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2026年8月28日

自分の会社がAIを導入しているか、社員の31.0%が「わからない」と答えた — 導入が失敗する前に、そもそも伝わっていない

机に向かってノートパソコンを広げ、困惑した表情を浮かべている人のイラスト。その背後の看板には、日本語で「わからないが最多」と書かれており、その後に疑問符が付いている。.

こんにちは、K.Platinum代表の沼田です。

「あなたの会社は、AIをどこまで導入していますか」

会社員15,161人にこう聞いた調査で、いちばん多かった答えは「わからない」でした。31.0%。3人に1人です。

2026年8月7日に株式会社アイスマイリーとMMD研究所が公表した『2026年企業のAI導入・活用に関する調査』の数字です。各社の見出しになったのは「AIを組織として導入できている企業は26.8%」「AI導入企業の68.0%が上手くいっていると回答」の2つ。どちらも意味のある数字ですが、受託でシステムを作る側として一番手が止まったのは、見出しにならなかった31.0%でした。

半分以上が、そもそも「使える状態」にない

導入以前の話

予備調査15,161人の回答はこうでした。

回答 割合
わからない 31.0%
AIの導入は許可されていない 20.6%
全社的に導入・活用している 18.1%

「全社的」「半数以上の部署」「半数未満の部署」を合計すると26.8%。

ここで断っておくと、この26.8%は「会社員本人がそう認識している割合」で、企業側に聞いた数字ではありません。「日本企業のAI導入率は26.8%」と読むのは誤りで、あくまで社員から見た景色の調査です。

上の表を足してみます。

わからない31.0% + 許可されていない20.6% = 51.6%。

半分以上の会社員が、AIを業務で使える状態にないか、使える状態なのかすら知らない

「AI導入がうまくいかない」という話では、たいてい精度か、現場が使ってくれないかが論点になります。でもこの調査が突きつけているのは、その手前です。うまくいく/いかない以前に、届いていない。

しかもこの31.0%は、単なる無関心ではないと思います。会社がツールを契約し、情シスが設定し、一部の部署が使い始めている。その状態を、別の部署の人は普通に知らない。導入は起きているのに、社内の情報として流れていない。

成功と失敗を分けたのは「項目」ではなく「実施率」だった

ここからが、リリースを読んで一番おもしろかったところです。

本調査400人のうち、自社のAI導入・活用が「上手くいっている」と答えたのが68.0%、「上手くいっていない」が24.8%、「わからない」が7.3%。この成功群272人失敗群99人それぞれに、導入時にどんな準備をしたかを聞いています。

成功群272人(複数回答)

準備したこと 割合
AIで解決したい業務課題を整理 35.3%
必要なデータや社内情報の整理 34.9%
AI導入の目的を明確化 32.4%

失敗群99人(複数回答)

準備したこと 割合
導入対象となる業務を選定 18.2%
必要なデータや社内情報の整理 17.2%
AI導入の目的を明確化 17.2%
社内ルール・ガイドラインの整備 17.2%

※ 失敗群は99人ベースの小サンプルです。傾向として読むにとどめ、細かい比率差に意味を持たせすぎないほうがいい。

並べてみると、出てくる項目の種類はほとんど同じです。「データの整理」も「目的の明確化」も、両方の群に入っている。

違うのは実施率です。「必要なデータや社内情報の整理」は34.9%対17.2%、「AI導入の目的を明確化」は32.4%対17.2%。2倍の開きがあります。

定着策のほうはもっとはっきり出ています。

定着に向けて行ったこと 成功群272人 失敗群99人
利用ルール・ガイドラインを整備した 41.5% 16.2%
社内研修・勉強会を実施した 37.9%
セキュリティ・法務・コンプライアンス面のルールを見直した 34.9%
導入効果を測定した 16.2%
利用者から意見・要望を収集した 15.2%

ガイドライン整備で 41.5%対16.2%、約2.5倍

これが意味するのは、「何をやればいいか」はもう答えが出ているということ。誰も知らない秘密の施策があるわけじゃない。項目は共有されているのに、失敗している会社ではそのどれもが2割に届いていない

つまり差がついているのは知識ではなく、着手率です。やり方を調べるフェーズはとっくに終わっていて、いま効いているのは「で、実際に書いたか」だけ。身も蓋もないですが、そういう数字に見えます。

