こんにちは。ITコンサルティングと受託開発、それにプログラミングスクールをやっている会社の代表、沼田です。17人・フルリモートの会社で、そのうち8人が高専卒です。
先日、面接をしていたときのことです。職務経歴書の資格欄に「応用情報技術者」と書いてあったので、いつもの流れで「勉強どうでした?」と聞いたら、彼がこう返してきました。
「応用情報、今年で最後らしいですよ。ご存知でした?」
知りませんでした。その場で調べて、正直、背筋が伸びました。彼にとっては受験の話です。でもこちらにとっては、採用基準の話でした。うちは資格を、書類選考の物差しとして使っていたからです。その物差しが、来年なくなる。
応用情報と高度試験は、2027年に「3つ」へ束ねられる

事実だけ整理します。
経済産業省とIPAが2026年3月31日に公表した見直しの検討状況によると、現行の試験制度は2026年度の実施をもって終了し、2027年度から新制度へ移行する予定です。応用情報技術者試験と高度試験は大括り化のうえ再編され、「マネジメント領域」「データ・AI領域」「システム領域」の3区分からなるプロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)になる。新設のデータマネジメント試験(仮称)も含めて、新制度は全8区分。実施方式は全区分がCBT(コンピュータ方式)です。
※あくまで「現時点の検討状況」であり、今後変更の可能性があるとIPAも明記しています。
そして変化は、もう始まっています。2026年度の応用情報・高度試験はすでにCBTへ移行し、開催時期も従来の4月・10月から11月・2月に変わりました。
さらに言うと、これは試験だけの話ではありません。今回の見直しが土台にしている国の報告書は、こういうタイトルです。
Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会 報告書 —「スキルベースの人材育成」を目指して
報告書名で「スキルベース」と名指ししている。加えて経済産業省とIPAは、個人のスキルを登録・可視化する「スキル情報基盤」を2026年秋に立ち上げる予定で、初年度100万人の登録を目標に掲げています。IPAの試験見直しページ自体も、最後は「個人が持つスキル情報・キャリア情報を蓄積・可視化できる情報基盤を検討している」と締めくくられている。試験の再編と、スキルの台帳づくりは、セットで進んでいるということです。
海外も同じ方向です。全米大学就職協議会(NACE)のJob Outlook 2026では、スキルベース採用を導入している企業が70%(前年65%)。象徴的なのは、書類スクリーニングの指標の変化でした。2019年には73%の企業が学業成績(GPA)で候補者を絞っていたのに、いまは42%まで落ちている。
つまり、制度も市場も、同じ方向を向いています。評価の軸が「持っているもの」から「できること」へ移り、それに合わせて代理指標が捨てられ始めている。
資格が棚卸しされると、中小の採用がいちばん困る
ここで正直に白状しますが、僕らのような小さな会社ほど、資格を書類選考の代理指標として使ってきました。
理由はシンプルで、楽だからです。応募が来て、職務経歴書を10分で読んで、次に進めるかを決める。そのとき「応用情報」の4文字があると、「基礎はある人だな」と当たりをつけられる。中身を測るコストを、国の試験に肩代わりしてもらっていたわけです。
さっきのGPAの数字は、まさにこれと同じ話だと思っています。米国の人事も「成績で絞る」という楽な物差しを、この10年で半分近くまで手放した。日本では、その役割の一部を資格が担ってきました。
大手なら、テストを内製して独自の評価軸を持てます。うちにはそんな余裕はない。だから、外部の物差しに寄りかかっていた。その物差しが、2027年に一度作り直される。
これは「困ったな」で済ませていい話ではないと思いました。むしろ逆で、もともと代理指標に頼っていたことのほうが問題だった。制度の変更は、それを直す期限を切られたようなものです。
うちが書き直した、3つの運用

大がかりな評価制度改革はしていません。運用を3つ変えただけです。
ひとつめ、資格欄は「何を証明したいか」を本人に言ってもらう。面接で「応用情報を持っています」と言われたら、「それで何を証明したいですか?」と聞くようにしました。意地悪な質問に聞こえますが、答えは驚くほど分かれます。「体系的に用語を押さえたかった」と答える人と、「業務で設計の話について行けなかったから」と答える人では、その後の伸び方が全然違う。資格の有無ではなく、資格を取りに行った動機が情報です。
ふたつめ、評価はスキルの粒度で書き、試験区分名で書かない。評価シートに「応用情報相当」と書くのをやめて、「要件定義ができる」「データ整備ができる」「運用設計ができる」と、動詞で書くようにしました。試験区分名は、書いた瞬間に中身の議論が終わってしまう。粒度を下げると、次に何を伸ばすかまで自動的に見えます。スキル情報基盤が立ち上がったとき、こちらの言葉で語れる会社と、試験の名前でしか語れない会社では、差が出るはずです。
みっつめ、資格手当を「取ったら払う」から「使ったら払う」へ寄せる。合格した瞬間に一時金を出すのは分かりやすいのですが、それだと「取って終わり」になりがちです。取った知識を実際の案件で使い、社内に共有した時点で評価する。地味ですが、こちらのほうが効きます。
3つとも、明日から変えられる粒度の話です。制度改革の完成を待つ必要はありませんでした。
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資格が効く場面と、効かない場面
高専卒が8人いる会社をやってきて、思うことがあります。
資格が効く場面は、書類の1行です。会ったこともない人を10分で判断するとき、確かに効く。ここは否定しません。
一方で、面接ではほぼ効きません。「なぜその設計にしたのか」を聞き始めた瞬間、資格の有無は関係なくなります。説明できる人は説明できるし、できない人はできない。前職のスタートアップITコンサルにいた頃も、高度試験をいくつも持っている人が現場で詰まる場面を何度も見ました。逆に、資格ゼロで抜群に強い高専卒もいる。
だから僕は、資格を「証明」ではなく「強制的に触る口実」として捉えるほうが健全だと思っています。試験の名前は変わる。でも、勉強の過程で手を動かした事実は残る。
まとめ:制度は変わる。言語化できる人は困らない
整理します。2026年度で現行の応用情報・高度試験は終わり、2027年度から3領域の新試験へ統合される予定。国はスキル情報基盤で「できること」を可視化しにいく。市場も、GPAのような代理指標を手放してスキルベース採用へ動いている。
採る側がやるべきことは、たぶん一つです。資格の名前に肩代わりさせていた判断を、自分の言葉に戻すこと。
24歳で起業して3年ちょっと。ずっと「小さい会社は大手の物差しを借りるしかない」と思ってきました。でも、借りていた物差しが作り直されるいまは、自分の物差しを作り直すいい機会でもあります。
制度は変わります。でも、「自分は何ができるのか」を言語化できる人は、制度が変わっても困らない。採る側も、同じです。
沼田 海斗(ぬまた・かいと)
株式会社K.Platinum 代表。ITコンサルティング・受託開発・プログラミングスクールを展開。エンジニアが実力で正当に評価される仕組みづくりに取り組んでいる。
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