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2026年7月21日

「AIで爆速になった」は本当か — 体感は+20%、実測は逆に遅くなっていた2026、17人ITコンサルが「気分」でなく数字でAIを測った話

ノートパソコンの前に座ったアニメ風のキャラクターが、「slow」と「fast」と書かれたストップウォッチのグラフィックを指さしており、その横にはAIによって速度が向上することについて書かれた日本語のテキストがある。アイコンやキャプションで、正確な測定のメリットが説明されている。.

こんにちは。ITコンサルティングと受託開発、それにプログラミングスクールをやっている会社の代表、沼田です。17人・フルリモートの小さな会社をやっています。

最近、社内でも社外でも、こういう声をよく聞きます。「AI入れてから、開発が爆速になりました」。僕もつい「いいね」と返しそうになる。でも、あるときから僕は、この言葉に一拍おいて聞き返すようになりました。「その"爆速"、測ってみました?」と。

今日は、AIの効果を"体感"でなく"数字"で測るという、地味だけど中小にとってかなり大事な話を書きます。結論から言うと、AIで速くなった「気がする」だけで止めると、けっこう危ない。

「爆速になった」の、その実感を疑ってみる

まず、僕自身が背筋の伸びた調査を紹介します。経験豊富な開発者16名を対象にした研究で、こんな結果が出ました。AIコーディング支援を使ったグループは、出力の確認、指示の出し直し、返答待ちまで全部含めると、使わなかったときより約19%多く時間を使っていた。ところが本人たちは、「平均で20%くらい速くなった」と感じていた

つまり、実測では遅くなっているのに、体感では速くなっている。この落差、けっこう衝撃じゃないですか。ある報道では、AIコーディングツールが経験豊富なエンジニアの生産性を約19%下げていた、とまで書かれていました。

なぜこんなことが起きるのか。使ってみると、心当たりがありすぎるんですよ。AIがコードを出してくれると、「自分で書かなくて済んだ」感覚が強く残る。だから速くなった気がする。でも実際には、出てきたコードを読んで、意図とズレていないか確認して、直して、また指示して……という往復に、思った以上の時間が溶けている。手を動かしていない時間は、体感から抜け落ちやすい。だから「速くなった気がする」だけが記憶に残るんです。

個人では遅く、会社全体では2倍速い——この矛盾

体感と実測、個人と組織のズレ

ここまで読むと「じゃあAIは開発を速くしないのか」と思うかもしれません。でも、話はそう単純じゃない。同じ2026年に、まったく逆の数字も出ているんです。

企業レベルで見ると、AI導入が最も進んだ会社——エンジニアの75〜100%が週3日以上AIツールを使っている会社——では、コードの取り込み(PRのマージ)が週2.2件。一方、導入が進んでいない会社は週1.12件。つまり、組織として見ると、AIをちゃんと使い込んでいる会社は約2倍のペースで開発が進んでいる。

個人の実感では遅くなっているのに、組織全体では倍速い。この矛盾を、僕はこう理解しています。AIの効果は、一人の作業時間を短くするところではなく、組織としての"流れ"を速くするところに出る。

たとえば、レビュー待ちの時間が減る。ドキュメントや調査が並行して進む。今まで一人しか触れなかった領域に、他のメンバーもAIの助けを借りて手を出せる。個々のタスクの秒数ではなく、「着手してから本番に出るまで」の全体の詰まりが取れていく。だから、一人ずつストップウォッチで測ると遅く見えても、会社の出荷ペースは上がる。測る場所を間違えると、同じAIが「遅い」にも「2倍速い」にも見えてしまうわけです。

なぜ、みんな"体感"で語ってしまうのか

じゃあ、なぜ多くの現場が「爆速になった」という体感で止まってしまうのか。理由はシンプルで、体感はタダで手に入るけれど、実測にはひと手間かかるからです。

「なんか速くなった気がする」は、誰でも今すぐ言える。でも「本当に速くなったのか」を確かめるには、AIを入れる前と後で、同じ物差しを当てて比べないといけない。この物差しを持っている中小は、驚くほど少ない。だから、みんな体感で語り、体感で満足し、体感で予算を決めてしまう。

これ、けっこう怖いんですよ。もし実態としては遅くなっているのに「爆速だ」と思い込んでいたら、間違った方向にどんどん投資してしまう。逆に、本当は組織の流れが速くなっているのに、一人の作業時間だけ見て「思ったほどでもない」と判断したら、効く投資をやめてしまう。どちらも、体感で握った結果の事故です。


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17人ITコンサルの、AIの測り方

リードタイムで測る

うちがどう測っているか。特別なツールは使っていません。物差しをひとつ、決めただけです。

うちが見るのは、個人の作業時間ではなく、「着手してから本番に出るまでのリードタイム」です。ある機能なり案件なりを「やろう」と決めた瞬間から、実際にお客さんの環境で動き出すまで、何日かかったか。ここだけを、AI導入の前後で比べる。

なぜこれかというと、お客さんにとって価値があるのは「エンジニアが何分でコードを書いたか」ではなく「頼んだものが、いつ動くようになるか」だからです。途中でレビュー待ちが減ろうが、調査が並行しようが、最終的にリードタイムが縮まっていれば、それは本物の効果。逆に、一部の作業が速くなっても、全体のリードタイムが変わらないなら、それは「速くなった気がする」だけです。

もうひとつ、うちが徹底しているのは、AIの効果を"気分"で会議に持ち込まないこと。「なんか楽になった」ではなく、「この案件、去年の同規模案件と比べてリードタイムが◯日短くなった」と、数字で話す。うちは17人と小さいから、案件の履歴を全部、僕が把握できる。だからこそ、体感でなく実測で握れる。これは、規模が小さいことの数少ない特権だと思っています。

前職のスタートアップITコンサルにいた頃、「速くなった感」だけで新しいツールを次々入れて、結局どれが効いたのか誰も説明できない、という現場を何度も見ました。だから独立して自分の会社を持ったとき、「効果は必ず数字で確かめる」を最初のルールにしました。24歳で起業して、この3期目(27歳)まで、地味だけどこれを守り続けています。

AIの効果は、"気分"でなく"数字"で握る

まとめます。AIコーディングは、個人の作業を測ると逆に遅くなっている場合すらある(体感+20%・実測は約19%減)。でも組織で測ると、使い込んだ会社は約2倍のペースで開発が進む(週2.2件 vs 1.12件)。同じAIでも、どこを測るかで結論が正反対になる

だから、「爆速になった」という体感で止めないでほしいんです。問うべきは、着手から本番までのリードタイムが、本当に縮まったのか。速くなった"気"がするだけなのか、実際に速くなったのか。

うちも、派手なことはやっていません。物差しをひとつ決めて、AIの前後で比べているだけ。でも、これをやるかやらないかで、投資の判断がまるで変わります。小さい会社ほど、一発の投資ミスが痛い。だからこそ、AIの効果は"気分"でなく"数字"で握る。今日から、自社のAIを一度、体感でなく実測で見てみてください。案外、思っていたのと違う景色が見えるはずです。


沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum代表。24歳で起業し、ITコンサルティング・受託開発・プログラミングスクールを手がける。17人・フルリモートの組織で、「エンジニアが正当に評価される会社」を、体感でなく数字と仕組みでつくることにこだわっている。


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