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2026年7月31日

2027年末に、うちの基幹システムのサポートが切れる — 全面移行できない中堅企業が、残り1年半で現実的に打てる手

スーツ姿の2人の男性がサーバールームに立ち、2027年のシステム更新に向けたプロジェクトのスケジュール表を見ている。砂時計が緊急性を象徴しており、ITシステムの刷新や意思決定について論じる日本語のテキストが添えられている。.

こんにちは。K.Platinum代表の沼田です。

先月、ある製造業のお客様の会議で、情シス担当の方がぽつりと言いました。

「うち、2027年末で基幹のサポート切れるんですよ。……で、まだ何も決まってません」

SAP ERP 6.0(ECC 6.0)の標準保守が、2027年末で終了します。 国内で約2,000社が使っていると言われている、あの基幹システムです。いわゆる「2027年問題」。

この話、ニュースで見ると大企業の話に聞こえます。実際に記事を書いているのも大手SIerさんやERPベンダーさんで、着地点はだいたい「早めにS/4HANAへ移行しましょう」。間違ってはいません。間違ってはいないんですが、本当に困るのは、その移行予算を取れない中堅企業のほうです。

そして今日は2026年7月。移行に必要な準備期間は、一般に1.5〜3年と言われます。逆算すると、今から本気で動き出す会社にとって、ここが最終ラインです。

まず、3つの選択肢を正直に比較する

中堅企業に残されている選択肢は、大きく3つです。ポジショントークなしで、それぞれ何にお金と時間がかかるかを書きます。

3つの選択肢

① S/4HANAへ移行する

いわゆる王道ルート。ただし、20年分積み上がったアドオン(独自改修)の数がそのまま費用と期間に跳ね返ります。標準機能に寄せられればコストは下がりますが、それは「業務のやり方を変える」ということ。現場は当然抵抗します。中堅企業でここに踏み切るには、経営がかなり明確に旗を振る必要があります。

② 延命する(保守を延長する/サードパーティ保守に切り替える)

「時間を買う」選択です。悪手ではありません。ただし、延命は問題を先送りにするだけで、その間に何をするかを決めていないと、2029年に同じ会議をすることになります。延命を選ぶなら、「延命期間中に何を終わらせるか」をセットで決めて初めて意味を持つ

③ 他システムへ刷新する

SAPをやめて別のERPに乗り換える。中堅の業務規模なら現実的な選択肢になり得ますが、データ移行と業務再定義の重さは①とそう変わりません。「安いから」という理由だけで選ぶと、だいたい後で高くつきます。

この3つ、どれを選んでも重い。だから多くの会社が、「重いから決められない」まま2026年の夏を迎えている。これが実態だと思っています。

最初に決めるべきは「移行先」ではなく「捨てるアドオン」

こういう相談を受けたとき、僕らが最初に聞くのは「S/4にしますか、他にしますか」ではありません。

「そのアドオン、いま誰が使ってますか」

20年動いている基幹システムには、たいてい数百本のアドオンがぶら下がっています。そして経験上、その相当数はもう誰も使っていないか、月に数回しか使われていないか、代替可能なものです。

移行の見積もりが跳ね上がるのは、この棚卸しをせずに「現行機能をすべて再現する」前提で数えるからです。逆に言えば、捨てるものを決めるだけで、移行の絵はまったく違う形になります。

棚卸しの順番はこうです。

  1. 使用ログを取る(過去1年、そのプログラムが何回呼ばれたか)
  2. 呼ばれていないものを候補に出す(ここで数割が消えます)
  3. 残ったものを「業務上必須/代替可能/惰性」に3分類する
  4. 「惰性」を落とす判断を、部門長が署名して確定させる

4番が重要です。情シスだけで決めると、後から「あれがないと困る」と言われて復活します。捨てる判断は、業務側に持たせる。 これは技術の話ではなくて、合意形成の話です。

