株式会社K.Platinum 清水洋太
「人に教えるのは、正直あまり得意じゃないんです」
採用の面談で育成の話題になると、そう言われることがあります。よくわかります。私自身、コードや設計と向き合っている時間がいちばん落ち着きますし、教えることが好きでこの仕事を選んだわけではありません。
ただ、弊社で何年か働いたメンバーは、だいたい同じことを言い出します。「教えるようになってから、自分の理解が変わった」と。
この記事では、K.Platinumがプログラミングスクールを"事業として"持っていること、そしてそれがそこで働くエンジニア自身の仕事にどう効いているのかを書きます。育成に興味がある方だけの話ではありません。むしろ「自分はプレイヤーでいたい」と考えている方にこそ、読んでいただきたい内容です。
「育てる」が、事業として社内にある
弊社のメイン事業はITコンサルティングです。お客様のビジネス課題に提案の段階から入り、業務整理から業務改善、システム化、そしてAI導入まで一気通貫で支援します。戦略を描いて終わりでもなく、言われたものを作って終わりでもない。ここが弊社のいちばんの特徴です。
その隣に、もうひとつの柱としてプログラミングスクール事業があります。キャリアコーディネート型の「Ktech」、未経験から実践型のフリーランスを目指す「Kフリー」、未経験エンジニアの育成と転職サポートを行う「GutsBootcamp」。講師を務めるのは、現場を知っている現役・元エンジニアです。教材やカリキュラムも、実際のプロジェクトで使われている進め方をベースに組み立てています。
システム開発の会社が、なぜ人を育てる事業まで持つのか。よく聞かれます。
理由はシンプルで、弊社が掲げているのが「エンジニアを幸せにする」というパーパスであり、「エンジニアの能力を可視化する仕組みをつくる」というミッションだからです。作れる人を増やすことと、作れる人が正しく評価される状態をつくること。この二つは、弊社にとってセットの課題です。受託の現場だけを見ていると、目の前のプロジェクトは前に進みますが、業界全体の入り口は広がりません。だから、入り口そのものを事業にしています。
そしてこの構造は、社内のエンジニアにも思わぬ形で返ってきます。「教える機会が、日常の近いところにある」という状態そのものが、技術者としての効き目を持っているのです。
人に教えると、自分の理解の"穴"が見える
いちばん最初に起きるのは、たいてい「言葉に詰まる」という経験です。
「ここ、なぜこう書くんですか?」
未経験の方からのこの質問に、その場で答えられなかった経験のあるエンジニアは、決して少なくないはずです。動くコードは書ける。レビューも通る。それでも、なぜその書き方を選んだのかを説明しようとすると、うまく言葉にならない。長く手を動かしてきた人ほど、判断の多くが手癖になっているからです。
手癖は悪いものではありません。むしろ経験の結晶です。ただ、言語化されていない判断は、他人に渡せません。渡せないということは、チームの資産にならないということでもあります。
教える側に立つと、この「渡せない部分」が一気に可視化されます。自分がどこを理解していて、どこを雰囲気で通過していたのか。その輪郭が、質問という形で外から示される。これは自分ひとりでコードを書いていても、なかなか起きません。
弊社ではオンラインの勉強会やLT会を定期的に開いていて、持ち回りで「最近詰まったこと」や「調べてわかったこと」を共有しています。立派な発表である必要はありません。むしろ、うまくいかなかった話のほうが場が盛り上がります。おもしろいもので、「あとで人に話す」と決めて調べると、同じ調べ物でも頭への残り方が変わります。この積み重ねが、説明できる技術者を増やしていきます。
この効果は、ここ数年でさらに大きくなりました。弊社では生成AIを開発プロセスに組み込んでいて、設計の下書きを作る、コードを生成する、レビューにかける、という流れが日常になっています。作業のスピードは明らかに上がりました。
そのうえで、価値が移った場所があります。「出てきたものが妥当かどうかを判断し、その理由を説明できるか」です。生成されたコードを読んで、この設計で問題ないと言い切れるか。だめなら、どこがどうだめなのかを言葉にできるか。教える経験は、この力をまっすぐ鍛えます。書く速さではなく、判断を説明できることが効いてくる。そういう時代になったと感じています。

