株式会社K.Platinum 清水洋太
「このシステム、入れたほうがいいんでしょうか」
弊社に届く相談は、この一言から始まることがよくあります。仕様書もRFPもまだ無く、あるのは「何かを変えないといけない気がする」という経営者の感覚だけ。
ここで少し、逆側から質問させてください。あなたが最後に「それ、本当につくる必要がありますか」と言えたのは、いつでしょうか。言いたかったけれど、決まった要件が降りてきたあとで、言う場所がなかった。そういう経験のあるエンジニアは少なくないはずです。
今回は、弊社のIT戦略パートナーサービス(フラクショナルCTO)を題材に、エンジニアが「つくる前の意思決定」に関わるとはどういうことかをお話しします。コードを書く時間が減る話ではありません。むしろ、書いたコードが無駄にならないための話です。
いちばん難しいのは実装ではなく、「つくる前」の上流工程
システム開発でプロジェクトが失敗するとき、その原因が技術力だったケースを、私はあまり見たことがありません。多くは、もっと手前で決まっています。解くべき課題がずれていた。既存の業務フローを整理しないまま自動化してしまった。そもそも、その機能を誰も使っていなかった。
ところが世の中の役割分担は、この「手前」を担当する人が不在になりがちです。業務コンサルは戦略と提案書までを担い、システム会社は要件が固まった後の開発を担う。その間にある「業務をどう整理して、どこからシステム化するか」は、誰の仕事でもないまま宙に浮きます。
弊社が「業務整理 → 業務改善 → システム化 → AI導入」という順番を毎回口にするのは、この空白を自分たちで埋めたいからです。順番に意味があります。整理していない業務をシステム化すると、非効率がそのままコードに固定されます。改善していない業務にAIを乗せると、間違った判断が高速で量産されます。逆に言えば、手前をきちんと踏めば、実装フェーズに入ってからの「やっぱりこの機能は要らなかった」という手戻りを、着手前に潰しておけます。
IT戦略パートナーサービスは、この「手前」だけを切り出して支援するかたちです。経営者と同じテーブルに座り、課題の根っこを一緒に特定するところから始めます。
実際の入り口は、たいてい地味です。現場の方に一日の動きを聞かせてもらう。手作業で回している集計表を見せてもらう。「これは何のために出しているんですか」と尋ねると、答えられる人がもう社内にいない帳票が出てくる。派手さはありませんが、ここで見つかった一つひとつが、後の設計の前提になります。
社員でも外注でもない、「フラクショナルCTO」という関わり方
「フラクショナルCTO」という言葉は、まだ聞き慣れない方も多いと思います。ざっくり言えば、CTOの役割を必要な分だけ担う、という考え方です。
技術に明るい人材を正社員のCTOとして採用するのは、多くの企業にとって簡単ではありません。かといって、開発会社に見積もりを依頼すると、返ってくるのは「何をつくるか」が決まっている前提の金額です。決めるところを手伝ってほしいのに、決まった後の話しかできない。相談先が見つからないまま、判断だけが先送りになっていきます。
弊社のIT戦略パートナーサービスは、契約期間の縛りを設けず、月額5万円からのアドバイザリーとして始められる設計にしています。金額を抑えているのは安売りしたいからではなく、「相談する」という行為のハードルを下げたいからです。最初の一歩が重いと、相談は手遅れになってから来ます。

エンジニアとしてこの立ち位置に立つと、視界がはっきり変わります。「言われた機能をつくる人」ではなく、「その機能が本当に必要かを一緒に考える人」として扱われる。会議で最初に意見を求められるのは、たいてい技術の話ではなく「で、どうすればいいと思いますか」という問いです。
そして時々、いちばん価値のある回答が「今はつくらないほうがいいと思います」になることもあります。運用体制が整っていない状態でシステムを入れても、半年で誰も触らなくなる。それを正直に言えるのは、売上ではなく相手の課題を見ている立場だからです。この一言を言えたときの信頼の増え方は、機能を一つ多く実装したときとは種類が違います。
「上流に関わる仕事」を、もう少し具体的に聞いてみませんか
どんな相談から始まって、どこまでを一緒に決めるのか。実際の進め方はカジュアル面談でお話ししています。