そして、この棚卸しの結果が出て初めて、①〜③のどれが現実的かが見えてきます。移行先を先に決めるのは、荷物を数える前に引っ越し先の間取りを決めるようなものです。

「全部やり替えない」という現実解

もう一つ、中堅企業にとって現実的な戦い方があります。

基幹はいったん延命しつつ、周辺から先に切り出す。

周辺から切り出す

基幹システムがやっていることのすべてが、基幹システムでなければできないわけではありません。たとえば——

  • 受発注:取引先とのやり取り。Webフォームや外部連携で先に切り出せることが多い
  • 在庫照会:営業が客先で「在庫あります?」と聞かれる場面。読み取り専用の照会画面を外に出すだけで、現場の体感はかなり変わります
  • 帳票:帳票のためだけに生き残っているアドオンは、驚くほど多い

これらを先に外へ出しておくと、いざ本体を移行するときに「移行しなければならないもの」が減ります。移行のリスクを、前倒しで削っておくわけです。しかも、周辺の切り出しは1〜3ヶ月単位で成果が出るので、経営が「進んでいる」と実感できる。全面移行プロジェクトが2年間なにも見せられずに社内の支持を失っていく、という典型的な失敗も避けられます。

これは以前このブログで書いた「レガシー基幹にアダプタを1本だけ架ける」話とも地続きです。全社基盤を作る前に、細い橋を1本、確実に架ける。

生成AIは、ここで効く

「基幹刷新にAIを使う」というと胡散臭く聞こえますが、この文脈での生成AIは、実はかなり地に足がついた効き方をします。

  • 仕様書が残っていないアドオンの解析:これが最大の効きどころです。20年前に書かれ、書いた人はもういない。コードだけが残っている。この読解に、いままで人間が何ヶ月もかけていました
  • テストケースの生成:移行の工数の多くはテストです。既存の処理から回帰テストのケースを起こす作業は、AIが得意な領域
  • データ移行のマッピング:旧テーブルと新テーブルの項目対応表づくり。単調で、量が多く、間違うと致命的。下書きをAIに作らせて人間が検証する形が合います

もちろん、AIが出したものをそのまま使うことはありません。AIに下書きをさせ、人間が判断する。 この境界線をどこに引くかを設計するのが、僕らの仕事です。

17人のITコンサルが、大手SIerと違う関わり方をする理由

正直に書きます。この規模の案件、大手SIerさんのほうが体力はあります。100人投入できます。うちは17人です。

ただ、うちがこの領域で選ばれるときの理由は、だいたい同じです。

工数を売らないから。

移行を生業にしている会社にとって、「移行しない」は売上ゼロの提案です。だから構造的に、「移行しましょう」に着地する。それが悪いと言っているのではなく、そういうインセンティブが働く、という話です。

僕らは要件の交通整理から入ります。捨てるアドオンを決め、周辺から切り出し、結果として移行範囲が半分になれば、それでいい。うちの取り分は減りますが、その会社は次の10年を戦える形になります。

24歳で起業して、いま3期目・27歳。前職はスタートアップのITコンサルでした。そこで見たのは、「正しい提案」より「売れる提案」が通っていく現場です。それが嫌で会社を作った、というのが正直なところです。

だから、要件を交通整理して「捨てる判断」を一緒にできる人を、本気で探しています。この関わり方に少しでも引っかかるものがあれば、K.Platinumの採用ページをのぞいてみてください。

2027年末まで、あと1年半。

まだ間に合います。ただ、「移行するかどうか」を悩んでいる時間はもうありません。 決めるべきは、何を捨てるか。そこからです。


沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum代表。24歳で起業し、現在3期目。外資系金融向けのITコンサルティングを中心に、要件定義から開発・運用までを手がける。「売れる提案」より「正しい提案」が通る会社をつくることにこだわっている。


K.Platinumでは、製造・流通の基幹システムに向き合えるITコンサルタント/エンジニアを募集しています。「作る」より前の、要件を整理して「捨てる判断」をする仕事に興味がある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。

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