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2026年10月18日

学校が、自分の卒業生を採るためのパンフレットを作っていた — 17ページ、先輩5人、そして約170人という数字

アニメ風の若い男性が、ノートパソコンで17ページにわたる採用資料を見ながら驚いた表情を浮かべています。画面の上部には17ページの採用パンフレットという日本語の文字が表示されています。.

こんにちは。K.Platinum代表の沼田です。

うちは17人のITコンサルで、そのうち8人が高専卒です。僕自身も高専を出ています。だから高専生の採用については、他社より少しだけ真面目に考えているつもりでした。

先週、国立高等専門学校機構のサイトで就職データを探していました。就職率とか、産業別の就職者数とか、そういう数字が欲しかったんです。

目当てのページには着いたのですが、その同じページに、僕がまったく想定していなかったものが並んでいました。

採用案内のパンフレットです。

しかも、作ったのは会社ではありません。学校側です。

※本記事は2026年9月時点の情報にもとづいています。


そのページに何が置いてあったか

国立高専機構の『就職・進学データ資料』というページです。

ここには、名前のとおり進路のデータが置いてあります。本科・専攻科の就職率、産業別の就職者数、進学率、編入学や大学院進学の状況。高専生や保護者、あるいは僕みたいな採用側が見に来る場所です。

その一覧の中に、『国立大学法人・国立高等専門学校機構施設系技術職員の採用案内について』というPDFがありました。

開いてみたら、こう書いてありました。

  • 国立大学等の施設整備業務を担当する施設系技術職員は全国で約2千人
  • そのうち、国立高専の卒業生が約170人在籍している
  • 「多くの卒業生が施設系幹部職員として活躍されていることから、優秀な後輩(高専生)を採用したいとの声がある」

最後の一文で、少し姿勢が変わりました。

採用したい理由が、そのまま書いてある。 「若手を積極採用しています」でも「あなたの成長を支援します」でもなく、卒業生が実際に活躍していて、その人たちが後輩を採りたいと言っている、という話です。

資料の中身は、リーフレットと、先輩5人からの就職体験談。全部で17ページ。

それだけです。


数字と、当事者の声と、薄さ

数・声・薄さ

うちは2年ちょっとテックブログを回してきました。採用広報でいろいろ試して、いろいろ空振りしています。その経験から言うと、この17ページの構成は、かなり良いところを突いていると思いました。

要素を分解すると3つです。

①数字がある。 約2千人のうち約170人。この比率が具体的なので、読んだ人が「自分が入る場所」を想像できます。「多くの先輩が活躍」ではなく、170人。

②当事者の声がある。 5人です。20人ではなく、1人でもなく、5人。

これ、僕は5人という数がちょうどいいと思っています。1人だと「たまたまその人がうまくいった」に見える。20人だと読まれません。5人だと、読む側が「この中で自分に近いのは誰か」を選べる。うちの採用ページも社員インタビューを載せていますが、数を増やそうとして途中で止まったままです。

③薄い。 17ページ。

採用広報でいちばんよく見る失敗が、これの逆です。伝えたいことが多すぎて、動画を作り、特設サイトを立て、制作会社に頼んで、そして更新できなくなる。うちも創業してすぐの頃、採用サイトを立派に作ろうとして頓挫しました。

制作会社も動画もなくていい、というのが、この17ページを見たときの正直な感想です。うちが2年かけて分かったことと、だいたい同じ結論が置いてありました。


でも、いちばん効いているのは置き場所だと思う

効いていたのは、置き場所

ここからは僕の読み方です。

この資料でいちばん効いているのは、中身ではなく置き場所だと思いました。

考えてみてください。この採用案内は、進路データを見に来た学生の目の前にあります。

高専生が就職を考え始めて、「うちの学校の卒業生ってどこに行ってるんだろう」と調べる。就職率を見る。産業別の内訳を見る。その視線の先に、採用案内が置いてある。

探しに来た人ではなく、調べに来た人に当たっている。

採用広報の議論は、たいてい「何を書くか」から始まります。でも実際に効くのは、「その人が今どこを見ているか」のほうかもしれない。

自分の会社に置き換えてみました。

うちの採用情報は、応募を考えている人が最初に開くページの隣にあるか。

正直に言うと、なっていませんでした。うちの採用情報はコーポレートサイトの「採用」タブの下にあって、そこに来る人は既に「K.Platinumで働くこと」を検討し始めた人です。でも実際にうちを最初に知るのは、たぶん技術記事とか、案件の実績紹介とか、そっちの入口です。

