こんにちは。K.Platinum代表の沼田です。
いきなり白状します。この採用ブログ、下書きの半分くらいはAIに手伝ってもらっています。構成の叩き台を出させて、僕が全部書き直して、事例と本音を足していく。そういう作り方です。
で、先日ふと気づいて、ちょっと背筋が伸びました。
2026年8月2日から、EUのルールでは「AIに手伝わせたことを黙っている」のが、場合によっては違反になる。
「EUの話でしょ、うちは輸出もしてないし」——僕も最初はそう思いました。でも調べていくうちに、これは日本の中堅企業、それもうちみたいな17人の会社にも、じわっと効いてくる話だと分かってきました。今日はその整理です。
8月2日に、何が始まるのか
EU AI Act(EUのAI規制法)というものがあります。その中の第50条「透明性義務」の適用が、2026年8月2日から始まります。この記事を書いている今から、もう2週間ちょっとしかありません。
難しい条文の話は法律事務所の解説に任せるとして、僕らみたいな事業会社にとって関係あるのは、ざっくり3つです。専門用語を抜いて書きます。
① AIと話していることを、相手に伝える
サイトに置いてあるチャットボット。あれが「AIです」と分からないまま人間のふりをして応対するのは、もうダメになります。ユーザーが「これは人間じゃなくてAIなんだ」と分かる状態にしておく義務です。
② AIが作った・加工したコンテンツに、機械が読める印をつける
AIで生成した画像・動画・音声・テキストには、「これはAI製ですよ」という機械可読なマーキング(電子的な目印)を埋め込む。人間の目には見えなくても、システムが判定できる形で印をつけておく、という考え方です。
③ ディープフェイクや世論形成目的のものには、はっきりラベルを出す
人物の合成動画や、世の中の意見を動かす目的の文章には、目に見える形で「これはAIが作ったもの」と表示する。

要するに、「AIが関わっているなら、それを隠すな」。これが第50条の背骨です。技術的にどこまで厳密にやるかはまだ運用が固まりきっていない部分もありますが、方向性はもう明確です。
ひとつだけ補足しておくと、この3つは全部が同じ日に一斉に始まるわけではありません。①のチャットボット開示と③のラベル表示は、予定どおり2026年8月2日から。ただし②の「機械可読なマーキング」は、もともと生成AIの作り手(画像や文章を生成するツールを提供する側)に課される技術寄りの義務で、2026年に大枠が合意されたルール見直し(通称Digital Omnibus)により、すでに世に出ているシステムについては2026年12月2日まで猶予される見込みです。つまり、うちのようにAIを「使う側」の会社がまず意識すべきは、①と③のほうです。
「うちはEUと関係ない」が危ない理由
ここで多くの人が「で、それEUの話でしょ?」となります。僕もなりました。でも、2つの理由でそう単純じゃありません。
ひとつは域外適用。EUの規制は、EU域内に向けてサービスやコンテンツを提供していれば、事業者がどこの国にいようが対象になり得ます。「EUに製品を輸出しているか」ではありません。たとえば——
- 多言語で出しているオウンドメディアが、EUからも読める
- 海外採用ページを英語で公開している
- EUの顧客・取引先とやり取りするチャットや問い合わせフォームがある
こういうものは、理屈の上では射程に入ってきます。「輸出してないから無関係」とは言い切れない。
もうひとつが、いわゆるブリュッセル効果です。EUが厳しいルールを作ると、それが事実上の世界標準になっていく現象のことです。GDPR(個人情報保護のルール)がまさにそうでした。日本の会社が「うちも一応GDPRに合わせておくか」と対応したのを覚えている方も多いと思います。
AIの透明性についても、たぶん同じことが起きます。EUが「AIは開示しろ」と言い出せば、グローバルなプラットフォームやツールがそれに合わせて機能を実装し、気づけば日本国内でもそれが当たり前になっている。「EUだけの話」で終わったルールを、僕はあまり見たことがありません。
中堅企業が、8月2日までに最低限やること
とはいえ、17人の会社が法務部を作って条文を読み込むなんて現実的じゃありません。うちが「まずここだけ」と考えて動いているのは、次の3つです。

① 自社サイトのチャットボットに、一文足す
これはコストほぼゼロで今日できます。問い合わせボットや採用ボットの冒頭に「このチャットはAIが応対しています」と一言入れる。それだけです。隠していたつもりはなくても、明示していなければ「黙っていた」ことになる。一番簡単で、一番忘れられがちなところです。
② AI生成物の「社内での表記ルール」を決める
