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2026年6月9日

定例会議を月320時間→120時間に減らした話 — 17人のITコンサルが挑んだ「非同期化」実験

「定例、やめませんか」

社内のSlackにそう投げたとき、社員から返ってきた最初のリアクションは、絵文字じゃなかった。
「えっ……それは大丈夫なんですか?」という、ちょっと不安そうなメッセージだった。

僕は沖縄高専出身で、トヨタ→スタートアップITコンサルを経て、24歳でK.Platinumを起業した。
設立3期目、従業員は17人。受託開発とITコンサルティングを軸にした会社で、最近は社内に高専出身者が8人いる。
今日は、そんな小さな会社が「全社の定例ミーティングを、いったんゼロにしてみた」話を書く。

率直に言うと、最初は怖かった。
ただ、結論から書いておくと、やってみてよかった。
正確に言えば、会議が減ったことよりも、「会議を減らすために考えたこと」のほうが、組織を変えたと感じている。


320時間という数字が、すべての始まりだった

きっかけは、ある月のカレンダーを見て愕然としたことだった。

僕の立場上、社員のカレンダーは(同意のうえで)ほぼ全員分が見える。
あるとき試しに、Googleカレンダーから1ヶ月分の「会議」「ミーティング」「同期」「定例」と名がついた予定の合計時間を集計してみた。

17人で、月の合計会議時間が 320時間 を超えていた。

数字だけ見るとピンと来ないかもしれないが、これは社員1人あたり週4〜5時間が会議に消えていることを意味する。実装も設計もする受託開発の現場で、週4時間が"集まって話すだけ"に使われている計算だ。

しかも内訳を見ると、本当にやばいのは時間そのものより、繰り返しが多いことだった。
週次の全社定例、案件ごとの週次定例、リーダー同士の同期、1on1、各種勉強会、振り返り会、レトロ。一度走り始めた会議は、誰かが止めない限り、永遠に毎週続く。気付くと「とりあえず1時間枠で押さえとこう」が積み重なって、月320時間になっていた。

これを見て、ひとつ覚悟を決めた。
全社の定例を、いったんゼロにする。

その上で、本当に必要なものだけを、もう一度ゼロから作り直すことにした。


「やめる」と言ったときの社内の反応

予想していたが、最初の反応は半々だった。

賛成の声は、PMやテックリードクラスから多かった。
「正直、定例で吸われている時間がしんどい」
「議事録を作る時間のほうが、議題を考える時間より長い」
「議題がないのに集まっている週がある」
要するに、すでに本人たちが違和感を感じていた。

不安の声は、若手メンバーから多かった。
「定例がないと、僕の進捗を誰がチェックしてくれるんですか」
「困ったときに相談する場が消えるのは怖い」
「会議があるから、月曜日に頭が動く」

この若手の不安は、ものすごく大事なフィードバックだと思った。
若いメンバーが定例を「自分が見守られている証拠」として受け取っているなら、定例を消すだけでは話が終わらない。見守る装置を別の形で残さないと、組織として冷たくなる

だから、最初の議論は「やめる/やめない」じゃなくて、「定例で本当は何を渡していたのか」を分解するところから始まった。


何をやめて、何を残したのか

僕らは、社内のあらゆる定期会議を一度棚卸しして、4つに分類した。

非同期コミュニケーションの全体像

①「報告のための会議」
誰かが画面共有して、進捗を読み上げて、他のメンバーが頷くだけの会議。
これは全廃した。100%、テキスト or 録画で代替できる。

②「決定のための会議」
複数人が議論して、その場で意思決定する会議。
これは残した。ただし、議題と論点を事前に文字で書いてある場合に限る、というルールにした。論点が文字になっていない議題は、開催を許可しないことにした。

③「教えるための会議」
新人オンボーディング、技術勉強会、知識共有。
これは原則 録画+ドキュメント化 にした。同期が必要な質疑だけライブでやる。

④「人を見るための会議」
1on1、雑談、メンタルチェック。
これは絶対に残した。ここを削ると、組織はあっという間に冷える。むしろ、他の3つを削った分のリソースを、ここに寄せた

つまり、僕らがやったのは「会議をなくす」ではなく、「①と③を解体して、②と④に資源を集中させる」だった。
会議は「報告の場」から「議論と意思決定の場」へ、役割そのものを絞り込んだ。
結果として、月320時間の会議は、約120時間にまで減った。減った200時間は、実装と設計に戻ってきた。


非同期化のための「3つの装置」

定例を消す上で、絶対に必要だと感じた装置が3つある。

ひとつ目は、進捗を毎日テキストで残すチャネル
僕らはSlackに各案件の「ログチャネル」を作って、毎営業日の終わりに、その日やったこと・詰まっていること・明日やる予定を、各自が短く投げる運用にした。テンプレは決めず、3〜5行で十分。
これがあると、会議で報告し合う必要が消える。マネージャーは朝、コーヒーを飲みながらログを流し読みすれば、全員の状況がだいたい掴める。
おまけに、会議のたびに作業を中断して集中が切れる――いわゆるコンテキストスイッチのコストも、これでぐっと減った。各自が自分のタイミングでログを読み書きできるからだ。

