こんにちは。K.Platinum代表の沼田です。
うちの採用は、年に1回まとめてやるものだと思い込んでいました。新卒採用のシーズンがあって、その期間にまとめて動いて、終わったらまた来年。それが当たり前だと。
人事院のサイトで、国家公務員採用総合職試験の「教養区分」というページを読んで、その思い込みに気づきました。きっかけは些細なことで、社員に「うちの採用、もう少し柔軟にできませんかね」と言われたことでした。柔軟にする、とはどういうことか分からないまま、たまたま開いたのがこのページでした。
※本記事は2026年9月時点の情報にもとづいています。試験の詳細・最新の日程・受験資格は、必ず人事院の公式サイトでご確認ください。本記事の読者として想定しているのは受験者ではなく、採用する側の中小企業です。
教養区分を読む — 春と秋、19歳から30歳、専攻を問わない
同じポスト(教養区分)の試験が、年に2回実施されています。春は受付が2月、1次試験が3月、最終合格発表が5月。秋は受付が7月31日から8月24日、1次試験が10月4日、1次合格発表が10月21日、2次試験が11月、最終合格発表が12月17日です。
受験資格は、生年月日で区切られています。1996年4月2日から2007年4月1日生まれの人、それ以降に生まれて大学を卒業した人・卒業見込みの人。年齢で言えば、おおよそ19歳から30歳が、同じ試験を受けられます。
試験の趣旨には、専攻分野にとらわれない広範な見識を有する人材を確保する、とはっきり書かれています。学部や学科で先に絞る採用ではない、ということです。
2次試験は、企画提案試験・政策課題討議試験・人物試験の3種類。人物面接だけで決めているわけではありませんでした。
うちの選考は、正直に言うと人物面接がほぼ全てです。技術力を見る場もありますが、最終的な合否は「話してみてどうだったか」に寄っています。それが悪いとは思いませんが、複数の物差しを用意する、という発想自体が、うちにはありませんでした。
いちばん驚いたのは、合格点と平均点と問題が公開されていること

読んでいて、いちばん驚いたのはここでした。試験ごとの合格点、平均点、試験問題、年度別の実施状況が、すべてPDFで公開されています。
自分の成績についても、本人が期間内にダウンロードできる仕組みがあるようです。つまり、落ちた人が「自分がどこに届かなかったのか」を、後から確認できる設計になっています。
民間の採用が候補者に返しているのは、たいていお祈りメールだけです。うちも例外ではありません。「今回はご縁がなかった」という一文だけを返して、それで終わりにしてきました。
選考の物差しを先に公開しておくことも、落ちた場所を本人に返すことも、実は予算がかかる話ではありません。17人の会社でも、やろうと思えばできることです。ただ、これまでやってきませんでした。
なぜやってこなかったかを考えると、理由は単純で、「基準を書く」という作業を後回しにしていたからです。面接官の頭の中には基準があるはずなのに、それを紙に書き出したことがありませんでした。書き出していないものは、候補者に返しようがありません。
民間の採用は年1回1発勝負、国は同じポストに年2回の入口
ここが、この記事でいちばん書きたかったことです。
民間の新卒採用は、基本的に年1回、1発勝負です。そのシーズンに落ちたら、次のチャンスは1年後になります。だからこそ、各社の採用活動は年々前倒しになっていて、早く動いた会社が有利、という空気があります。
一方で国は、同じポストの試験を年に2回開き、19歳から30歳までを同じ土俵に乗せています。早期化競争をしているようには見えません。
うちが真似すべきなのは、時期を前倒しすることではなく、入口の回数を増やすことなのかもしれない。そう思うようになりました。1回勝負にしているから、こちらも身構えるし、候補者も身構える。回数があれば、お互いにもう少し力を抜けます。
考えてみると、「1回勝負」を作っていたのは制度ではなく、うちの都合でした。採用担当が専任でいないから、まとめてやったほうが効率がいい、という理由です。効率のために、候補者側の入口を狭めていたのだとしたら、それは見直す価値があります。
17人の会社が真似できる3つと、真似できない1つ

① 選考の回数を増やす
年1回にこだわらず、通年で入口を作れないか。うちも検討を始めています。
② 選考の基準を先に書く
何を見て合否を決めているのかを、選考に入る前に候補者へ伝える。物差しを隠さない、というだけの話です。
③ 落ちた人に、落ちた場所を返す
「ご縁がなかった」で終わらせず、可能な範囲でどこが基準に届かなかったのかを伝える。これは正直、いちばん腰が重い項目です。
一方で、真似できないと感じたこともあります。国レベルの試験を毎年設計し、採点し、公開する体力です。これは17人の会社にはありません。だからこそ、②と③だけでも先にやる価値があると思っています。
実は②については、うちのエンジニア採用からすでに手をつけ始めています。「実力で正当に評価される環境」を掲げるなら、まず何を評価しているかを言葉にするところからだと思うからです。興味がある方は、エンジニア募集の詳しい条件を見るもぜひのぞいてみてください。
10月4日、19歳から30歳が同じ部屋で試験を受ける
10月4日、秋の1次試験が実施されます。19歳の学生と、30歳の社会人経験者が、同じ部屋で同じ問題を解きます。
うちの採用は、誰と誰を同じ部屋に入れているだろう、と考えました。新卒という言葉、若手歓迎という言葉を、うちの求人票でも使っています。でも、その言葉が具体的に何を指しているのか、日付で説明できるほど詰めてはいませんでした。
国は、年齢や新卒・既卒という曖昧な言葉ではなく、生年月日という具体的な区切りで対象を定義しています。この記事を書きながら、うちの求人票の言葉を、もう一度日付で書き直せないか考えています。
公務員と民間企業、どちらの採用が優れているという話をしたいわけではありません。うちが受託でウェブサービスを作るときは、要件を先に言葉にしてから手を動かします。採用という、うちにとって一番大事な意思決定については、要件を言葉にしないまま、雰囲気で回してきたのかもしれない。そのことに、このページを読んで初めて気づきました。
まとめ
教養区分の試験から持ち帰ったのは、選考の回数を増やすこと、基準を先に書くこと、落ちた人に落ちた場所を返すこと。この3つです。派手な制度改革ではなく、17人の会社でも今日から手をつけられることだと思っています。
うちの求人票の言葉も、この記事を書きながら見直しているところです。地味な作業ですが、まず言葉にすることからしか、採用は変えられない気がしています。
沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum代表。創業メンバーの一人として、会社の成長とサービスづくりに携わってきた。採用のあり方も、社内の意思決定と同じくらい言葉にして設計したいと考えている。
K.Platinumでは一緒に働くエンジニアを募集しています。「実力で正当に評価される環境」に興味がある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。
出典
人事院『国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)教養区分』
https://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/sougousyoku/kyouyoukubunn/kyouyoukubunn.html
人事院 試験情報 https://www.jinji.go.jp/saiyo/siken.html
註記
本記事は2026年9月時点で人事院公式サイトに掲載されている教養区分試験の日程・受験資格・試験内容の紹介であり、受験を検討している方向けの受験案内ではありません。最新の日程・資格要件・申込方法は、必ず人事院の公式サイトでご確認ください。「民間の採用が真似すべきは前倒しではなく回数」「物差しを公開し、落ちた場所を返す」といった読み解きは筆者の解釈であり、人事院が示した見解ではありません。公務員と民間企業の採用の優劣を論じるものではなく、自社に関する記述は既に公開している範囲(17人・3期目)にとどめています。