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決める側に回ると、技術の見え方が変わる
この仕事を経験したエンジニアが口を揃えて言うのは、「技術選定の基準が変わった」ということです。
これまでは、新しくて筋の良い技術を選ぶことが正解に思えていた。けれど経営の隣に座ると、判断材料が増えます。その会社に運用できる人がいるか。三年後に採用できる技術か。今期の予算のどこに乗せるのか。移行にかかる期間、業務が止まるリスク、現場の抵抗感。これらを踏まえて「あえて枯れた技術を選ぶ」判断ができるようになると、エンジニアとしての厚みが一段変わります。
もうひとつ大きいのは、自分の提案が数字になって返ってくることです。「この業務、システム化する前にまず様式を三つに統一しませんか」という提案が、月に何十時間の削減として返ってくる。逆に、良かれと思って提案した機能が、現場でまったく使われないこともあります。どちらも、実装だけを担当していたら知らずに済んだ結果です。この手触りを一度知ると、仕様書の一行の後ろにいる人たちが見えるようになります。
弊社の平均年齢は27.5歳で、20代でリーダーを務めているメンバーも複数います。経営の隣に立つ仕事を、年次で配っているわけではありません。「この課題、どう解くのが筋がいいと思いますか」に自分の言葉で答えられるかどうか。基準はシンプルにそこだけです。
相談の続きを、自分たちで実装できる強み
戦略提案だけで終わらないのが、弊社のいちばんの特徴だと思っています。
課題を整理し、優先順位を決め、「まずここからシステム化しましょう」と合意したあと、その設計と開発をそのまま自社で引き受けられます。要件定義からアーキテクチャ設計、開発、リリース、運用まで一気通貫。だから提案の解像度も上がります。実装の手触りを知っている人間が引いた線と、知らない人間が引いた線は、どうしても違うからです。
上流の提案だけを担う立場だと、「言ったことの結果」を見届けられないまま契約が終わります。逆に開発だけを担う立場だと、「なぜこの仕様なのか」を知らないまま手を動かすことになる。その両方を自社で持っているので、提案した本人が実装の現場に立ち、運用が始まってからの反応まで受け取れます。
生成AIの使い方も同じ考え方で整えています。ChatGPTで設計ドキュメントを起こし、Claude Codeで実装を進め、Copilotでレビューする。この三段階のワークフローを標準化したことで、開発のスピードは以前とは比較にならないほど上がりました。空いた時間をどこに使うかというと、まさに「つくる前」の議論です。AIに任せられるところを任せるほど、人が経営の隣に座る時間が増えていく。私たちはこの循環をつくろうとしています。
まとめ ── 「決める場所」に、最初から立ってみませんか
弊社は現在、十数名の会社です。人数が少ないことは制約でもありますが、経営との距離が近いという一点においては、これ以上ない環境だと思っています。相談の場に若手が同席することも、その場で意見を求められることも、特別なことではありません。
もしあなたが、「言われたものをつくる」だけの働き方に手応えを感じにくくなっているなら、一度お話ししてみたいです。上流に関わりたいという気持ちは、経験年数ではなく姿勢の問題だと私たちは考えています。必要な知識は入ってから身につければいい。OJTと勉強会、資格取得支援も用意しています。
働く環境についても触れておきます。原則リモートワーク、フルフレックスでコアタイムはありません。完全週休二日制で年間休日は123日、残業もほとんどありません。経営の近くで働くことと、無理をして働くことは別物だと考えているからです。
いきなり応募でなくても構いません。カジュアル面談から歓迎しています。「今こういう仕事をしていて、この先どうしようか迷っている」という段階の話こそ、私たちは聞きたいと思っています。選考も、応募から最短一週間で結論が出るように組んでいます。待たせることが誠実さだとは思っていません。
清水洋太(しみず・ようた)
株式会社K.Platinum所属。エンジニアが力を発揮できる環境づくりを大切にしている。
K.Platinumでは一緒に働くエンジニアを募集しています。「実力で正当に評価される環境」に興味がある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。