「業務を選定」と「業務課題を整理」は、似ているようで別物

もう1つ、無視できない差があります。

失敗群の準備1位は「導入対象となる業務を選定」(18.2%)。
成功群の準備1位は「AIで解決したい業務課題を整理」(35.3%)。

言葉が似ていますが、これは別のことです。

「業務を選定」は、対象を決めたという話です。「請求書処理でやろう」「問い合わせ対応でやろう」。ここまでは決まっている。

「業務課題を整理」は、その業務の何が問題なのかを言語化したという話。「請求書処理で、月末に2人が計6時間かけて目視照合し、差分が出るのは平均3件」。ここまで書いてある。

そして失敗要因の1位が、「AIを活用する業務範囲が明確ではなかった」19.2%、2位が「解決したい業務課題が明確ではなかった」16.2%でした。

対象は選んだ。でも範囲と課題は詰めていない。だから作ったあとで「これは対象外だった」「そもそも困っていなかった」が出てくる。失敗要因の1位と2位は、準備の1位が浅かったことの結果として、きれいにつながっています。

うちがPoCの前に必ず書いてもらう、A4 1枚の4項目

PoCの前に書く1枚

うちは17人の受託開発・ITコンサルの会社で、お客さん先のAI導入も手伝います。そのとき提案より前、PoCの相談段階で必ずお願いしているものがあります。

「誰の、どの作業を、何分から何分にするのか」を1枚に書いてもらう。

これだけです。フォーマットは自由。Wordでもホワイトボードの写真でも構いませんが、埋めてほしい欄が4つあります。

  • 誰の — 部署名ではなく、実際に手を動かしている人の役割まで
  • どの作業 — 業務名ではなく、その中の1工程まで
  • 何分から何分に — 現状の実測値と、目標値
  • それが達成されたと誰がどう判断するか — 測る人と、測り方

書けないときは、たいてい2つのうちどちらかです。現状を測っていないか、困っている人と決める人が別人か。前者ならまず1週間測るところから、後者なら決める人を会議に呼ぶところから始めます。どちらの場合も、この時点でAIの話はしません。

冷たく聞こえるかもしれませんが、断るための門番ではなく、うちが作ったものが半年後も使われている確率を上げるためです。作って納品して終わりなら書いてもらう必要はない。でもそれをやると、次の相談が来ません。

今回の調査の成功群1位が「AIで解決したい業務課題を整理」35.3%だったのを見て、要はこれのことかと思いました。特別なことは何もやっていない。

AIの話をする前に、業務を書く。うちはこの順番で仕事をしています。同じ進め方に興味のあるエンジニアの方はK.Platinumの採用ページもどうぞ。

ガイドライン41.5%の落とし穴

定着策の1位がガイドライン整備(41.5%)だったことに、1つだけ注意を書いておきます。

ガイドラインを作ることと、ガイドラインが読まれていることは別です。

禁止や制限のルールを作っても、使いたい人は止まらず見えないところで使う方向に動きます。整備が「統制できている」という安心につながり、実態の把握が止まるのがいちばん危ない。

冒頭の31.0%に戻ります。自社の導入状況を知らない人が3割いる状態で作ったガイドラインは、誰に向けて書かれているんでしょうか。

たぶん、順番が逆です。ガイドラインを整備してから周知するのではなく、いま誰が何を使っているのかを把握してから、それに合わせて書く。 41.5%対16.2%という2.5倍差は、「作ったかどうか」以上に、実態を把握したうえで作ったかどうかの差なんじゃないかと読んでいます。

まとめ — 全員がツールの名前を言えるか

うちが月1回やっていることがあります。

「いま会社で契約しているAIツールの名前、全部言える人?」と聞く。

17人の会社なので30秒で終わります。そして毎回、誰かが1つ落とす。17人でこれです。数百人、数千人の会社で全社周知が届いていると考えるほうが、たぶん無理がある。

26.8%も68.0%も、経営や情シスの側から見た数字です。でも31.0%は、席に座っている人から見た景色です。導入の成否を語る前に、この景色のほうを先に直すべき会社が、けっこうな数あるんだと思います。

導入が失敗しているんじゃなくて、そもそも伝わっていない。だとしたら次にやることは、新しいツールの検討ではなく全社チャットに「いま何が使えるか」を1回投げることかもしれません。コストゼロで、今日できます。


出典: 株式会社アイスマイリー × MMD研究所『2026年企業のAI導入・活用に関する調査』(2026年8月7日公表/調査期間 2026年7月10日〜7月14日/インターネット調査/有効回答 予備調査15,161人・本調査400人)
※ 本調査レポートは小数点以下を四捨五入して表記しているため、積み上げ計算すると誤差が出る場合があります。


沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum 代表。17人の受託開発・ITコンサル会社を経営。エンジニアが正当に評価される会社をつくることに関心がある。


K.Platinumでは一緒に働くエンジニアを募集しています。「実力で正当に評価される環境」に興味がある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。

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