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2026年10月8日

10月は「年次有給休暇取得促進期間」らしい。数える仕組みは、もう法律で決まっていた

オフィスで、10月のカレンダーを背景に、男女が両手を挙げて歓声を上げている。テキストには10月は年休の月と書かれている。.

こんにちは。K.Platinum代表の沼田です。

10月が「年次有給休暇取得促進期間」だということを、僕は今週まで知りませんでした。会社を設立して3年半、社員は十数名。経営している側なのに、知らなかった。

きっかけは、厚生労働省の「年次有給休暇取得促進特設サイト」が令和8年8月28日に更新されていたことです。掲載されているリーフレットの説明文に、こう書いてあります。

夏季、10月の「年次有給休暇取得促進期間」、年末年始、GWに時季に合わせたリーフレットを掲載しており

で、せっかくなので事業主向けのページを最初から最後まで読んでみたんですが、思っていた話と全然違いました。 有休の話だと思って読み始めて、途中から「これ、数え方の話だな」と分かった。

※本記事は2026年9月時点の情報にもとづいています。制度の詳細および個別の判断については、都道府県労働局や専門家にご確認ください。


年5日は「目標」ではなく「下限」だった

まず、僕が雑に理解していたところを、原典で確認し直します。

年次有給休暇は、①半年間継続して雇われている ②全労働日の8割以上を出勤している、この2つを満たしていれば付与されます。正社員・パートタイム・シフト制といった区分には関係ありません。

通常の労働者の付与日数は、勤続0.5年で10日、1.5年で11日、2.5年で12日、3.5年で14日、4.5年で16日、5.5年で18日、6.5年以上で20日。

そして平成31年4月から、使用者は法定の年休が10日以上ある全ての労働者に、毎年5日間を確実に取得させることが必要になりました。ここまでは知っていました。

知らなかったのは、注のほうです。

「10日以上」というのは、その年に新規に付与された日数が10日以上という意味で、繰り越した日数はカウントされません。管理監督者も対象に入ります。パート等でも年10日以上付与されるなら対象です。

そして年5日の数え方は、「使用者による時季指定」「労働者自らの請求・取得」「計画的付与制度による取得」のいずれかの合計。合計が5日に達した時点で、使用者から時季指定をする必要はなく、また、することもできないと明記されています。

もう1つ、細かいですが重要なところ。時間単位で取った年休は、この5日から差し引くことができません。 時間単位年休を入れている会社が「合計で5日ぶんは取れているから大丈夫」と考えていたら、そこはズレる可能性があります。

そのうえで、ページにはこう書いてありました。

「毎年5日間、年次有給休暇を取得させればいい」ということではありません。付与された年次有給休暇は本来、すべて取得されるべきものです。

年5日は下限であって、目標ではない。 制度を作った側が、はっきりそう書いている。


有休は制度ではなく、在庫だと思っている

有休は在庫

ここからは僕の考え方です。

有休を「制度」だと捉えると、就業規則に書いてあるかどうかの話になります。書いてあれば、うちには有休制度があります、で終わる。

でも実際には、有休は在庫です。

毎年、決まった日数が積まれる。使われた分だけ減る。使われなかった分は繰り越されて、さらに積まれる。付与された日数と取得された日数の差は、消えずにどこかに溜まっている。

在庫だと思うと、見え方が変わります。

たとえば「うちは有休が取りやすい会社です」と面接で言うとき。制度の話なら、それは就業規則の話です。でも在庫の話なら、去年うちの社員が平均何日取ったのかという数字が答えになる。

候補者に効くのは明らかに後者です。「取れます」は方針ですが、「去年の平均取得日数は◯日です」は実績なので。

うちは、その数字を言えません。数えていないからです。 この記事で自社の取得率を書かないのは、書きたくないからではなくて、実測値を持っていないからです。持っていない数字を「だいたいこのくらい」で書くわけにはいかない。


数えるかどうかは、うちの裁量ではなかった

数える義務

で、いちばん効いたのがここでした。

同じページに、こう書いてあります。

労働基準法施行規則が改正され、平成31年4月より、使用者は、労働者ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存しなければならない。

管理簿の中身は、時季・日数・基準日を労働者ごとに明らかにしたもの。労働者名簿や賃金台帳とあわせて作ることもできるし、必要なときにいつでも出力できる仕組みなら、システム上で管理しても差し支えないと書いてあります。

つまり、数えるかどうかは、そもそも会社の裁量ではなかった。 「制度が無いので数えていません」は、成立しない。

これは自分にとってわりと痛い発見でした。うちは十数名の会社で、人事の専任がいません。だから「そういう管理はまだ手が回っていない」という言い方を、無意識にしていた気がします。でも規模は関係なくて、5.5年勤続で18日、6.5年以上で20日という付与日数の表も、うちのような小さい会社にそのまま適用されます。

そしてもう一つ。原典は、この管理簿を単なる保存義務としては書いていません。

使用者は、この年次有給休暇管理簿を通じて年次有給休暇の取得状況を労働者及びその上司に周知し、取得が進んでいない労働者に対して、上司が業務負担の軽減を図るなど労務管理上の工夫を行うことにより、より多くの年次有給休暇の取得促進に結び付けてもらいたい

