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2026年7月24日

「その応募者、本当に実在しますか?」— 顔も声も履歴書もAIで偽装できる2026、17人ITコンサルが一次面接で"本人か"を確かめる話

机の前に座った女性が、男性とのバーチャル面接が映し出されたノートパソコンの画面を見つめている。画面の周囲には、AIによる本人確認を示唆する日本語のテキストやグラフィックが表示されている。.

こんにちは。ITコンサルティングと受託開発、それにプログラミングスクールをやっている会社の代表、沼田です。17人・フルリモートの小さな会社をやっていて、そのうち8人が高専卒です。

先日、知り合いの中堅IT企業の社長と話していて、ちょっと背筋が寒くなる話を聞きました。オンラインで面接した応募者の、声と口の動きが、わずかにズレていたというんです。日本語もところどころたどたどしい。経歴書は完璧、ポートフォリオも立派。でも「なんか、目の前の人と、書類の人が、別人な気がした」と。

今日は、この"応募者が本人かどうか怪しい"という、少し前なら考えもしなかった問題について書きます。結論から言うと、AIの時代の採用は、「この人は優秀か」の前に、「この人は実在する本人か」を確かめるところから始まっています。

顔も声も履歴書も、偽装できる時代になった

なりすまし面接6500件超、2026年に急増警告

まず、事実を並べます。少し前まで都市伝説のように聞こえていた「なりすまし面接」は、もう実数のある現象になっています。

ある調査では、ディープフェイクを使ったなりすまし面接は、すでに6,500件以上確認されています。信用情報大手のExperianは、2026年の予測として「生成AIで作り込んだ経歴書と、リアルタイムで面接を通過するディープフェイク候補者が増え、企業が"本人ではない誰か"を気づかないまま雇い入れてしまう」と警告を出しました。応募者本人ではなく、AIや別人が面接の受け答えを肩代わりする——そんな"代行"のような仕組みまで、現実に立ち上がってきているということです。

何が怖いかというと、偽装できる範囲が一気に広がったことです。昔の経歴詐称は、せいぜい「職歴を盛る」くらいでした。ところが今は、生成AIで顔写真も、履歴書も、GitHubに置くポートフォリオのコードまで、それらしく作れてしまう。オンライン面接なら、リアルタイムで顔と声を別人に差し替える技術も出てきています。書類・見た目・受け答え、そのすべてが"作り物"でありうる。

背景には、国境をまたいだ不正就労の問題もあります。身元を偽ってリモートの職に潜り込み、内部から情報を抜く。海外では、こうした事例が実際に摘発されています。採用は、単なる人手の確保ではなく、"自社の中に誰を入れるか"という、セキュリティの入口でもあるわけです。

なぜ、中小・中堅こそ危ないのか

「そんなの、うちみたいな小さい会社には関係ない」と思うかもしれません。でも僕は、むしろ中堅・中小のほうが危ないと思っています。理由は3つあります。

ひとつめは、リモート面接が標準になったこと。うちもフルリモートですし、地方の会社が全国から採ろうと思えば、オンライン面接は避けられません。便利なんですが、その便利さは、なりすます側にとっての便利さでもある。一度も対面せずに採用が完結する導線は、偽装の入り込む余地が大きい。

ふたつめは、本人確認の体制が薄いこと。大手には、身元確認の専門部署や、バックグラウンドチェックの仕組みがあります。でも17人の会社に、そんな専任はいません。「感じのいい人だったから」「スキルは十分そうだったから」で、確認が甘くなりがちです。攻撃する側は、守りの薄いところを狙います。

みっつめは、1人採ると、内部アクセスをまるごと渡すことになること。小さい会社ほど、入った人にはすぐソースコードにも、顧客データにも触れてもらう必要がある。権限をこまかく分ける余裕がないからです。つまり、採用のミス1回が、そのまま情報漏洩の経路になりうる。母数が小さいぶん、1件のダメージが会社全体に響きます。

規模が小さいことは、多くの場面で武器になります。でも、こと"本人確認"に関しては、小さいことがそのまま弱点になる。ここは正直に認めたうえで、対策を設計するしかありません。

