わったら閉じる。──こう書くと地味ですが、この地味な一日を何百回か積み重ねた先に、提案から設計、開発、リリースまでを一人で見渡せるエンジニアが育っていきます。実力で正当に評価される環境をつくるというのは、結局その積み重ねを支えることだと考えています。
もし今の職場で「一日が細切れで、何も進んだ気がしない」と感じているなら、一度お話ししてみませんか。あなたのふつうの一日が、どう変わりそうかを一緒に考えます。
清水洋太(しみず・ようた)
株式会社K.Platinum所属。エンジニアが力を発揮できる環境づくりを大切にしている。
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