つまずきを知っている人は、お客様の言葉がわかる
もうひとつ、思っていた以上に効いているのが、コンサルティングの現場での変化です。
弊社が入るプロジェクトでは、打ち合わせの相手はエンジニアとは限りません。むしろ現場の業務担当者や、システムに詳しくない管理職の方であることのほうが多い。日々の業務は誰よりも知っているけれど、システムの言葉は使わない方々です。
この場で専門用語を並べても、話は前に進みません。必要なのは、相手の業務の言葉で聞き、相手の言葉に翻訳して返すことです。「非同期で処理します」ではなく「登録した後、その場で待たずに別の作業へ進めます」と言えるかどうか。地味ですが、プロジェクトの成否を分けます。
未経験の方に教えた経験は、この翻訳の訓練そのものです。何が伝わらないのか、どの説明の順番なら腹落ちするのか、どこで手が止まるのか。教える現場では、それが毎回はっきり返ってきます。わかっている側の視点だけで話すと通じない、という事実を、身体で覚えることになります。
さらに大きいのは、「わからない」と言いづらい人の気持ちが想像できるようになることです。要件を確認している最中に、相手が「たぶん、大丈夫だと思います」と答える瞬間があります。ここを流すか、掘るか。教えた経験のある人ほど、この曖昧さの手前で止まります。そして「念のため、実際の業務の流れを一度見せてもらえますか」と踏み込める。
弊社が「業務整理から入る」と言っているのは、この踏み込みの積み重ねのことです。要件は最初から整った形では存在せず、多くの場合、現場と一緒に言葉にしていくものだからです。人に教えるスキルと、上流で課題を引き出すスキルは、実はかなり近いところにあります。
もし「作るだけでなく、その手前で課題を言葉にする仕事」に興味がわいたら、採用ページに募集の詳細をまとめています。よければのぞいてみてください。
「できること」を、言葉にする習慣
弊社のミッションが「エンジニアの能力を可視化する仕組みをつくる」である以上、それを自分たちの中でもやらないのは筋が通りません。
日々の仕事のなかでも、自分が何をできるようになったのかを言葉にする場面を意識的に置いています。プロジェクトが一区切りしたときに、担当範囲だけでなく「今回できるようになったこと」まで振り返る。勉強会で話すために、頭の中の理解をスライド一枚に落としてみる。こうした作業は、面倒に見えて、いちばん確実にスキルを定着させます。
働き方の面でも、この習慣は支えになっています。弊社はコアタイムのないフルフレックスで、勤務は原則リモートです。集まって空気で伝える機会が少ないぶん、書いて残す・言葉にして渡すことの比重が大きくなります。説明できる状態にしておくことが、そのままチームで動ける状態につながっています。
設立から2年ほどで20件以上の開発プロジェクトに関わってきましたが、それを支えてきたのは特別な誰かではありません。平均年齢は27.5歳で、20代のリーダーも複数活躍しています。年次ではなく、任せられる状態にある人に任せる。その判断ができるのは、それぞれの「できること」が言葉になっているからです。
教えることは、遠回りではありません
技術者としての時間を、コードを書くことだけに使いたい。その気持ちは、私にもよくわかります。
それでも、人に教える経験は、遠回りではないと思っています。自分の理解の輪郭がはっきりし、判断を説明できるようになり、専門外の相手とも話が通じるようになる。生成AIが当たり前になった今、この三つはむしろ、これから先に長く効いてくる力です。
K.Platinumには、それを試せる場所が事業として社内にあります。もちろん、全員が講師をやるわけではありません。ただ、誰かに何かを渡す機会は、日常のいたるところにあります。そこに面白さを見つけられる方なら、きっと伸びていける環境です。
「実力で正当に評価される環境で働きたい」「作るだけでなく、その手前と先まで関わりたい」。そんな思いをお持ちの方と、ぜひ一度お話ししてみたいと思っています。
清水洋太(しみず・ようた)
株式会社K.Platinum所属。エンジニアが力を発揮できる環境づくりを大切にしている。
K.Platinumでは一緒に働くエンジニアを募集しています。「実力で正当に評価される環境」に興味がある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。