17人ITコンサルが、一次面接でやっている"本人確認"

本人確認の3点:その場実技・経歴を線で追う・入社後モニタリング

じゃあ、専任もいない17人の会社が、どう身を守るか。うちが一次面接で実際にやっていることを、そのまま書きます。特別なツールは使っていません。オペレーションの設計だけです。

ひとつめ、その場で手を動かしてもらう。事前に用意できる模範解答は、もう当てになりません。だから面接では、画面を共有してもらって、その場で小さな課題に手を動かしてもらいます。完璧なコードを書けるかどうかを見たいのではありません。「お題を渡された瞬間の、素の反応」を見たいんです。用意された答えを読み上げる人と、その場で考える人は、間の取り方も、詰まり方も、まるで違う。AIに代読させている場合、この"その場性"で必ずボロが出ます。

ふたつめ、経歴を"点"でなく"線"で追う。「この会社で何をしましたか」と単発で聞くのではなく、「そのプロジェクトの前は何をしていて、なぜ移って、次にどう繋がったのか」を、時系列の線でたどります。作り込まれた経歴書は、一つひとつの点は立派でも、点と点のつなぎ目が弱い。「なぜそのタイミングで?」「その判断、あとから振り返ってどうでした?」と接続を掘っていくと、本人の実体験かどうかが見えてきます。偽装は、線で聞かれると崩れます。

みっつめ、身元確認と入社後の見守りを、"遵守すべき義務"として捉え直す。これは後ろ向きな監視の話ではありません。本人確認の書類をきちんと確認する、入社直後はいきなり全権限を渡さず段階的にする、初期のアクセスログは一定期間ちゃんと残す。こういう当たり前を、「面倒だから省く」ではなく「守るべき手順」として運用に組み込む。正しく入ってきた人を守るためにも、入口はきちんと締める。これは、まっとうな応募者への誠実さでもあります。

前職のスタートアップITコンサルにいた頃から、僕はセキュリティを"技術の話"だと思っていました。ファイアウォールとか、暗号化とか。でも独立して自分の会社を持って、採用の責任を全部背負うようになって、考えが変わりました。いちばん最初の防衛線は、技術ではなく"採用の入口"だったんです。24歳で起業して、この3期目(27歳)まで、人を入れるという判断の重さは、年々増していると感じます。

こうして手間をかけて一人ずつ迎えているぶん、正しく入ってきてくれた人のことは、全力で守りますし、実力で評価します。もし"入口を大事にする"こういう会社を面白いと感じてもらえたなら、K.Platinumのエンジニア募集要項も、のぞいてみてください。

採用の入口は、会社の"最初の防衛線"

まとめます。2026年、なりすまし面接はすでに6,500件を超え、Experianも「リアルタイムで面接を通過するディープフェイク候補者が増える」と警告しています。生成AIで、顔も声も履歴書もポートフォリオも偽装できる。そして本人確認の体制が薄い中堅・中小こそ、この直撃を受けやすい。

大事なのは、これを「セキュリティ部門の仕事」だと切り離さないことです。応募者が実在する本人かどうかは、採用担当が一次面接で最初に確かめること。うちがやっているのは、その場で手を動かしてもらい、経歴を線で追い、入口の手順をきちんと守る。それだけです。派手な検知ツールはいりません。

「この人は優秀か」を見極める力は、これからも大事です。でもその手前に、「この人は、本当にこの人か」という問いが増えた。面倒に思えるかもしれませんが、ここを省くと、いちばん痛いところをやられます。採用の入口は、会社の最初の防衛線です。もし今、リモート面接だけで採用が完結しているなら、一度、"本人かどうか"の確認手順を、見直してみてください。


沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum 代表。ITコンサルティングと受託開発、プログラミングスクールを手がける。フルリモートの少人数チームで、エンジニアが実力を発揮できる会社づくりに取り組んでいる。


K.Platinumでは一緒に働くエンジニアを募集しています。「実力で正当に評価される環境」に興味がある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。

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