ブログ、SNS、資料、画像。「どこまでAIを使ったら、どう表記するか」を社内で先に決めておく。全部に「AI生成」と貼れという話ではありません。「表記する/しないの基準を、会社として持っているか」が問われます。基準がないまま各自の判断でやっているのが、一番まずい状態です。
ちなみにこのブログは、僕が今回から末尾に「AIの下書きを使い、僕が加筆・編集しています」と書くことにしました。書いてみて分かったのは、隠すより言ってしまったほうが、むしろ気が楽だということです。
③ 外注コンテンツに「AI利用の申告」を発注条件に入れる
制作会社やライターさんに記事・画像を頼むとき、「AIを使ったかどうか、使ったならどこか」を教えてもらう一文を、発注時の条件に足す。自社で管理できないところが一番のリスクなので、入口で握っておく。これは以前このブログで書いた「AI生成コードの権利を受託契約に3行足した話」と、発想としては地続きです。契約と発注の側で、先に線を引いておく。
これは「規制対応」ではなく「信頼」の話
ここまで義務の話をしてきましたが、僕がこの件で一番言いたいのは、実はそこじゃありません。
AIを使っていることを開示するのは、罰を避けるためというより、信頼を得るためだと思っています。
考えてみてください。同じAIチャットボットでも、「AIが応対しています」と最初に言ってくれる会社と、人間のふりをして最後まで押し通す会社。どっちを信用しますか。同じAI生成記事でも、「AIの下書きを使っています」と正直に書く会社と、それを隠して「全部人力です」という顔をしている会社。バレたときにダメージが大きいのは、間違いなく後者です。
隠す会社より、開示する会社が選ばれる。 これは規制がどうこう以前の、単純な信頼の問題です。
おもしろいのは、EUのルール自体にも「逃げ道」が用意されていることです。AIが下書きした文章でも、人間がちゃんと中身をチェックして、責任を持って世に出しているなら、開示義務までは課さない——そういう例外規定があります。うちのこのブログも、僕が全部読んで書き直している以上、理屈の上では「黙っていても違反にはならない」側かもしれません。それでも僕は、末尾に「AIの下書きを使っています」と書くことにしました。義務だから開示するのではなく、開示したほうが信頼されるから開示する。 その順番が逆転すると、たぶん長続きしません。
そして、これは採用広報でもまったく同じだと感じています。うちは「AIをこう使っています」を隠しません。むしろ、AIを前提にした働き方を設計している会社だということを、求職者にちゃんと見せたい。それを隠して「うちは全部人の手で丁寧に」みたいなことを言う会社より、正直なほうが、たぶん良い人と出会えます。だからうちの採用ページも、AIをどう使っているかを含めて、できるだけ正直に書くようにしています。
17人だからできる、現実的な始め方
大手企業は、こういう規制が来ると全社横断のプロジェクトを立ち上げて、ポリシーを作り、研修をやり……となります。それはそれで正しい。でも中堅企業がそれを真似ると、たいてい途中で息切れします。
うちのおすすめは、いつも同じです。全社ポリシーの前に、顧客接点を1つだけ選んでそこから始める。
具体的には、まず「問い合わせチャット」か「採用ページ」のどちらか、外から一番見られる接点を1つ選ぶ。そこにAIの開示を入れる。運用してみて、表記の粒度や社内の反応を見る。それから2つ目、3つ目に広げる。最初から完璧な全社ルールを作ろうとしないことです。
僕は24歳で起業して、いま3期目・27歳です。前職はスタートアップのITコンサルで、そこでもGDPR対応の現場を見ました。あのときも、慌てて全社一斉にやろうとした会社ほど混乱して、接点を1つずつ潰していった会社のほうが、結局きれいに着地していました。ルールは、小さく始めて広げる。 AIの透明性も、まったく同じだと思っています。
8月2日は、もうすぐです。でも、身構える必要はありません。まずはチャットボットに一文足すところから。うちも、そこから始めています。
この記事は、AIによる下書きを使い、沼田が加筆・編集しています。
沼田海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum代表。24歳で同社を立ち上げ、外資系金融を中心としたITコンサルティングや自社サービス開発を率いる。AIを前提とした業務設計・ガバナンスの実装に、現場で取り組んでいる。
K.Platinumでは、AIを前提にした業務設計・ガバナンスに一緒に向き合えるITコンサルタント/エンジニアを募集しています。「AIをどう使うか」だけでなく「どう開示し、どう信頼を設計するか」に興味がある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。