取得が進んでいない人がいたら、その人の業務負担を見ろ、と書いてある。

これ、有休の話をしているように見えて、実は属人化の話です。


取得率は、属人化の指標として読める

休めない人には、たいてい理由があります。休みたくないわけではなくて、自分が抜けると止まる仕事を持っているんです。

だとすると、有休の取得日数が極端に少ない人がいる、というのは、休暇の問題ではなく業務設計の問題として現れているサインだということになります。誰かに寄せすぎている。引き継げる形になっていない。

ここは僕の解釈ですが、原典の「取得が進んでいない労働者に対して、上司が業務負担の軽減を図る」という一文は、まさにその読み方をしていると思います。本人の意識を変えろ、とは書いていない。負担のほうを見ろ、と書いてある。

うちは受託開発なので、案件ごとに担当がつきます。放っておくと自然に属人化します。それを止めるには、誰がどれだけ抜けられない状態になっているかを見るしかない。有休の取得日数は、それを測る指標としてけっこう素直です。しかも管理簿として作ることが既に義務なので、追加でデータを取る必要がない。

念のため書いておくと、休まない社員が悪いという話でも、その逆でもありません。主語は個人ではなく、仕事の設計のほうです。

参考までに、同じページに、全体の約4割の労働者が年休の取得にためらいを感じている、というデータが載っていました(資料出所は令和5年度の意識調査です)。ためらいが4割あるということは、制度を用意しただけでは動かないということでもあります。

うちは、その「数える」ところから始めている会社です。→ K.Platinumのエンジニア求人を見る


原典に載っていた打ち手は3つ ── 計画的付与・時間単位年休・プラスワン休暇

原典に書いてあった打ち手のうち、うちで検討できそうなものを挙げておきます。いずれも要件があるので、導入するなら要件のほうを先に確認してください。

計画的付与制度。付与日数のうち5日を除いた残りについて、労使協定を締結する等により、計画的に取得日を割り振れる制度です。

時間単位年休。年5日の範囲内で、時間単位での取得を可能にする制度。導入するには就業規則の規定(常時10人以上の事業場)と労使協定の締結の両方が必要です。労使協定は労働基準監督署への届出は不要と書かれていました。ただし前述のとおり、時間単位で取った分は年5日の義務からは差し引けません。また「育児を行う労働者」のように、取得目的で対象範囲を限定することはできないとされています。

プラスワン休暇。土日や休日に年休を組み合わせて連続休暇にするやり方です。これは制度というより運用なので、うちでもすぐ試せそうでした。

あと、都道府県労働局に「働き方・休み方改善コンサルタント」がいて、電話相談や個別訪問でアドバイスをしてくれるそうです。相談は無料と書いてありました。うちのような規模の会社にとって、無料の外部相談先があるのはけっこうありがたい話です。


10月までにうちがやるのは、制度づくりではなく「数えること」

うちが10月までにやるのは、制度を作ることではありません。数えることです。

管理簿は本来もう無いといけないものなので、これは新しい取り組みではなく、遅れていた宿題です。時季・日数・基準日。うちの規模なら、揃えるのに何日もかからない。

数え終わったら、たぶん誰か1人か2人、極端に少ない人が出てきます。そのときに「もっと休んでね」と言うのではなくて、その人が何を抱えていて、なぜ抜けられないのかを見に行く。 原典がそう書いているし、そっちのほうが問題の在り処に近いと思うからです。

数字が出せるようになったら、面接でも言うつもりです。「有休は取れます」ではなくて、実際の日数のほうを。


出典
厚生労働省委託事業 働き方・休み方改善ポータルサイト『年次有給休暇取得促進特設サイト』(令和8年8月28日更新)
https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuuka-sokushin/
同『事業主の方へ』 https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuuka-sokushin/jigyousya.html
同『資料のダウンロード』 https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuuka-sokushin/download.html
厚生労働省『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001138970.pdf

註記
本文中の付与日数・年5日の時季指定義務とその注記・年次有給休暇管理簿の作成および3年間の保存・計画的付与制度・時間単位年休の要件・ためらいに関する数値(令和5年度意識調査)は、いずれも上記の厚生労働省委託事業サイトに記載されている内容です。「有休は制度ではなく在庫である」「有休の取得日数は属人化の指標として読める」という読み解きは筆者の解釈であり、厚生労働省が示した見解ではありません。自社の有給休暇の取得率・取得日数については実測値を持っていないため、本記事には一切記載していません。 当社は社会保険労務士事務所ではなく、個別の取扱いが法令に適合するかどうかの判断は本記事の範囲外です。各制度の導入には労使協定の締結や就業規則への規定など要件がありますので、詳細および個別のご相談は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)または専門家にご確認ください。


沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum代表。製造・金融業界でのキャリアを経て、2023年にK.Platinumを設立。エンジニアが正当に評価される仕組みづくりに取り組んでいる。


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