先に会うのは実績のページなのに、採用の話はそこに置いていなかった。 これは9月中に直します。


弱点も書く — この資料は2019年版のままだ

褒めて終わりにすると、記事としてズルいので、気づいた弱点も書きます。

このPDFは2019年版です。以後、更新されていません。

体験談を寄せた5人の先輩は、もう当時の立場ではないかもしれない。数字も当時のものです。

これ、他人事じゃありません。採用広報は、作ることより続けることのほうが難しい。

以前『採用広報の「中の人エンジニア」が続かない3つの理由』という記事を書いたことがあります。要するに、本業がある人が広報を兼務すると、繁忙期に必ず止まる、という話です。

この17ページは、まさにその実例に見えました。良い構成で作られていて、そして止まっている。

だから僕が真似すべきなのは、17ページの構成そのものより、「17ページで済ませたこと」のほうだと思いました。薄く作れば、更新もしやすい。続けられる分量で始める、というのが、たぶん本当の学びです。


10月には内定率が90%を超える

もうひとつ、この資料まわりで拾った数字があります。

国立高専の卒業生の就職率は、ほぼ100%。 そして、卒業年度の10月時点で、既に内定率が90%以上です。

採用する側から読むと、これは締切の話です。

10月に動き出したら、母集団はもう残っていない。

うちは高専卒が8人いる会社なので、高専採用は本気でやりたい領域です。でも「本気でやりたい」と言いながら、動き出す月がズレていたら、それは本気ではなく願望です。

というわけで、9月中にやることを3つ決めました。

  1. 実績紹介ページの下に、採用への導線を1本置く(置き場所の話)
  2. 社員インタビューを5人で締める(増やそうとして止まっていたので、数を先に決める)
  3. 高専生向けの資料は、17ページ以内で作る(続けられる分量にする)

どれも予算はかかりません。学校側が17ページでやっていることを、うちができない理由はないはずです。

余談ですが、うちも今まさに高専卒はもちろん、幅広くエンジニアを募集しています。「実力で正当に評価される環境」に興味がある方は、エンジニア採用ページを覗いてみてください。


採用は、相手を調べる仕事でもある

最後に、いちばん反省したことを書きます。

僕は高専卒で、高専生を採りたいと言い続けていて、それでも高専機構のサイトを、就職データを探す目的でしか開いたことがありませんでした。

学校側が何を考えて、誰を、どういう言葉で採ろうとしているのか。それが公開されている場所を、僕は見ていなかった。

求人倍率20倍と言われる領域で人を採ろうとしているのに、読める資料を読んでいないのは、単純にこちらの怠慢です。

採用って、選ぶ仕事だと思われがちですが、実際には調べる仕事の割合のほうが大きいのかもしれません。相手の学校を調べ、相手の進路を調べ、そして自分の会社が置いてある場所を調べる。

17ページのPDFから、それを教わりました。


出典
独立行政法人 国立高等専門学校機構『就職・進学データ資料』
https://www.kosen-k.go.jp/about/outline4
同『国立大学法人・国立高等専門学校機構施設系技術職員の採用案内について』(PDF・全17ページ・2019年版)
https://www.kosen-k.go.jp/wp/wp-content/uploads/2023/12/kosen-sisetsu-saiyo2019.pdf
同『高専概要2025』
https://www.kosen-k.go.jp/wp/wp-content/uploads/2025/07/kosengaiyo2025.pdf

註記
本文中の「施設系技術職員は全国で約2千人」「うち国立高専卒業生が約170人在籍」「多くの卒業生が施設系幹部職員として活躍されていることから、優秀な後輩(高専生)を採用したいとの声がある」「資料はリーフレット+先輩5人の就職体験談で全17ページ」「国立高専卒業生の就職率はほぼ100%」「卒業年度の10月時点で内定率90%以上」は、いずれも上記の国立高等専門学校機構のページおよび資料に記載されている内容です。「採用広報の最小構成は数・声・薄さの3つである」「いちばん効いているのは置き場所である」「薄く作れば続けられる」といった読み解きは筆者の解釈であり、国立高等専門学校機構が示した見解ではありません。 当該PDFが2019年版であることは資料に記載された情報から確認したものですが、更新予定の有無について同機構に確認したものではありません。本記事は特定の学校・機関・進路を推奨または批判するものではなく、採用試験や就職活動の合否見通しを論じるものでもありません。自社に関する記述は既に公開している範囲(17人・うち8人が高専卒・3期目)にとどめ、社員個人・応募者個人を特定できる情報は含んでいません。


沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum代表。高専卒業後、創業メンバーとしてK.Platinumの立ち上げに携わり、現在はCEOとして採用・組織づくりを含む会社全体の成長に取り組んでいる。


K.Platinumでは一緒に働くエンジニアを募集しています。「実力で正当に評価される環境」に興味がある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。

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