ふたつ目は、「決定」を必ずどこかに残すルール
非同期化で一番怖いのは、「いつの間にか方針が変わっていて、全員が違うものを作っていた」事故だ。
これを防ぐために、何かを決めたら、その内容をBacklogの該当課題か、案件ドキュメントに必ず1段落で書き残す、というルールにした。Slackに流れて消えるのは「議論」、ドキュメントに残るのが「決定」。この線引きを徹底した。

みっつ目は、録画議事録の標準化
どうしても同期で話す必要があるときは、tldvで録画する。録画にはAIが自動で要約を付けてくれる。後から参加できなかった人は、要約を読み、必要な部分だけ録画を観る。これで「全員の予定を合わせる」コストが消えた。

この3つが揃うと、会議は本当に減る。
というか、会議を開くまでもなく、ほとんどのことが進んでしまうようになる。


やめてみて起きた変化 — 想定通りだったこと、想定外だったこと

3ヶ月くらい運用してみて、想定通りだったことと、想定外だったことがある。

想定通りだったのは、実装時間が増えたこと。月320時間→120時間という数字が出ているので、これは当然。社員から「夕方に頭が空っぽになる前に、もうコードを書き終えている日が増えた」という感想をもらった。

想定外だったのは、辞める人が減ったことだ。

僕は最初、定例を減らせば「孤独感が増えて辞める人が出るんじゃないか」と覚悟していた。
でも、実際は逆だった。3ヶ月の間に「会社を辞めたい」とこぼしたメンバーは、ゼロ。代わりに「久々に、考える時間が取れて楽しい」という声をいくつももらった。

考えてみれば、会議は人を「会社にいる感」で満たしてくれるけど、仕事をしている実感は与えてくれない。
週に4時間も会議に吸われて、夜に「今日、自分は何をしたんだっけ」と思う日々が続けば、やる気は静かに削れていく。
逆に、自分の手で何かを動かした感覚が毎日残れば、人はそんなに簡単には辞めない。

これは、僕にとって一番の発見だった。
会議を減らすのは、効率化のためじゃない。社員の「自分は仕事をしている」という実感を取り戻すための投資だった。

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失敗もある — 非同期で詰んだ話

ここまで読むと「会議をなくせばいい」と聞こえるかもしれないが、もちろん失敗もあった。

ひとつは、新規案件のキックオフを完全に非同期でやろうとして、案件が大きく遅れたこと。
要件が固まっていない段階で、複数人が同じドキュメントに非同期で書き込むと、お互いの前提がズレたまま並走してしまう。気付いた頃には、認識のズレが3週間分溜まっていた。

これを受けて、僕らは「未知が多いフェーズは、同期で頭を揃える」というルールを追加した。
要件定義の初期、トラブル対応、関係性のリセットが必要なときは、ためらわず会議を入れる。非同期は「お互いに前提が共有されている状態」では強いが、前提を揃えるフェーズではむしろ非効率になる。

もうひとつは、雑談が消えそうになったこと。
意図して残した1on1や雑談チャネルがあっても、忙しくなると真っ先にスキップされる。気付くと、社員同士が「最近、その人と一度も話していない」状態が起きそうになった。

これは、明確に介入が必要だった。今は「週1回、雑談チャネルに何でもいいから1投稿」「月1回、業務外のオンライン雑談会」を仕組みとして組み込んでいる。

非同期化は、放っておくと冷え固まる。意図的に温め続ける仕掛けがないと、効率は上がるけど、組織はパサつく。

会議の前後で時間の使い方が変わった様子


会議を減らすのは、考える時間を取り戻すため

いま、僕らの月の会議時間は120時間台で安定している。半分以下になった。
ただ、これだけ書いておきたい。この実験は、効率化のためにやったわけじゃない

定例を消したのは、「みんなが、自分の頭で考える時間を取り戻すため」だった。

ITコンサルや受託開発の現場で、本当に価値が出るのは、誰かに言われて動いている時間じゃない。
お客さんの課題を、自分の頭で噛み砕いて、自分の言葉で再定義し直す時間だ。

その時間が、会議に侵食されていた。

「定例があるから安心」というのは、本当は罠だ。
予定が埋まっていると、人は「仕事をしている気分」になれる。でも、その気分が続くほど、本当の仕事から遠ざかっていく。

僕らがやったのは、会議をなくすことそのものじゃない。
会議に逃げ込まなくていい組織を、もう一度ちゃんと作り直す作業だった。
そして、その過程で、会社の輪郭がはっきりしてきた感覚がある。


筆者プロフィール

沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum代表。沖縄高専卒。トヨタ→スタートアップITコンサルを経て、24歳で起業。
設立3期目で17名の組織。受託開発とITコンサルティングを軸に、要件定義から運用まで一気通貫で伴走するスタイルを取っている。
行動指針は「CHANCE, CHANGE, CHALLENGE」。


K.Platinumで働くということ

僕らは、会議に逃げ込まない組織を作っている途中の会社です。
「自分で考えて、自分で動く」と言うと聞こえはいいけど、実際にはそれを支える仕組みが必要で、僕らはその仕組みを毎月アップデートし続けている。

「もっと考える時間が欲しい」
「会議じゃなく、ちゃんと手を動かす仕事がしたい」
「組織の作り方そのものに興味がある」

そう感じているエンジニアの方は、ぜひ一度カジュアル面談で話しましょう。

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